『キテレツ大百科』といえば、発明好きのキテレツと、からくりロボットのコロ助が活躍する藤子・F・不二雄氏の人気作品です。
テレビアニメを見て育った人も多いと思いますが、実は私たちが知っている『キテレツ大百科』には、原作漫画には存在しない設定が大量にあります。
コロ助の大好物であるコロッケも、ブタゴリラの本名も、実は藤子・F・不二雄氏の原作で最初から決められていた設定ではありません。
さらにアニメ最終回には、制作事情によって生まれた不思議な矛盾まで残されています。
今回は、作品を見ただけでは気付きにくい『キテレツ大百科』の裏設定や制作秘話、有名な考察について紹介します。

発明好きのキテレツとコロ助が繰り広げる、笑いと冒険いっぱいの名作アニメ『キテレツ大百科』。
奇想天外な発明品から巻き起こる騒動や、仲間たちとの心あたたまる物語をたっぷり楽しめます。
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原作はわずか40話なのにアニメは331話もある

テレビアニメ『キテレツ大百科』は1988年3月27日から1996年6月9日まで放送され、全部で331話が作られました。
ところが、藤子・F・不二雄氏が描いた原作漫画は全40話しかありません。
もともとは1970年代に児童誌『こどもの光』で連載されていた作品で、小学館の藤子・F・不二雄大全集では全2巻にまとめられています。
つまり、アニメ331話の大部分は原作をそのまま映像化したものではありません。
長期放送を続けるため、キャラクターの性格や家族、恋愛、学校生活などがアニメ側で大幅に広げられていきました。
現在では当たり前と思われている『キテレツ大百科』の設定の多くが、実はこの過程で生まれています。
藤子・F・不二雄氏自身もアニメ版を気に入っていたとされ、「藤子アニメの中ではキテレツが一番好きで、毎週かかさず見ています」と語った記録が残っています。
コロ助はゴムまりや風呂おけから作られている
感情を持ち、人間と会話し、自分で考えて行動するコロ助ですが、その体には意外なほど身近な材料が使われています。
高岡市 藤子・F・不二雄ふるさとギャラリーによると、頭はゴムまり、胴体は風呂おけ、腕は掃除機のホースです。
見た目だけなら、家庭にある日用品を組み合わせた工作に近い作りになっています。
ところが、中身は言葉を覚え、感情を持ち、食事までできるほど高性能です。
江戸時代の奇天烈斎が残した設計を、小学生のキテレツが身近な材料で再現したという、かなり無茶なロボットなのです。
なお、ネット上では「コロ助はぜんまいで動いている」という説明も見られますが、これはコロ助の公式設定として確認できません。
コロ助そっくりの別の人形と設定が混ざった可能性があるため、「ぜんまいロボット」と断定するのは避けたほうがよいでしょう。
コロ助の大好物「コロッケ」は後から追加された
コロ助といえば「コロッケが大好き」というイメージがあります。
しかし、藤子・F・不二雄氏の原作では、コロッケが特別な好物として設定されていません。
コロ助の好物を作ろうという話になり、「ドラえもんがどら焼きなら、コロ助はコロッケ」という発想から設定されたと伝えられています。
アニメでは第16話で、コロ助が学校給食のコロッケを初めて食べる場面まで描かれました。
「ワガハイの名前と似ているナリ」と喜び、そこからコロッケ好きが定着していきます。
後には主題歌「お料理行進曲」でもコロッケ作りが歌われたため、「コロ助=コロッケ」は原作以上に有名な設定となりました。
今ではコロ助を代表する特徴ですが、実はアニメを作る中で育ったキャラクター設定だったのです。
ブタゴリラの本名「熊田薫」は原作にはない
ブタゴリラの本名は「熊田薫」です。
「薫」という名前を恥ずかしがっているため、本名で呼ばれるくらいなら「ブタゴリラ」と呼ばれたほうがいいという、かなり変わった設定になっています。
しかし、藤子・F・不二雄氏の原作漫画ではブタゴリラの本名は明かされていません。
「熊田薫」という名前は、アニメ版の脚本を担当した雪室俊一氏が付けたものです。
さらに、実家が八百屋であることや、野菜に異常なほど詳しい性格もアニメ版で大きく追加された設定です。
原作のブタゴリラは、現在知られている人情味あふれる八百屋の息子というキャラクターとはかなり違います。
8年間のアニメ放送によって、原作以上にキャラクターが育った代表例といえるでしょう。
勉三さんはアニメで6浪して大学生になった
学生服と分厚い眼鏡が特徴の勉三さんは、「いつまで受験しているのだろう」と思われがちなキャラクターです。
アニメ版では実際に長い浪人生活を送っており、6浪の末に高尾大学経済学部へ合格したという設定になっています。
大学に合格してからも学生服を着続けるため、見た目だけではあまり変化がありません。
長期アニメでは登場人物の年齢や立場がほとんど変わらない作品も多い中、『キテレツ大百科』では勉三さんの受験や進学が実際に物語へ取り入れられています。
原作が短い作品だったからこそ、アニメでは勉三さんにも長い人生が付け足されたのです。
『新キテレツ大百科』は藤子・F・不二雄氏本人が細かく監修していた

テレビアニメとほぼ同じ時期に、『月刊コロコロコミック』では『新キテレツ大百科』が連載されました。
作画を担当したのは藤子・F・不二雄氏ではなく、田中道明氏です。
そのため単なる別作者による続編と思われがちですが、制作には藤子・F・不二雄氏本人が深く関わっていました。
田中氏が作ったネームや内容を藤子・F・不二雄氏が何度も確認し、修正しながら作品が作られていたとされています。
さらに『新キテレツ大百科』で広げられたキャラクターの性格や設定は、テレビアニメにも影響を与えました。
そのため『キテレツ大百科』は、
原作漫画からアニメへ、
アニメから『新キテレツ大百科』へ、
さらに新しい設定がアニメへ戻る、
という少し珍しい形で世界観が成長していった作品なのです。
アニメ最終回は放送の約2年前に完成していた
『キテレツ大百科』の最終回には、かなり変わった制作事情があります。
アニメは1996年6月まで放送されていますが、実は1994年春の時点で番組終了が決まり、最終回「愛のフィナーレ!さよならコロ助大百科」もすでに制作されていました。
ところが、後番組がなかなか決まりませんでした。
そのため終了予定が延期され、完成済みの最終回を放送しないまま、新しいエピソードが約2年間作られ続けます。
最終的に後番組『こちら葛飾区亀有公園前派出所』の放送が決まり、1996年6月9日に、以前から完成していた最終回が放送されました。
つまり『キテレツ大百科』では、「最終回を作った後に何十話もの新作を作る」という珍しいことが起きていたのです。
そして、この特殊な制作順がある矛盾を生むことになります。
コロ助が江戸時代に残るのは都市伝説ではない
「『キテレツ大百科』の最後でコロ助が江戸時代に残る」という話を、都市伝説だと思っている人もいるようです。
しかし、これは本当にアニメ最終回で描かれています。
最終回では『奇天烈大百科』を失ったキテレツたちが江戸時代へ向かい、奇天烈斎と出会います。
そこでコロ助が、奇天烈斎が亡くした息子を思って設計した存在だったことも明かされます。
コロ助は奇天烈斎を一人にできないと考え、現代へ戻らず江戸時代に残ることを選びました。
キテレツとコロ助が別れるという、原作漫画にはなかった結末です。
ただし原作にも『奇天烈大百科』を失う展開はあります。
原作ではママが大百科をゴミと間違えて処分してしまい、キテレツは「これからは自分の力で発明する」と決意して物語を終えます。
アニメ最終回は、この原作の結末を土台にして、コロ助との別れを加えたものだったのです。
20年後の世界にはなぜかコロ助がいる
ところが、アニメ最終回には大きな矛盾があります。
第293話では、キテレツたちが20年後の表野町を見る場面があります。
そこでは大人になったキテレツだけでなく、コロ助もキテレツ家で暮らしています。
しかもコロ助は剣術の道場を開き、師範になっているという未来まで描かれました。
しかし最終回では、コロ助は江戸時代に残っています。
なぜ20年後の世界にコロ助がいるのでしょうか。
「その後、江戸時代から現代へ戻ってきたのではないか」
「奇天烈斎と暮らした後、長い年月を過ごして再びキテレツと会ったのではないか」
といった考察もできます。
ただし、最終回が先に制作され、第293話がその後に作られたという事情を考えると、単純に制作時期のズレから生まれた矛盾と見るほうが自然でしょう。
公式に「コロ助が現代へ戻った」という後日談が示されたわけではありません。
そのため、この部分は今でも想像の余地が残された不思議な設定となっています。
放送されなかった「幻のエピソード」がある
『キテレツ大百科』には、放送予定まで決まっていたのに表に出なかったエピソードがあります。
タイトルは「ルルル!未知からのメッセージ」です。
本来は番組終了間際に放送される予定でしたが、女子バレーボールのアトランタオリンピック世界最終予選の中継が入ったことで放送予定が変更されました。
その結果、完成済みだった最終回が予定より早く放送され、『キテレツ大百科』そのものが終了することになります。
「ルルル!未知からのメッセージ」は台本などの存在が知られているものの、テレビで放送された正式な1話にはなっていません。
ネット上では「完成映像まで存在する幻の最終回」と語られることがありますが、制作途中で止まったとされているため、完成した1話がそのまま眠っていると考えるのは慎重になったほうがよいでしょう。
長寿アニメの最後に残された、本当の意味での「幻のエピソード」です。
コロ助には14年前によく似たキャラクターがいた
コロ助が登場するより前に、藤子・F・不二雄氏は非常によく似たキャラクターを描いています。
それが『てぶくろてっちゃん』に登場する「ごろちゃん」です。
小学館の公式資料でも、「ごろちゃん」は『たのしい一年生』1960年9月号に掲載されたことが確認できます。
『キテレツ大百科』の連載開始は1974年なので、14年も前の作品です。
ごろちゃんは丸い頭を持つ人形型のキャラクターで、頭にゴムまりを使っている点など、後のコロ助とよく似ています。
そのため「ごろちゃんがコロ助の原型なのではないか」と考えるファンもいます。
ただし、藤子・F・不二雄氏自身が「ごろちゃんを元にコロ助を作った」と明言した資料は確認できません。
そのため、公式設定ではなく「過去作品のアイデアが発展した可能性がある」という考察として見るのがよいでしょう。
キテレツ大百科の裏設定まとめ
『キテレツ大百科』は藤子・F・不二雄氏の作品ですが、現在知られている世界観のすべてを藤子氏一人が原作漫画で作ったわけではありません。
原作は全40話と短く、テレビアニメが331話まで続いたことで、コロ助のコロッケ好きやブタゴリラの本名、八百屋という家業など、数多くの設定が追加されました。
一方で藤子・F・不二雄氏は、そうして広がっていったアニメ版を楽しんでいたと伝えられています。
さらに、最終回を約2年前に作ってしまったことで、江戸時代に残ったはずのコロ助が20年後にも存在するという不思議な矛盾まで生まれました。
原作、アニメ、『新キテレツ大百科』が互いに影響しながら世界を広げていったことこそ、『キテレツ大百科』最大の裏設定なのかもしれません。

発明好きのキテレツとコロ助が繰り広げる、笑いと冒険いっぱいの名作アニメ『キテレツ大百科』。
奇想天外な発明品から巻き起こる騒動や、仲間たちとの心あたたまる物語をたっぷり楽しめます。
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