『DEATH NOTE』には、本編を読んだだけでは分からない設定や制作秘話が数多くあります。
公式ガイド『DEATH NOTE HOW TO READ 13』では、大場つぐみ氏と小畑健氏がキャラクターの誕生秘話や、本編であえて答えを出さなかった謎について語っています。
さらに、長年ファンの間で語られてきた有名な考察の中には、作者が直接コメントしているものまであります。
今回は、作品を最後まで知っている人ほど驚く『DEATH NOTE』の裏設定を紹介します。

名前を書かれた人間の命を奪う「デスノート」を手にした夜神月と、世界的名探偵Lの頭脳戦を描く『DEATH NOTE』。
先の読めない心理戦や緻密な駆け引き、正義とは何かを問いかける重厚な物語が大きな魅力です。
最後まで一気に読みたくなる名作を楽しめる、全12巻セットです。
夜神月はノートを拾わなければLと組んでいた

夜神月(やがみ らいと)とL(える)といえば、お互いの正体を探りながら争った最大のライバルです。
しかし大場つぐみ氏によると、リュークが人間界に興味を持たず、月がデスノートと出会わなければ、まったく違う未来になっていたそうです。
月は世界でも有数の警察組織のリーダーになり、Lと協力して犯罪者を追う人物になっていたと考えられています。
さらに大場氏は、ノートを手にする前の月について、他人の痛みを理解できる青年だったという趣旨の説明もしています。
そして、ノートを手にしたことで月の人生そのものが狂ってしまったとも語っています。
つまり月とLは、本来なら敵ではなく、世界屈指の頭脳を持つ最強の捜査コンビになっていた可能性があるのです。
ヨツバ編で記憶を失った月がLと協力する姿は、ノートと出会わなかった月の人生を少しだけ見せたものとも考えられます。
Lの本名は本編では最後まで明かされなかった
Lは「竜崎」「流河旱樹」など複数の名前を使っていますが、本名は「L Lawliet(エル・ローライト)」です。
意外にも、この名前は漫画本編では最後まで明かされません。
本名が正式に公開されたのは、公式ガイド『DEATH NOTE HOW TO READ 13』に付属した「L TRUE NAME CARD」でした。
そのため、連載だけを読んでいた読者は最後までLの本当の名前を知ることができなかったのです。
なお「LawlietはLaw(法)とLie(嘘)を合わせた名前」という説も有名です。
Lの立場を考えると非常にそれらしい説ですが、大場氏が公式に語った語源としては確認されていません。
そのため、これは公式設定ではなくファンによる考察として扱うのがよいでしょう。
Lには日本・イギリス・ロシアなどの血が流れている

Lの両親や生い立ちは、本編ではほとんど描かれていません。
しかし大場つぐみ氏は、Lのルーツについて独自のイメージを明かしています。
大場氏のイメージでは、日本人、イギリス人、ロシア人がそれぞれ4分の1で、残りの4分の1はフランス人かイタリア人とのことです。
これは作中で明確に語られた家系図ではなく、あくまで作者が持っていたキャラクター像です。
国籍も経歴も謎だらけだったLらしい裏設定と言えるでしょう。
南空ナオミは頭が良すぎて予定より早く退場した
南空ナオミは、レイ・ペンバーの婚約者として登場した元FBI捜査官です。
登場期間は短いものの、バスジャック事件とFBI捜査官の事件がつながっていることに自力で気づき、月を追い詰める直前まで進みました。
これは偶然ではありません。
大場つぐみ氏は制作中、ナオミが想定していた以上に頭の切れる人物になり、真相へ早く近づきすぎてしまったため、物語上扱いに困ったという趣旨を明かしています。
月にとって危険だっただけではなく、作者にとっても「優秀すぎる人物」になってしまったわけです。
短い登場ながら強烈な印象を残す理由の一つでしょう。
ニアとメロのデザインは本来逆だった
ニアとメロには、制作途中で起きた意外なハプニングがあります。
小畑健氏が最初に考えていたデザインでは、現在のニアの姿がメロで、現在のメロの姿がニアでした。
ところが小畑氏が担当者へデザインを渡す際、名前を逆に書いてしまいます。
その状態で大場つぐみ氏からOKが出てしまったため、小畑氏は「実は逆だった」と言い出しにくくなり、そのまま現在の組み合わせになったそうです。
つまり編集側の取り違えではなく、小畑氏自身の書き間違いから生まれた偶然でした。
もしミスがなければ、無邪気な少年のような外見のメロと、鋭い雰囲気を持つニアが登場していたことになります。
ニアの本名には「Lの後継者」という意味がある
ニアの本名は「Nate River(ネイト・リバー)」です。
この名前は適当に付けられたものではありません。
大場つぐみ氏によると、「Nate」はNaturalから、「River」はLから才能が流れてくるイメージから付けられました。
生まれながらに才能を与えられた、自然なLの後継者という意味が込められているのです。
なお、Lの「Lawliet」やメロの「Mihael Keehl」にもさまざまな語源説があります。
しかし、ニアほどはっきりした作者説明が確認できるわけではないため、ファン考察と公式設定を分けて考えた方がよいでしょう。
リュークは当初イケメン青年になる予定だった

現在のリュークは、人間とは大きく違う不気味な姿をしています。
しかし小畑健氏が最初に考えていた姿は、現在とはまったく違いました。
初期案では、黒髪と翼を持つ、月に似た若い男性のような姿が考えられていたそうです。
小畑氏には、リュークたちをロックスターのような格好いい存在として描くイメージがありました。
ところがリュークを格好よくしすぎると、月より主人公らしく見えてしまいます。
そこで人間らしさを減らし、現在の怪物的なデザインへ変更されました。
もし初期案が採用されていたら、『DEATH NOTE』全体の雰囲気もかなり違っていたかもしれません。
読切版の主人公は夜神月ではなく「鏡太郎」だった
『DEATH NOTE』には、連載が始まる前に作られた読切版があります。
この物語の主人公は夜神月ではありません。
「鏡太郎」という中学生の少年が、偶然デスノートを拾うところから始まります。
天才的な頭脳を持ち、自分から新世界を作ろうとする月とは違い、鏡太郎はノートの力に巻き込まれていく普通の少年として描かれました。
この読切版は、後に公式ガイド『DEATH NOTE HOW TO READ 13』にも収録されています。
現在の作品とはかなり違うため、連載版ができるまでに作品の方向性が大きく変わったことが分かります。
読切版には幻の「デスイレイザー」が存在した
読切版には、連載版には登場しない驚きの道具があります。
それが「デスイレイザー」です。
デスノートに書いた名前をこの消しゴムで消すと、一定の条件を満たしていれば、その人物を元の状態へ戻すことができました。
現在の『DEATH NOTE』では考えにくい、強力なやり直しの道具です。
大場つぐみ氏は、読切を一話でまとめるためには、ノートによって起きた出来事を元に戻す必要があったという趣旨を語っています。
一方で、大場氏自身はこのアイテムをあまり気に入っていなかったとも明かしています。
連載版から完全に消えたことで、ノートを使った行為を簡単には取り消せない緊張感が生まれました。
最初から「月対L」の物語だったわけではない
現在では『DEATH NOTE』といえば、月とLの頭脳戦を思い浮かべる人が多いでしょう。
しかし大場つぐみ氏は、最初から現在の形を考えていたわけではありません。
集英社のインタビューで大場氏は、当初は月がノートを使って、ひたすら人を裁いていく話として考えていたと説明しています。
その後、担当者と相談する中で、ライバルとなるLをもっと目立たせ、月とLを二人の主人公のように動かした方が面白いと考えるようになりました。
作品最大の魅力となった「月対L」の構図は、制作途中の話し合いから生まれたのです。
ニアは魅上をデスノートで操っていた?
原作の最後に残された最大級の謎が、松田桃太の唱えた「ニアがノートを使ったのではないか」という説です。
松田は、ニアが魅上照の名前を本物のノートに書き、YB倉庫で予定通り行動するよう仕向けた可能性を考えます。
その後、ノートを燃やしてしまえば証拠は残りません。
大場つぐみ氏も、この説を完全には否定していません。
ニアはノートの偽ルールを知っていたため、自分で名前を書くことを恐れなかった可能性もあるという趣旨のコメントを残しています。
つまりニアが正攻法だけで月に勝ったのか、それとも最後に禁じ手を使ったのかは、現在も答えが確定していません。
松田の何気ない疑問によって、最終決戦の見え方が大きく変わる仕掛けになっています。
最終回で祈っている女性はミサではない
原作最終回には、キラを信じる人々が山を歩き、最後に一人の女性が祈る場面があります。
この女性については、長年「弥海砂ではないか」と考える読者がいました。
しかし、この説には作者から明確な回答が出ています。
大場つぐみ氏は、あの女性はキラを信じる一般の信者であり、ミサではないと説明しています。
小畑健氏も特定の人物ではないと答えているため、「最後の女性=ミサ」という説は公式に否定されています。
顔を見せる構図になったことで意味深に見えますが、物語上の正体を持つ人物ではなかったのです。
ミサのその後は公式ガイドで明かされている
漫画本編では、最終決戦後の弥海砂の生活は描かれません。
しかし公式ガイドの人物データでは、ミサの命日は2011年2月14日とされています。
月に起きた出来事から約1年後のバレンタインデーです。
また大場つぐみ氏は、ミサが月への気持ちを失っておらず、松田などから月が亡くなったことを聞き、絶望して自ら命を絶ったのではないかという趣旨の考えを語っています。
ここで注意したいのは、命日は公式データですが、その理由は本編で直接描かれた事実ではなく、大場氏が考えた可能性として語られている点です。
最終回の女性がミサではないという回答と合わせると、ミサの結末がよりはっきり見えてきます。
月はリュークと同じ存在に生まれ変わった?

アニメ特別編『DEATH NOTE リライト 幻視する神』には、名前のない謎の存在が登場します。
この人物が「夜神月の生まれ変わりではないか」という説は、『DEATH NOTE』でも特に有名な都市伝説です。
服装や雰囲気、リュークへリンゴを渡す行動など、月を思わせる点がいくつもあるためです。
しかし、これは公式に確定した設定ではありません。
原作では、人間は最終的に「無」へ行き、一度命を失えば元には戻らないというルールが示されています。
そのため、少なくとも原作漫画のルールで考えると、月だけが特別に別の存在として転生したという説明とは合いません。
月を思わせる演出を楽しむための説としては非常に面白いものの、「月の正体が公式に明かされた」と考えるのは避けた方がよいでしょう。
大場つぐみ氏の正体は『ラッキーマン』のガモウひろし氏?
『DEATH NOTE』最大の裏設定は、作品の中ではなく原作者自身にあるとも言えます。
大場つぐみ氏については、以前から『とっても!ラッキーマン』で知られる漫画家・ガモウひろし氏と同一人物ではないかという説が広く知られています。
その根拠としてよく挙げられるのが、『バクマン。』などで公開された大場氏のネームがガモウ氏の絵柄と非常によく似ていることです。
さらに『DEATH NOTE』第1話には「蒲生ゼミナール」という名前が登場し、『バクマン。』にもガモウ氏や『ラッキーマン』を思わせる設定がいくつもあります。
そして「大場つぐみ」という名前そのものにも、ガモウ氏との関係を思わせる有名な説があります。
それが「大×組(おお・ばつ・ぐみ)」です。
ジャンプでヒット作を出せなくなった漫画家や、連載企画がなかなか通らない漫画家を「×組」と呼び、ガモウ氏が自分を自虐的に「大×組」と表現したことから、
「大×組」→「おおばつぐみ」→「大場つぐみ」
というペンネームが生まれたのではないか、と言われています。
もしこの説が本当なら、かなりユーモアのある名前の付け方です。
ただし、「大×組」がペンネームの正式な由来であると、大場氏本人や集英社が明らかにしたわけではありません。
また、大場つぐみ氏とガモウひろし氏が同一人物であることについても、集英社は公式には認めていません。
過去に問い合わせを受けた際にも、作家のプライベートに関わるため回答できないという立場を取っています。
『DEATH NOTE』という秘密だらけの作品を生み出した原作者自身も、正体やペンネームの由来に謎を残しているというのは、この作品らしいエピソードです。
デスノートの裏設定まとめ
『DEATH NOTE』は、月とLの頭脳戦だけでも非常に完成度の高い作品ですが、制作の裏側を知ると見え方が大きく変わります。
ノートを拾わなければ月とLが仲間になっていたことや、ニアとメロの姿が偶然入れ替わったことなど、現在の物語がほんの少しの違いで別の形になっていたことも分かります。
一方で、ニアが本当にノートを使ったのか、アニメ特別編の謎の存在に月を重ねる意図がどこまであったのかなど、あえて答えを残した部分もあります。
すべてを説明せず、最後まで読者に考える余地を残したことも、『DEATH NOTE』が今なお考察され続ける理由の一つなのでしょう。

名前を書かれた人間の命を奪う「デスノート」を手にした夜神月と、世界的名探偵Lの頭脳戦を描く『DEATH NOTE』。
先の読めない心理戦や緻密な駆け引き、正義とは何かを問いかける重厚な物語が大きな魅力です。
最後まで一気に読みたくなる名作を楽しめる、全12巻セットです。





















