『呪術廻戦』には、アニメや原作を見ているだけでは分からない設定が数多く存在します。
芥見下々氏が回答した『呪術廻戦 公式ファンブック』には、350問以上のキャラクターQ&Aや、これまで公開されていなかった設定まで収録されています。
さらに、2024年から開催された『呪術廻戦』展では、連載前に作られた幻のプロトタイプまで公開されました。
今回は、そんな公式資料や芥見下々氏の発言、アニメ制作スタッフのインタビューなどから、『呪術廻戦』の意外な裏設定を紹介します。
なお、記事後半には原作最終回までの内容が含まれています。
乙骨憂太は虎杖悠仁より先に主人公だった

現在では『呪術廻戦0』は本編の前日譚として知られています。
しかし、作品が作られた順番は逆でした。
芥見下々氏は2017年に『東京都立呪術高等専門学校』を「ジャンプGIGA」で短期連載し、その翌年の2018年から『呪術廻戦』の連載を始めています。
つまり、乙骨憂太、禪院真希、狗巻棘、パンダ、五条悟、夏油傑などが登場する世界のほうが先に作られていたのです。
現在の視点では乙骨が「もう一人の主人公」のように見えますが、作品の歴史を考えると、乙骨こそが最初の主人公だったことになります。
その後、新たに虎杖悠仁、伏黒恵、釘崎野薔薇などが作られ、現在の『呪術廻戦』へと発展していきました。
連載前には幻の『呪術匝戦』が存在した
『東京都立呪術高等専門学校』から、すぐ現在の『呪術廻戦』が誕生したわけではありません。
その間には『呪術匝戦(じゅじゅつそうせん)』という幻の作品が存在しています。
これは『東京都立呪術高等専門学校』を発表した後に芥見下々氏が制作したプロトタイプです。
一般には公開されないまま眠っていましたが、2024年に始まった芥見下々『呪術廻戦』展で、そのネームの一部が初めて展示されました。
つまり、『呪術廻戦』は、
『東京都立呪術高等専門学校』
↓
『呪術匝戦』
↓
『呪術廻戦』
という段階を経て現在の形になったことが分かります。
現在のキャラクターや物語が完成するまでには、読者が知らなかった「もう一つの呪術廻戦」が存在していたのです。
五条悟が目隠しをしている本当の理由

五条悟といえば、黒い目隠しやサングラスが特徴です。
しかし、これは単なるファッションではありません。
五条が持つ「六眼」は、呪力を非常に細かいところまで見ることのできる特殊な目です。
その能力があまりにも高いため、普通に目を開けたまま生活すると大量の情報が入ってきて疲れてしまいます。
そこで五条は、普段から目隠しや特殊なサングラスを使って情報を減らしています。
しかも、目隠しをしている状態でも、周囲は「高解像度のサーモグラフィー」のように見えていることが公式ファンブックで明かされています。
つまり、五条にとって目隠しは視界をなくす道具ではなく、強すぎる六眼の性能を抑えるためのフィルターなのです。
五条悟が物語から退場したのは強すぎたから?
五条悟が物語から退場した理由については、ファンの間でさまざまな説があります。
特に有名なのが、
「芥見下々氏が五条悟を嫌っていたからではないか」
という説です。
芥見下々氏が五条について冗談交じりの辛口コメントを残してきたことから、この説が広がりました。
しかし、「五条が嫌いだから退場させた」と芥見下々氏が公式に説明した事実はありません。
一方、五条を作った目的については、公式ファンブックで「作品の強さの天井となる人物」を作る意図があったことが明かされています。
これは物語を考えるうえで非常に重要です。
五条は強すぎるため、普通に活動しているだけで多くの問題を一人で解決できてしまいます。
敵側が渋谷で五条と真正面から戦うのではなく、何とか封印しようとしたのもそのためです。
物語の作り方という視点で見ると、五条がいなくなることで虎杖、伏黒、乙骨、真希たちが自分の力で問題に立ち向かわなければならない状況が生まれます。
さらに終盤では「現代最強」の五条と「史上最強」の宿儺が激突しました。
もし五条がそのまま宿儺を倒していれば、主人公である虎杖たちが物語を引き継ぐ機会は少なくなります。
そのため、
「五条を退場させたのは作者が嫌っていたから」
という説より、
「最強の五条から次の世代へ物語を渡す必要があった」
と考えるほうが作品全体の構造には合っています。
ただし、これは芥見下々氏が明言した退場理由ではなく、公式に明かされた五条の役割と物語の流れから考えられる解釈です。
裏梅が宿儺に仕えていた理由は料理だった
宿儺に対して絶対的な忠誠を見せる裏梅ですが、なぜ千年以上も前から宿儺のそばにいるのでしょうか。
その理由は、強い術師だからというだけではありません。
公式ファンブックでは、裏梅が非常に高い料理技術を持っていたことが明かされています。
宿儺は普通の人物とは大きく異なる食生活をしており、その特殊な食材まで上手に調理できる人物は貴重でした。
裏梅には、それを可能にする優れた料理の才能があったのです。
つまり裏梅は、
「宿儺の強力な部下」
であると同時に、
「宿儺専属の料理人」
ともいえる存在でした。
アニメだけを見ていると、宿儺が裏梅を特別扱いする理由はほとんど分からないため、かなり意外な裏設定です。
作中の両面宿儺は伝説の両面宿儺本人ではない

「両面宿儺」という名前は『呪術廻戦』が作ったものではありません。
古い日本の記録である『日本書紀』にも、飛騨国に存在したとされる「宿儺」の記述があります。
一つの体に二つの顔を持ち、複数の手を持つ人物として記録されているため、『呪術廻戦』の宿儺との共通点もあります。
そのため、
「作中の宿儺は日本書紀に登場する両面宿儺本人なのでは?」
と考えた人も少なくありません。
ところが芥見下々氏は公式ファンブックで、この二人を同一人物として設定したわけではないことを明かしています。
作中の宿儺は、姿や強さなどから「宿儺っぽいので宿儺と呼ばれていた人物」という設定です。
つまり「両面宿儺」は、本当の名前ではない可能性があります。
日本に残された伝説そのものを登場させたのではなく、その名前とイメージを利用して作られた別の人物なのです。
釘崎野薔薇を高専へ推薦したのは祖母だった
釘崎野薔薇は田舎を離れ、東京の呪術高専へやって来ます。
しかし、どうやって呪術高専へ入学したのかについて、アニメではほとんど説明されません。
公式ファンブックによると、野薔薇を呪術高専へ推薦したのは祖母でした。
しかも、推薦をめぐって二人の間で少し揉めたことまで設定されています。
さらに野薔薇が使う「芻霊呪法」は祖母も使っており、野薔薇は祖母から術式を教わっています。
つまり野薔薇の呪術師としての原点には、アニメではほとんど姿を見せない祖母の存在がありました。
東京への強い憧れを持つ野薔薇ですが、呪術師としての力そのものは故郷の家族から受け継いでいたことになります。
「じゅじゅさんぽ」は芥見下々氏本人が作っていた
アニメ第1期のエンディング後に放送された「じゅじゅさんぽ」。
本編とは違い、虎杖たちの日常をコミカルに描いた短いアニメです。
アニメ制作スタッフが考えたオリジナルのおまけだと思った人も多いかもしれません。
しかし実際には、芥見下々氏本人が「じゅじゅさんぽ」のためにネームを描き下ろしています。
そのネームをMAPPAがアニメ化する形で制作されました。
そのため「じゅじゅさんぽ」で描かれた虎杖、伏黒、野薔薇、五条たちの性格や日常は、作者の考えを直接反映したものです。
さらに2025年の『劇場版総集編 呪術廻戦 懐玉・玉折』でも、芥見下々氏原作による新しい「じゅじゅさんぽ」が制作されています。
本編では見られないキャラクターの姿を知るための、意外と重要な公式エピソードなのです。
「懐玉・玉折」が青春映画のようなのは意図的だった
アニメ第2期の「懐玉・玉折」を見て、第1期とは雰囲気がかなり違うと感じた人も多いのではないでしょうか。
若い五条悟と夏油傑の学生生活は明るく、映像もどこか青春映画のように描かれています。
これは偶然ではありません。
第2期を手掛けた御所園翔太氏は、「懐玉・玉折」には五条と夏油の「青春アイドルムービー」として作った面もあったと説明しています。
最初の時間をできるだけ明るく楽しい青春として描くことで、その後に二人の道が分かれていく展開との落差を大きくする狙いがありました。
つまり、序盤を爽やかに描けば描くほど、後半がつらく感じられるように計算されていたのです。
原作と同じ物語でも、アニメでは映像の雰囲気そのものを使って五条と夏油の関係を表現していました。
芥見下々氏は『BLEACH』から大きな影響を受けていた
『呪術廻戦』を読んで『BLEACH』を思い出した人もいるかもしれません。
これは単なるファンの似ている作品探しではありません。
『呪術廻戦 公式ファンブック』には、芥見下々氏と『BLEACH』作者の久保帯人氏による特別対談まで収録されています。
公式ファンブックでは、芥見下々氏がどのような漫画、映画、アニメから影響を受けて作品を作ったのかも紹介されています。
『呪術廻戦』の独特なセリフ回しや能力バトル、個性的なキャラクター作りの背景には、芥見下々氏が若いころから触れてきたさまざまな作品があります。
『呪術廻戦』だけを見るのではなく、芥見下々氏が影響を受けた作品を知ることで、キャラクターや世界観の作り方が違って見えてきます。
虎杖は最後まで宿儺を救おうとしていた?
『呪術廻戦』の始まりは、虎杖悠仁が宿儺の指を取り込んだことでした。
そのため物語の最後も、虎杖と宿儺の関係が大きな意味を持っています。
最終決戦では、宿儺は伏黒恵の肉体を利用しています。
虎杖たちは宿儺と伏黒を引き離そうと戦い、最後には釘崎野薔薇の「共鳴り」も大きな助けとなりました。
そして追い詰められた宿儺に対して、虎杖は意外な選択をします。
虎杖は宿儺をただ消し去ろうとするのではなく、自分の中へ戻ってもう一度生きる道を示しました。
宿儺はその提案を受け入れず、やがて姿を消します。
ここで重要なのは、虎杖が最後まで宿儺を「ただ倒すだけの相手」として扱わなかった点です。
虎杖自身も、さまざまな出来事や人との出会いによって考え方を変えてきました。
だからこそ、宿儺にも別の生き方を選べる可能性があると考えたのでしょう。
さらに最終話では、宿儺自身にも「別の道」が存在した可能性を感じさせる描写があります。
そのため、
「虎杖の言葉は本当に宿儺へ何も届かなかったのか」
という考察が生まれています。
物語の最初では、虎杖の体を奪う存在だった宿儺。
しかし最後には、虎杖のほうから「自分の中で生きる」という選択肢を差し出しました。
二人の立場が完全に逆転しているのです。
これは『呪術廻戦』という長い物語を締めくくるうえで、非常に意味のある場面だったと考えられます。
まとめ
『呪術廻戦』には、本編だけでは分からない設定や制作秘話が数多く存在します。
特に公式ファンブックは、芥見下々氏への350問以上のQ&Aや初公開設定が掲載された重要な資料です。
また、『呪術匝戦』の存在が公式展覧会で初公開されたように、連載終了後になって初めて明らかになった制作秘話もあります。
五条悟についても、「作者が嫌いだったから退場させた」という話を事実として受け取るのではなく、公式情報とファンによる考察を分けて考えることが重要です。
五条は最強という役割を持ち、虎杖たち次の世代へ物語をつなぐ存在でもありました。
そして最後には、虎杖と宿儺という物語の始まりから続いてきた二人の関係にも一つの答えが示されています。
こうした背景を知ってからアニメを見直すと、五条の目隠しや裏梅の行動、宿儺の名前など、何気なく見ていた場面にも別の意味が見えてくるかもしれません。





















