『NARUTO -ナルト-』は、忍術や血継限界、尾獣など非常に細かな設定が作られている作品です。
しかし、現在では当たり前になっている世界観や人気キャラクターの中には、連載直前や連載途中で大きく変更されたものがあります。
ナルトが最初は人間ではなかったことや、サスケが編集者の提案から生まれたことなど、完成した作品からは想像しにくい初期構想も少なくありません。
さらに、イタチの真相がいつ決められたのか、自来也が穢土転生で戻らなかった制作上の理由など、岸本斉史氏のインタビューによって初めて分かった話もあります。
今回は『NARUTO -ナルト-』を見ただけでは分かりにくい、公式資料や制作関係者の発言を中心とした裏設定・制作秘話を紹介します。
ナルトはもともと人間ではなく狐だった

現在のナルトは、人間の少年の中に九尾が封印されているという設定です。
しかし、『NARUTO』が忍者漫画になる前には、ナルト自身が狐側の存在として考えられていました。
岸本斉史氏によると、さらに前には「ナルトという少年がラーメンを作る漫画」という案まであったそうです。
その案が採用されず、次に考えたのが、狐の人間が登場する妖怪・妖術寄りの作品でした。
そこへ忍術という要素が加わり、最終的に現在の忍者漫画へ変化しています。
つまり、「人間の中に九尾がいる」という『NARUTO』最大級の設定そのものが、最初から存在していたわけではありません。
もし初期案のままだったら、作品の雰囲気は現在とはまったく違うものになっていたでしょう。
サスケは担当編集者の提案から生まれた

今ではナルトと並ぶほど重要な存在である、うちはサスケ。
ところが初期構想には、現在のサスケにあたるライバルが存在していませんでした。
岸本斉史氏は、ナルトだけでは物語をうまく動かせず、このままでは連載が長く続かないのではないかと感じていたそうです。
そこで初代担当編集者の矢作康介氏から、「ライバルを作ったほうがいい」という提案を受けます。
その結果として誕生したのがサスケでした。
さらにサスケを作ったあと、ヒロインも必要だと考えてサクラが加えられています。
つまり第七班を作った順番は、最初からナルト・サスケ・サクラの3人をセットで考えたものではありません。
物語を書きやすくするためにサスケが誕生し、そこから現在の人間関係が形作られていったのです。
中忍試験は『HUNTER×HUNTER』の影響を受けていた
中忍試験編は、『NARUTO』の人気を大きく高めたエピソードのひとつです。
各里から集まった忍たちが試験に挑み、次々と新しいライバルが登場する展開は、現在でも高く評価されています。
ところが、この中忍試験は最初から予定されていたわけではありません。
2026年8月に報じられた初代担当編集者・矢作康介氏のインタビューによると、波の国編が終わった時点では、その後の展開がまだ固まっていなかったそうです。
当時連載されていた冨樫義博氏の『HUNTER×HUNTER』ではハンター試験が描かれており、矢作氏はその試験形式を参考にして中忍試験を考えたことを明かしています。
実際、当時からハンター試験と中忍試験が似ているという声はありました。
ただし、岸本斉史氏はそこから大蛇丸の登場や木ノ葉崩しなど独自の展開を加え、『NARUTO』を代表する長編へ発展させています。
長年ファンの間で語られてきた「ハンター試験との関係」に、制作関係者本人から答えが出た形です。
白はもともと人間ではなく熊だった
再不斬(ざぶざ)と白(はく)の物語は、序盤の『NARUTO』を代表する名エピソードです。
しかし、白には驚くべき初期案がありました。
岸本斉史氏が最初に考えていた再不斬の相棒は、現在のような少年ではなく熊だったのです。
担当編集者との話し合いによって人間へ変更され、最終的に現在の白が誕生しました。
白は再不斬との関係やナルトとの出会いを通して、作品の重要なテーマである「大切な人のために強くなる」という考え方を示した人物でもあります。
もし熊のままだったら、波の国編そのものがかなり違った物語になっていたはずです。
三代目火影は犬になる可能性があった
初期の『NARUTO』は、現在よりもかなりファンタジー色の強い世界を想定していました。
その名残ともいえるのが、火影や先生を動物にする構想です。
初代担当編集者の矢作康介氏は、岸本斉史氏が火影や教師役を動物にしようとしていたことを明かしています。
編集側の意見によって、この案は取りやめられました。
特に有名なのが、三代目火影に関する初期案です。
現在の猿飛ヒルゼンとは異なり、二代目火影が飼っていた犬を里の長にする構想があったとされています。
ナルト自身も狐だった初期案を考えると、当初の『NARUTO』では人間と動物が現在よりも自然に同じ社会で暮らす世界を考えていたことが分かります。
忍者中心の作品へ整理される過程で、世界観も大幅に変更されたのでしょう。
我愛羅の原型は薬で身体能力を高めた7歳の忍だった
我愛羅も、現在とはまったく違う姿から生まれたキャラクターです。
公式データブック『秘伝・陣の書』に掲載された岸本斉史氏と矢作康介氏の対談では、「雲丸」というキャラクターが我愛羅の原型だったことが明かされています。
雲丸は7歳のころから薬を使われ、身体能力を限界近くまで高められたエリート忍という設定でした。
その後、名前やデザイン、設定が何度も作り直され、現在の我愛羅へ変化しています。
一尾を宿し、ナルトと似た境遇を持ちながら正反対の道を進んだ少年という現在の設定とは、かなり印象が違います。
また、我愛羅には「小太郎」という名前案もありました。
岸本斉史氏はこの名前を気に入っていましたが、編集者との話し合いを経て「我愛羅」に変更されています。
結果的には、額に刻まれた「愛」と名前が強く結びつき、現在では他の名前を想像できないほど完成されたキャラクターになりました。
カカシはもっと堅苦しい先生になる予定だった
いつも少し遅れて現れ、本を読みながらどこか気の抜けた態度を見せるはたけカカシ。
そんな現在の性格とは違い、初期のカカシはもっと堅い人物として考えられていました。
岸本斉史氏によると、キャラクターを作り始めたころは侍のようなイメージがあり、厳しく古風な先生として描こうとしていたそうです。
しかし、実際に考えてみると「力の抜けた先生のほうが面白い」と感じ、現在のような話し方や性格へ変化していきました。
普段はのんびりしているのに、本気になると印象が大きく変わるというカカシの魅力は、この変更によって生まれたことになります。
なお岸本斉史氏は、カカシにマスクを付けたことで口を使って表情を描けず、後になって描くのが難しいと感じたことも語っています。
人気キャラクターの象徴となったマスクが、作者自身を苦労させていたというのも面白い話です。
イタチの真相は最初からすべて決まっていたわけではない
イタチについては、ファンの間で長年議論されてきた有名な説があります。
「イタチの真相は最初から考えられていたのか、それとも途中で変更されたのか」という問題です。
岸本斉史氏の説明を見ると、答えはその中間に近いようです。
サスケが兄の存在について語った初期段階では、イタチが過去に大きな事件を起こした人物という程度で、詳しい事情までは決められていませんでした。
しかし、イタチ本人を本格的に登場させる段階では、「表面上見えている人物像とは違う事情がある」という方向を決めていたとされています。
そのため、「最初からすべて計算されていた」とする説も、「途中で突然設定を反対にした」とする説も少し違います。
大まかな方向を途中で決め、そこから物語を深く作り込んでいったと考えるのが自然でしょう。
自来也を穢土転生で戻さなかったのには制作上の理由もあった
第四次忍界大戦では、穢土転生によって過去の忍たちが大量に登場します。
そのため、「なぜ自来也はいなかったのか」と疑問に思った人も多いでしょう。
作品内では、自来也の身体が深い場所にあり、必要な情報を確保することが難しかったという説明があります。
しかし、作者側にはさらに重要な理由がありました。
岸本斉史氏はインタビューで、自来也との別れがナルトの成長にとって非常に重要だったため、再び登場させるとうまく描けないと考えたことを説明しています。
自来也との出来事によって、ナルトは大切な存在を失ったサスケの気持ちにも近づきました。
その成長をなかったことにしないためにも、自来也は戻さないほうがよいと判断されたのです。
つまり、自来也が穢土転生されなかったのは「術の条件を満たせなかったから」だけではありません。
物語の意味を守るための作者側の判断でもありました。
ネジの大きな場面にはナルトとヒナタを近づける役割もあった
第四次忍界大戦で描かれた日向ネジの大きな場面には、物語上の別の役割もありました。
岸本斉史氏は完結後のインタビューで、ネジがナルトとヒナタを近づける「キューピッド」のような役割を果たしたことを語っています。
もちろん、そのためだけに用意された人物という意味ではありません。
ネジ自身の物語や日向一族との関係を描いたうえで、最後にはナルトとヒナタの関係にも大きな影響を与える存在になったということです。
さらに、このとき岸本氏は2人の子どもの名前として「ボルト」を考えています。
「ネジ」と「ボルト」は、どちらも物を固定する部品を連想させる言葉です。
ボルトという名前には、両親を結びつけたネジへの意味も込められていました。
『BORUTO』まで見ると、世代を越えて名前がつながっていることが分かります。
ナルトの両親の回想はもっと短い予定だった
四代目火影・波風ミナトと、うずまきクシナ。
2人とナルトの関係は物語後半の大きな見どころですが、岸本斉史氏は当初、このエピソードをもっと短く描く予定でした。
しかし物語を続けるうちに、ナルトが「自分が両親からどのように思われていたのか」を知ることが、主人公として成長するために必要だと考えるようになります。
岸本氏自身が親になった経験も、このエピソードに影響したと公式インタビューで語っています。
物語序盤のナルトは、自分がどこから来たのかも分からず、周囲から認めてもらうことを強く求めていました。
そんなナルトが両親の思いを知ることは、単なる出生の秘密を明かすだけではありません。
「自分は最初から大切に思われていた」と知るための重要なエピソードになったのです。
ミナトの独特すぎる術名は本当に公式設定だった
波風ミナトは、冷静で頭がよく、戦いでも圧倒的な才能を持つ人物です。
ところが、そんな完璧に見えるミナトには意外な弱点があります。
それが、術に付ける名前のセンスです。
「螺旋閃光超輪舞吼参式」など、ミナトが考えた名前には妙に長く、勢いのあるものが多く存在します。
これはファンが勝手に作ったネタではありません。
岸本斉史氏が描いたミナトの読切作品でも、クシナとのやり取りを通して独特なネーミングセンスが改めて描かれています。
NARUTO公式サイトでも、ミナトのネーミングセンスについて触れられています。
強く、冷静で、後に四代目火影となる人物なのに、名前を付けると急に少年のような感覚が出てくるところもミナトの魅力なのでしょう。
『NARUTO』は編集者とのやり取りで大きく姿を変えた作品だった

『NARUTO -ナルト-』の裏設定を調べていくと、特に目立つのが初代担当編集者・矢作康介氏の存在です。
ナルトを狐から人間へ変更すること。
サスケというライバルを作ること。
白を熊から人間へ変えること。
火影や先生を動物にしないこと。
中忍試験を行うこと。
こうした作品の根幹に関わる部分に、編集者との話し合いが深く関係していました。
もちろん、最終的に物語やキャラクターを作り上げたのは岸本斉史氏です。
しかし、最初から完成された『NARUTO』の世界が存在し、それをそのまま描いていたわけではありません。
岸本氏と編集者がアイデアを出し、変更を重ねながら、現在知られている忍の世界へ形を整えていったのです。
初期設定を知ったあとにもう一度作品を見ると、サスケや白、我愛羅といった人物が現在の姿になったこと自体が、『NARUTO』という作品にとって大きな分岐点だったことが分かります。





















