漫画『ONE PIECE』の魅力のひとつが、長い時間をかけて明らかになる「伏線と回収」です。
何気なく読んでいたセリフや小さな出来事が、数百話後にまったく違う意味を持つことがあります。
中には「あの場面は、このために描かれていたのか」と、思わず最初から読み返したくなるものもあります。
そこで今回は、『ONE PIECE』の中でも特に完成度が高いと感じる伏線回収を15個選びました。
伏線が仕込まれてから回収されるまでの長さ、真相がわかったときの驚き、過去の物語とのつながりを基準に順位を付けています。
なお、厳密には「伏線」というより、以前の出来事を後の物語につなげたものも含めています。
ここから先は原作の重要なネタバレを含みますので、ご注意ください。
15位 サンジの手配書の似顔絵がデュバルにつながる

エニエス・ロビー編のあと、麦わらの一味には新しい手配書が作られました。
ところがサンジだけは写真の撮影に失敗したため、手配書にはかなり変わった似顔絵が使われます。
この時点では、完全なギャグにしか見えませんでした。
しかし、その似顔絵が後になって思わぬ形で使われます。
シャボンディ諸島へ向かう途中に現れた鉄仮面の男デュバルが、仮面を外すとサンジの手配書の似顔絵とほぼ同じ顔をしていたのです。
しかもデュバルは、サンジと間違われて海軍や賞金稼ぎに追われていました。
つまり、一度きりのギャグと思われていた手配書そのものが、次の物語を生み出す仕掛けになっていたのです。
14位 ウソップの「巨大な金魚」のウソが本当になる
シロップ村編の第24話で、ウソップはカヤを楽しませるためにさまざまな冒険話をしています。
その中に、
「巨大な金魚のフンを島だと思って上陸した」
という、とんでもない話がありました。
もちろん、この時点ではウソップが作ったホラ話として描かれています。
ところがリトルガーデン編では、本当に島を丸ごと飲み込める巨大な金魚「島食い」が登場します。
さらにドリーとブロギーから、その金魚が生み出すものを島と間違えたという話まで出てきます。
ウソップの昔のウソが現実になるという仕掛けは、『ONE PIECE』で何度も使われています。
その中でも巨大な金魚は、かなり早い段階で実現した代表的な例です。
13位 クロッカスはロジャー海賊団の船医だった
グランドラインの入口で登場するクロッカスは、ラブーンの世話をしている灯台守です。
初登場時だけを見ると、少し変わった老人にしか見えません。
ところがシャボンディ諸島編の第506話で、シルバーズ・レイリーから驚きの事実が語られます。
クロッカスはロジャーの病を診るため、ロジャー海賊団の最後の航海に船医として同行していたのです。
しかもクロッカスが航海に参加した理由には、ラブーンを残して旅立ったルンバー海賊団を探す目的もありました。
クロッカスから、
ラブーン。
ブルック。
ルンバー海賊団。
ロジャー海賊団。
これらがすべてつながっていきます。
グランドラインに入ったばかりの場所に、実は世界の秘密に近い人物がいたというのも『ONE PIECE』らしい仕掛けです。
12位 シャンクスとバギーはロジャー海賊団の見習いだった
シャンクスとバギーが昔から知り合いだったことは、物語のかなり早い段階から描かれています。
若いころの二人が同じ海賊船に乗っていたこともわかっていました。
しかし、その船が何だったのかまでは長い間わかりませんでした。
真相がはっきりするのは、レイリーがロジャー海賊団について語った第506話です。
シャンクスとバギーは、ロジャー海賊団の見習いとして同じ船に乗っていました。
物語の最初から登場しているシャンクスとバギーが、実は海賊王の船と直接つながっていたことになります。
特にバギーは普段の言動とのギャップが大きいため、初めて知ったときに驚いた読者も多かったのではないでしょうか。
11位 ジンベエとアーロンの関係は東の海編ですでに語られていた
ジンベエという名前が初めて登場するのは、本人が姿を見せるよりはるかに前です。
アーロン編の第69話で、ヨサクが王下七武海について説明した際に、魚人の海賊ジンベエの名前を出しています。
さらにアーロンとジンベエにつながりがあることまで語られていました。
しかし、この時点では魚人たちにどのような過去があったのかはわかりません。
後の魚人島編では、
フィッシャー・タイガー。
タイヨウの海賊団。
ジンベエ。
アーロン。
という歴史が明らかになります。
東の海だけの敵だと思われていたアーロンの物語が、魚人族全体の歴史につながっていたのです。
10位 ローラの母親はビッグ・マムだった
スリラーバーク編の最後で、ローラはナミに母親のビブルカードを渡します。
そして母親について、
「新世界ですごい海賊をやっている」
という意味の話をしています。
この時点では母親の名前は明かされません。
それから物語は新世界へ進み、ホールケーキアイランド編でパウンドという人物が登場します。
パウンドにはローラとシフォンという二人の娘がおり、かつてビッグ・マムの夫だったことが判明します。
つまりローラの母親とは四皇ビッグ・マムでした。
さらにスリラーバークでもらったビブルカードまで、ホールケーキアイランドで重要な役割を持ちます。
人物関係だけでなく、昔登場した小道具まで再利用している点が見事です。
9位 サボはドラゴンに助けられていた
ルフィ、エース、サボの幼少期を描いた回想では、サボの船が天竜人の攻撃を受けます。
ルフィとエースから見れば、サボはもう戻ってこないと思うしかない状況でした。
しかし第589話には、小さなヒントが残されています。
革命軍の船へ戻ってきたドラゴンが、重傷を負った誰かを連れていたのです。
その人物の顔は描かれません。
後にドレスローザ編でサボが再登場し、第794話の回想によって、あのときドラゴンに助けられた人物がサボだったことがはっきりします。
サボが再登場するより約200話も前に、助かったことを示す場面自体はすでに描かれていたのです。
8位 モモの助たちは20年前からやって来た
モモの助や錦えもんが登場してから、物語には少し不思議な点がありました。
特に大きいのが、モモの助の年齢と光月おでんが生きていた時代のズレです。
おでんはロジャーと一緒に航海していました。
それなのに、おでんの息子であるモモの助はまだ幼い子どもです。
この謎の答えが明かされたのがワノ国編の第919話でした。
錦えもんは、自分たちが20年前のワノ国から現在へやって来たことを明かします。
続く第920話では、光月トキの能力によってモモの助、錦えもん、カン十郎、雷ぞう、お菊が20年後へ送られた経緯が説明されます。
「年齢が合わない」という違和感そのものが、時間移動という大きな真相につながっていたのです。
7位 「雷ぞう殿はご無事です」
ゾウ編でもっとも印象に残る場面のひとつです。
百獣海賊団のジャックは、雷ぞうという侍を探してゾウへやって来ます。
しかしミンク族は、
「雷ぞうという人物は知らない」
という態度を最後まで崩しません。
国全体が大きな被害を受けても、誰一人として雷ぞうの居場所を話しませんでした。
そのため読者も、雷ぞうは本当にゾウにはいないと思わされます。
ところが錦えもんたちが到着すると、ミンク族は一斉に頭を下げます。
そして第816話で、雷ぞうが無事であることを伝えます。
つまりミンク族は知らなかったのではありません。
ずっと雷ぞうを守り続けていたのです。
それまでの物語が一瞬で別の意味に変わる、非常に完成度の高い仕掛けです。
6位 古代兵器ポセイドンの正体はしらほしだった
空島編の第301話で、ロビンはポーネグリフから古代兵器ポセイドンに関する情報を読み取ります。
しかし「ポセイドン」が何なのかは明かされません。
名前だけを聞けば、巨大な船や兵器のようなものを想像してしまいます。
真相が判明するのは魚人島編です。
しらほしには海王類と意思を通わせる特別な力がありました。
ロビンは空島で読んだ情報と魚人島の伝承を結びつけ、第649話でしらほしが古代兵器ポセイドンであることにたどり着きます。
古代兵器とは必ずしも機械ではない。
その考え方を初めて読者に示した重要な回収でもあります。
5位 空島のロジャーの文字を書いたのは光月おでんだった
空島編の第301話で、ロビンは黄金の鐘の近くにロジャーが残したメッセージを発見します。
そこにはポーネグリフと同じ古代文字が使われていました。
ここで大きな疑問が生まれます。
「なぜロジャーは古代文字を書くことができたのか」
この謎が回収されるのは、なんと第966話です。
ロジャー海賊団が空島を訪れた過去が描かれ、ロジャーに頼まれた光月おでんが古代文字でメッセージを彫っていたことが判明します。
光月家には、ポーネグリフの文字を読み書きする技術が伝えられていました。
第301話から第966話まで、実に665話。
『ONE PIECE』を代表する長期的な伏線回収のひとつです。
4位 メリー号を修理していた謎の人物
空島編の第254話で、ウソップは夜中にゴーイング・メリー号を修理している謎の人物を目撃します。
朝になると、本当にメリー号は修理されていました。
しかし誰が直したのかはわかりません。
約100話後のウォーターセブン編。
フランキーはウソップからその話を聞き、「クラバウターマン」という存在について説明します。
大切にされている船に宿り、船員たちを助ける存在です。
ウソップが空島で見た人物は、メリー号に宿ったクラバウターマンだったことがわかります。
その後のメリー号との別れまで含めて考えると、この伏線は単なる謎解きではありません。
麦わらの一味にとってメリー号が「ただの船ではなかった」ことを示すための重要な仕掛けだったのです。
3位 カン十郎が赤鞘の裏切り者だった
ワノ国編では、光月家側の情報がなぜか敵に漏れ続けていました。
雷ぞうがゾウにいること。
討ち入りの計画。
侍たちの動き。
内部に情報を流している人物がいると考えなければ説明できません。
そして第974話で、その人物がカン十郎だったことが明らかになります。
カン十郎は光月家の仲間を演じながら、長い間情報を流し続けていました。
さらに話題になったのが絵です。
カン十郎は、それまで非常に下手な絵を描く人物として描かれていました。
しかし正体を明かしたあとには、本物と見分けがつかないほど精巧な絵を作ります。
過去の場面では普段とは違う手で絵を描いていたのではないか、という細かな描写にも注目が集まりました。
正体を知ったあとで以前の登場場面を読み返すと、見え方が大きく変わるタイプの伏線回収です。
2位 サンジの「Mr.プリンス」は本当に王子だった
アラバスタ編でサンジはクロコダイルとの電話で、自分を「Mr.プリンス」と名乗ります。
当時はサンジらしいキザな偽名としか思えませんでした。
しかしサンジについては、その後も少しずつ出生を疑わせる情報が出てきます。
東の海で育ったにもかかわらず、生まれた場所は北の海。
過去についてあまり話そうとしない。
そして「Mr.プリンス」という名前。
ホールケーキアイランド編で、これらが一気につながります。
サンジの本名はヴィンスモーク・サンジ。
ジェルマ王国を治めるヴィンスモーク家の三男であり、本当に王族の家に生まれた人物でした。
アラバスタ編の何気ない偽名が、何百話も後になってサンジ自身の出生と重なります。
ひとつだけなら偶然にも見えますが、北の海という情報など複数のヒントが重なっているため、非常に評価の高い伏線回収です。
1位 ラブーンを待たせていた海賊団の生き残りがブルック
『ONE PIECE』の伏線回収で一つだけ選ぶなら、ブルックとラブーンを挙げたいです。
ラブーンが登場するのは、グランドラインへ入ったばかりの第103話です。
ラブーンは、50年前にグランドラインへ旅立った海賊たちが戻ってくることを信じて待ち続けていました。
麦わらの一味はラブーンと別れ、その物語はいったん終わったように見えます。
それから350話以上が進んだスリラーバーク編。
ブルックは、自分には50年前から果たせていない約束があると語ります。
その約束をした相手の名前こそ、ラブーンでした。
ブルックはラブーンと別れた海賊団の一人だったのです。
さらにブルックがアフロを大切にしている理由までラブーンにつながっています。
現在のブルックは昔とは姿が大きく変わってしまいました。
それでもアフロが残っていれば、ラブーンが自分だと気付いてくれるかもしれない。
笑いのための特徴に見えたブルックのアフロにまで意味が与えられています。
第103話で語られた「50年前の海賊たち」という設定が、第459話のブルックの過去ときれいにつながる。
物語の長さ、感情的な強さ、回収後に過去の場面まで意味が変わることを考えると、『ONE PIECE』を代表する伏線回収と言ってよいでしょう。
『ONE PIECE』の伏線は「読み返したくなる」のがすごい

『ONE PIECE』には、今回紹介したもの以外にも数え切れないほどの仕掛けがあります。
尾田栄一郎氏の伏線回収で特に面白いのは、真相を知ったあとに昔の話を読み返すと、何気ないセリフやコマの意味まで変わって見えるところです。
ブルックとラブーン。
サンジの出生。
カン十郎の正体。
空島に残されたロジャーの文字。
どれも答えだけを突然出したのではなく、以前の物語に答えへつながる情報が残されています。
一方で、『ONE PIECE』で語られるすべてのつながりを「最初から予定された伏線」と考える必要はありません。
昔登場した設定を後の物語へ上手につなげたものや、過去の描写に新しい意味を持たせたものもあると考えられます。
それでも、20年以上続く物語の中で遠く離れたエピソード同士をつなぎ、読者に「あの話がここにつながるのか」と思わせる構成力は『ONE PIECE』ならではです。
物語が最終章へ進むほど、これまで何気なく読んでいた場面から新しい意味が見つかる可能性もあります。
だからこそ『ONE PIECE』は、最新話を読むだけでなく、最初から読み返しても面白い作品なのです。
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