『ちびまる子ちゃん』は、さくらももこ氏の小学生時代をもとにした作品として知られています。
そのため、「登場人物も出来事もほとんど実話」と思っている人も多いのではないでしょうか。
ところが調べてみると、実在の人物をそのまま描いたキャラクターもいれば、性格や外見を大きく変えた人物、複数の人物を混ぜて作られたキャラクターもいます。
さらに、単行本に収録されなかった幻のエピソードや、長年ネットで広まっている最終回の都市伝説まで存在します。
今回は、『ちびまる子ちゃん』を見ているだけではわかりにくい裏設定や制作の背景を紹介します。

笑って、なつかしくて、どこか心があたたまる『ちびまる子ちゃん』をまとめて楽しめる全18巻セット。
まる子と家族、友だちとの何気ない毎日には、思わず共感してしまう笑いと名場面がたっぷり詰まっています。
何度でも読み返したくなる名作を、ぜひ全巻そろえて楽しんでください。
まる子はさくらももこ氏そのものではなかった

主人公のまる子は、さくらももこ氏自身がモデルです。
しかし、『ちびまる子ちゃん』は作者の小学生時代をそのまま記録した実録漫画ではありません。
さくら氏は、実際の思い出をつなぎ合わせながら話を作り、必要に応じて架空の人物や出来事も加えていたことを明かしています。
つまり、「まる子が経験したこと=さくら氏が本当に経験したこと」ではないのです。
子どものころの記憶や気持ちを材料にしながら、漫画として面白くなるよう作り直されていました。
実在モデルのいるキャラクターでも、性格や出来事まで現実と同じとは限らないのです。
「ちびまる子ちゃん」は本当に呼ばれていた名前だった
作品タイトルの「ちびまる子ちゃん」も、完全な創作ではありません。
さくら氏は子どものころ、小柄だったことから「チビ丸」と呼ばれていたそうです。
そこへ女の子なので「子」が付き、「ちびまる子ちゃん」という呼び名になったと説明しています。
つまり、国民的漫画となったタイトルそのものが、作者の子ども時代に使われていた呼び名から生まれていたのです。
主人公を「ももこ」ではなく「まる子」とした理由にも、現実のさくら氏の子ども時代が隠されていました。
たまちゃんには本当にモデルとなった親友がいた

まる子の親友・穂波たまえには、実在するモデルがいます。
さくら氏は小学1年生のころ、たまちゃんのモデルとなった穂波さんと同じクラスになりました。
絵や動物が好きだったことなどをきっかけに親しくなり、その後も大切な友人として交流が続いています。
作中で、まる子の少し変わった行動にも付き合ってくれるたまちゃんは、実際の親友との思い出から生まれた人物でした。
大人になった穂波さんがアメリカで暮らしていたことも、さくら氏自身の文章などから確認されています。
本物のたまちゃんは眼鏡をかけていなかった
たまちゃんといえば、丸い眼鏡と三つ編みがトレードマークです。
ところが、はまじのモデルとなった浜崎憲孝氏によると、実際の穂波さんは小学生時代に眼鏡をかけていなかったそうです。
髪型も漫画のような三つ編みではなく、短い髪だったと証言しています。
つまり、漫画のたまちゃんの外見は、実在の穂波さんをそのまま描いたものではありません。
親友という立場や人物の土台は現実にありますが、見た目には漫画用のアレンジが加えられていました。
たまちゃんのお父さんのライカは本当に存在した
たまちゃんのお父さんといえば、娘の写真を撮りまくるほどのカメラ好きです。
この設定にも現実とのつながりがあります。
実在するたまちゃんの父親は、ライカM3という高級カメラを所有していました。
そのカメラは後に、たまちゃんのモデルとなった穂波さんから、さくら氏へ渡されています。
さくら氏自身も、その出来事について文章を残しています。
漫画では少し大げさな「写真好きのお父さん」として描かれていますが、カメラ好きという部分には現実の人物が反映されていたのです。
はまじは本名に近い形で本当に存在した
クラスのお調子者「はまじ」にも、実在モデルがいます。
モデルは、さくら氏の同級生だった浜崎憲孝氏です。
浜崎氏自身も後に『僕、はまじ』などの本を出版し、小学生時代やさくら氏との思い出について語っています。
ただし、漫画に登場する「はまじ」のエピソードが、すべて実話だったわけではありません。
浜崎氏によると、実際には経験していない出来事まで、漫画のはまじの体験として描かれていたそうです。
本人が実在していても、物語までそのまま実話というわけではなかったのです。
サッカー少年ケンタは長谷川健太氏本人
作中に登場するサッカー好きの少年「ケンタ」には、はっきりした実在モデルがいます。
元日本代表選手で、Jリーグの監督としても知られる長谷川健太氏です。
長谷川氏とさくら氏は、小学校時代の同級生でした。
長谷川氏によると、プロサッカー選手になった後、さくら氏本人から電話があり、「漫画に描いていいですか」と聞かれたそうです。
長谷川氏が了承したことで、ケンタが作品に登場しました。
長谷川氏はさらに、たまちゃんやはまじ、「みつや」という駄菓子屋も実際に存在したと証言しています。
『ちびまる子ちゃん』の世界が、当時の清水の町と深くつながっていたことがわかります。
大野君と杉山君は特定の二人がモデルではなかった
大野君と杉山君は、クラスの中でも特に男らしく、強い友情で結ばれたコンビとして描かれています。
実在する二人の男子がそのままモデルになったと思われがちですが、実際は少し違います。
さくら氏によると、大野君と杉山君は、子どものころに見てきた気の合う男子たちの姿などをもとに作ったキャラクターです。
特定の「大野君」と「杉山君」が実在したわけではありません。
男子同士の強い友情への憧れなどを重ね合わせて生まれた人物でした。
実在人物をそのまま描くキャラクターだけでなく、複数の記憶から作られた人物もいたのです。
花輪クンのモデルは女の子だったという説がある
お金持ちでキザな花輪クンについては、「モデルは実在する裕福な女の子だった」という話が有名です。
この説は、はまじのモデルとなった浜崎憲孝氏による同級生についての証言などから広まりました。
浜崎氏は、さくら氏の同級生たちについて複数の本で紹介しています。
その中で、花輪クンにつながったとされる裕福な女子生徒の存在も語られています。
一方、さくら氏本人が「花輪クンのモデルは女の子です」と公式に説明した資料は確認されていません。
「漫画にする際に男の子へ変えた」という話も広く知られていますが、なぜ性別を変えたのかまでは明らかになっていません。
そのため、花輪クンについては「女子生徒がモデルだったという説がある」とするのが現在のところ正確です。
永沢君の家の火事は実話ではなかった?
『ちびまる子ちゃん』の中でも強く印象に残るのが、永沢君の家が火事になるエピソードです。
あまりに現実的に描かれているため、さくら氏の小学生時代に本当に起きた出来事だと思われることもあります。
しかし、浜崎憲孝氏は、永沢君のような同級生には心当たりがないと話しています。
さらに、同級生の家が火事になった記憶も「なかったと思う」と証言しました。
もちろん、浜崎氏一人の記憶だけで完全に否定することはできません。
それでも、少なくとも「実在する永沢君の家で本当に起きた出来事」と断定できる資料は確認されていません。
実話のように見える話ほど、実際にはさくら氏の創作が強く入っている場合があるのです。
優しい友蔵は実在の祖父とはかなり違った

まる子を溺愛し、何をしても味方になってくれる友蔵は、『ちびまる子ちゃん』を代表する人気キャラクターです。
しかし、現実の祖父は友蔵のような人物ではありませんでした。
さくら氏はエッセイなどで、実際の祖父について、家族からあまり好かれていなかった人物だったことを書いています。
そのため漫画では、「こんなおじいちゃんだったらよかった」という理想を込めて、優しい友蔵を作り上げました。
つまり友蔵は、実在した祖父をそのまま漫画にした人物ではありません。
現実とは大きく違う、さくら氏の理想のおじいちゃんだったのです。
現実の父親は八百屋なのにヒロシの仕事は描かれない
父ヒロシは、昼間から家にいたり、お酒を飲んだり、野球を見たりしている場面が多い人物です。
そのため、「ヒロシはいったい何の仕事をしているのか」という疑問が昔から語られてきました。
現実のさくら氏の実家は八百屋でした。
一方、『ちびまる子ちゃん』では、父ヒロシが八百屋で働いている姿は描かれていませんし、公式のキャラクター紹介でもヒロシの職業ははっきり書かれていません。
つまり、「現実の父親が八百屋だった」という事実は、「漫画のヒロシも八百屋である」という設定になっていない可能性が高いのです。
家族をモデルにしながらも、現実のすべてを漫画へ持ち込んでいたわけではなかったようです。
お姉ちゃんの西城秀樹好きは作者自身の趣味だった
まる子のお姉ちゃん・さきこは、西城秀樹氏の大ファンとして描かれています。
普段は冷静なお姉ちゃんですが、西城氏の話になると態度が変わる場面もあります。
ところが、現実で西城秀樹氏の大ファンだったのは、さくらももこ氏自身でした。
自分の趣味をまる子ではなく、お姉ちゃんの設定として使っていたのです。
さらに西城氏は、テレビアニメのエンディング曲「走れ正直者」を歌っています。
子どものころに憧れていた歌手が、自分の漫画のアニメで歌うことになったのです。
作者自身の経験を、別のキャラクターへ移して使った面白い例です。
初期の親友ゆみこちゃんはいつの間にか姿を消した
現在の『ちびまる子ちゃん』では、まる子の親友といえばたまちゃんです。
しかし初期には、「ゆみこちゃん」という女の子も、まる子の仲良しとしてよく登場していました。
コミックス初期の紹介でも、たまちゃんと並んでゆみこちゃんの名前が確認できます。
ところが、物語が続くにつれて出番が減り、やがてほとんど登場しなくなりました。
このためネットでは、「実在モデルに何かあったのではないか」「本人への配慮で登場させなくなったのではないか」など、さまざまな都市伝説が生まれています。
しかし、さくら氏や公式側から、ゆみこちゃんが登場しなくなった理由は明かされていません。
真相がわからないまま姿を消したことが、逆に長年の噂につながっています。
幻の第98話は「怖すぎて封印」されたわけではない

原作には、通常のコミックスへ収録されなかった第98話「まる子、夢について考える」があります。
1995年の『りぼん』に掲載されましたが、単行本第13巻では第97話の次が第99話となり、第98話だけが外されました。
内容も普段の『ちびまる子ちゃん』とはかなり違います。
夢の中でまる子が奇妙な場所へ迷い込み、仮面をつけた藤木君や永沢君、王子様のような少年などが登場します。
夢らしく場面が次々と変化し、普通の日常回とは大きく違う不思議な雰囲気を持つ作品でした。
そのためネットでは、「内容が怖すぎたため封印された」「少女漫画として刺激が強すぎた」という噂が広まりました。
しかし、さくら氏自身が説明した未収録の理由は違います。
当時は非常に多忙で、さまざまな仕事が重なっていました。
その中で第98話を描いたものの、後から読み返したときに自分で納得できる完成度ではなかったため、単行本への収録を見送ったという趣旨を明かしています。
つまり、出版社から禁止された「封印作品」ではなく、作者自身の判断で収録しなかった作品だったのです。
さらに、この第98話については内容にも都市伝説があります。
「王子様姿の花輪クンが登場する」「藤木君が巨大なハエになる」と紹介されることがありますが、実際の内容とは違います。
王子様風の少年は花輪クンではなく、夢の中に現れる別の人物です。
花輪クンは夢から覚めた後に登場し、前世や潜在意識について話します。
長い間、単行本で簡単に読めない作品だったため、実際の内容にさまざまな噂が付け加えられていったようです。
友蔵の遺産で大金持ちになる最終回は都市伝説
『ちびまる子ちゃん』には、ネットで長年語られている「幻の最終回」があります。
よく知られている内容では、友蔵が亡くなった後、遺品の中から古い株券が見つかります。
その株の価値が大きく上がっていたため、さくら家は裕福になります。
そして成長したまる子が漫画家になり、自分の子ども時代を描いた『ちびまる子ちゃん』を描き始めるという結末です。
非常によくできた話のため、「本当の最終回」と信じられることもありました。
しかし、原作にもテレビアニメにも、このような最終回は存在しません。
作者が発表した結末でもありません。
まる子のモデルとなったさくら氏が実際に漫画家になったため、「最後は現実の作者につながる」という展開に妙な説得力が生まれたのでしょう。
長く愛されている作品だからこそ生まれた、代表的な都市伝説のひとつです。
『ちびまる子ちゃん』は実話と創作の境界が面白い
『ちびまる子ちゃん』には、実在する人物をモデルにしたキャラクターが数多く登場します。
たまちゃん、はまじ、ケンタのようにモデルがはっきりしている人物がいる一方、外見や性格、経験した出来事まで現実と同じとは限りません。
友蔵のように、家族をもとにしながら現実とは大きく違う人物へ作り変えた例もあります。
大野君と杉山君のように、複数の記憶や人物像から生まれたキャラクターもいました。
さくらももこ氏は、自分の小学生時代をそのまま漫画にするのではなく、実体験と創作を自由に組み合わせて『ちびまる子ちゃん』の世界を作っていたのです。
だからこそ、「これは本当にあった話なのか」と考えながら読み返すと、以前とは違った楽しみ方ができます。
第98話や幻の最終回のように、長年愛されてきたことで生まれた都市伝説まで含めて、『ちびまる子ちゃん』の奥深さにつながっているのです。

笑って、なつかしくて、どこか心があたたまる『ちびまる子ちゃん』をまとめて楽しめる全18巻セット。
まる子と家族、友だちとの何気ない毎日には、思わず共感してしまう笑いと名場面がたっぷり詰まっています。
何度でも読み返したくなる名作を、ぜひ全巻そろえて楽しんでください。





















