『銀魂』はギャグ作品という印象が強い一方、本編では説明されていない設定が数多く存在します。
特に単行本の質問コーナーでは、空知英秋氏が登場人物について突然重要な情報を明かすことがありました。
さらに連載終了後に発売された公式ファンブック『広侍苑』には、新しいキャラクタープロフィールだけでなく、連載開始前に作られていた『銀魂』のネームまで収録されています。
その内容を見ると、現在の万事屋や真選組とはまったく違う『銀魂』が作られる可能性もあったことが分かります。
ここでは、本編を見ているだけでは分かりにくい公式設定、初期設定、有名な考察や都市伝説を中心に紹介します。
考察については、公式に確認されたものと、現在も説にすぎないものを分けて紹介していきます。
坂田銀時は27歳だった

『銀魂』最大級の隠しプロフィールと言えるのが、主人公・坂田銀時の年齢です。
銀時は長年にわたって年齢不詳の主人公として扱われていました。
ところが2021年、『銀魂 THE FINAL』公開時の公式特番で、物語開始時の銀時が27歳だったことが初めて正式に明かされます。
さらに『銀魂 THE FINAL』では2年が経過しているため、銀時は29歳になっています。
では、なぜ主人公の年齢という基本的な設定が17年近く伏せられていたのでしょうか。
理由は、初代担当編集者の大西恒平氏でした。
空知英秋氏によると、連載開始当時に27歳という設定を伝えたところ、少年漫画の主人公としては年齢が高く、読者が引く可能性があるため公表しない方がよいと言われたそうです。
つまり、年齢が決まっていなかったのではありません。
27歳という設定は存在していたものの、編集部との相談によって意図的に隠されていたわけです。
『銀魂』らしい理由ではありますが、まさに「本編では公開されなかった公式設定」と言えるでしょう。
山崎退は近藤や土方より年上
真選組の山崎退にも、見た目からは想像しにくい設定があります。
山崎の年齢は32歳です。
この年齢は本編の会話から判明したものではなく、単行本の質問コーナーで空知英秋氏から明かされました。
しかも近藤勲は28歳とされているため、山崎の方が4歳も年上になります。
土方十四郎よりも年上です。
普段は土方から雑に扱われ、沖田からも先輩らしい扱いをほとんど受けていないため、アニメだけを見ていると20代前半くらいに感じる人も多いのではないでしょうか。
真選組では地味な部下として描かれていますが、年齢だけを見ると主要隊士の中でもかなり上の立場です。
この設定が明かされた当時、ファンの間でも「山崎が32歳なのか」と大きな話題になりました。
登場人物の上下関係と年齢がほとんど一致していないところも、『銀魂』らしい設定でしょう。
神楽の年齢は最初から「14歳」と決まっていたわけではない
神楽については「14歳」と紹介されることが多くなっています。
しかし初期の公式回答は、そこまではっきりしたものではありませんでした。
単行本4巻の質問コーナーで主要人物の年齢を聞かれた空知英秋氏は、神楽について「13、14、それくらい」という大まかな回答をしています。
つまり、少なくとも連載初期には「必ず14歳」という細かな設定まで固定されていたわけではなかったようです。
現在はキャラクター紹介などで14歳として扱われることが一般的ですが、もともとは13~14歳くらいの少女というイメージから始まっています。
『銀魂』では登場人物の誕生日や身長が細かく設定されているため、すべてのプロフィールが最初から完全に決められていたと思われがちです。
実際には、かなり大まかな状態から始まった設定も存在していました。
原作ではキャラクターの瞳の色が固定されていない
アニメでは、銀時、神楽、高杉など、それぞれに決まった瞳の色があります。
そのため原作でも、最初から正式な色が設定されていると思ってしまいます。
ところが空知英秋氏の考え方は少し違いました。
単行本61巻の質問コーナーでキャラクターの瞳の色について質問された際、空知英秋氏は「あまり固定していない」という趣旨の回答をしています。
その場面で何を見ているのかによって、目に映る色が変わるくらいの感覚で描いているそうです。
そのため、原作カラーイラストを比べると、同じ人物でも微妙に色が違って見える場合があります。
「カラーによって瞳の色が違うから設定ミス」というわけではなかったのです。
アニメでは映像作品として色を統一する必要がありますが、原作漫画では色そのものを厳密な設定として扱っていませんでした。
キャラクターの外見を細部まで固定する作品が多い中では、かなり珍しい考え方でしょう。
『銀魂』はもともと真選組が主人公の物語だった
現在の『銀魂』といえば、坂田銀時、志村新八、神楽の万事屋が物語の中心です。
しかし、最初からこの3人が主人公だったわけではありません。
連載前の初期案では、新選組をモデルにした集団が物語の中心になる予定でした。
剣術修行のために上京した永倉新八という人物が土方たちと出会い、仲間になって天人と戦っていく内容が考えられていたとされています。
この段階では、現在の万事屋という設定そのものがありません。
坂田銀時、現在の志村新八、神楽も、今と同じ形では存在していませんでした。
この初期案については、単行本だけでなく、公式ファンブック『広侍苑』にも連載前のネームが収録されています。
集英社自身も『広侍苑』について「プロトタイプ『銀魂』」と紹介しているため、単なるファンの噂ではありません。
もし初期案のまま連載されていれば、『銀魂』は「万事屋の自由な日常」ではなく、組織に所属する侍たちを中心にした作品になっていた可能性があります。
初期版の土方が坂田銀時の原型だった
さらに驚くのが、坂田銀時の原型です。
現在の銀時は坂田金時を思わせる名前を持っていますが、キャラクターが作られていく過程では土方歳三を元にした人物が大きく関係しています。
初期案では、白っぽい髪で力の抜けた目をした土方が存在していました。
しかし空知英秋氏は土方歳三への思い入れが強かったため、史実の土方という枠の中では自由にキャラクターを動かしにくかったようです。
そこでその人物を組織から外し、自由に行動できるキャラクターへ作り変えていきました。
その結果として生まれたのが、現在の坂田銀時につながるキャラクターです。
つまり銀時と土方が妙に似ているのは、単なる偶然とは言い切れません。
どちらも目つきが少し悪く、面倒くさがりで、大人げない部分がありながら、重要な場面では仲間を守ります。
銀時と土方が何度も張り合う姿を見ると、元をたどれば同じキャラクターの考え方から枝分かれした二人という事実が、かなり面白く感じられるでしょう。
初期版の沖田は女性で、神楽とお通にも設定が受け継がれた
連載前の沖田も、現在とはまったく違う人物でした。
初期案では沖田は女性として考えられており、髪型などの外見は後の寺門通に近いデザインだったとされています。
さらに、傘を武器として使うという設定を持っていました。
この「傘を使って戦う」という特徴は、現在の沖田ではなく神楽へ引き継がれています。
連載版を作る際に初期キャラクターの要素が分解され、現在の沖田、神楽、寺門通などへ振り分けられていったわけです。
現在の沖田と神楽は会えば張り合う関係として描かれています。
その二人の元をたどると、一人の初期キャラクターに行き着くというのは非常に面白い裏話でしょう。
現在の人物関係を考えて作られた設定ではありませんが、「沖田と神楽はもともと同じ人物だった」という話がファンの間で有名になった理由でもあります。
正確には、現在の二人が完全に一人の人物だったというより、初期版沖田が持っていた複数の特徴が、別々の人物へ受け継がれたと考える方が正しいでしょう。
エリザベスの声優は公式でも「そのへんにいたオッさん」
エリザベスについては、「中におじさんが入っている」というネタが何度も登場します。
アニメではさらに一歩踏み込み、公式のキャスト表までおかしなことになっています。
テレビ東京の公式キャラクターページを見ると、第15話と第58話のエリザベス役は「そのへんにいたオッさん」と記載されています。
第50話では「アニメをつくってるオッさん」です。
公式サイトそのものがこの表記を使っているため、ファンが作った冗談ではありません。
ただし、「エリザベスの正体は普通のおじさんである」と公式設定で確定しているわけでもありません。
同じ公式ページでは、エリザベスを坂本が桂のもとへ置いていった「謎の宇宙生物」と説明しています。
人間らしい足や手が見えることも説明されていますが、その正体までは明言されていません。
その後の物語でもエリザベスについてさまざまな事実が描かれますが、「着ぐるみの中のおじさん」というギャグと作品内の設定は、あえてきれいに整理されていないようです。
謎を解くどころか公式がさらに謎を増やしている、いかにも『銀魂』らしい人物でしょう。
「レンホウ回は本人の圧力で放送できなくなった」は都市伝説
アニメ『銀魂』には、実在する人物や番組を思わせる危険なパロディが大量に登場します。
中でも有名なのが、第232話です。
この回には当時の政治家・蓮舫氏を強く思わせる人物が登場したため、テレビ東京での放送後、AT-Xなどで予定されていた放送が休止されました。
AT-X公式サイトにも、テレビ東京からの要請によって第232話を放送できなくなったことが記録されています。
その結果、「蓮舫氏本人が怒って放送を止めさせた」という噂がネット上で急速に広まりました。
かなり有名な都市伝説になったため、現在でも事実だと思われることがあります。
しかし、この説は公式情報と一致しません。
当時アニメを監修していた高松信司氏は、テレビ東京側による自主的な判断だったと説明しています。
さらに蓮舫氏の事務所も、番組へ抗議した事実はないと回答しました。
つまり、第232話の扱いが変更されたこと自体は事実です。
一方、「本人から圧力をかけられた」という部分には裏付けがありません。
事実と噂が混ざり、そのまま有名になってしまった『銀魂』を代表する都市伝説の一つです。
「銀時は天人とのハーフ」という説に公式な答えはない
坂田銀時について昔から語られている考察の一つが、「銀時には天人の血が入っているのではないか」という説です。
理由としてよく挙げられるのが、銀色の髪、非常に高い身体能力、そして両親や出生についてほとんど語られていないことです。
作品世界には地球人と天人が一緒に暮らしているため、設定として不可能とは言い切れません。
銀時の幼少期についてもすべてが説明されたわけではないため、ファンの間では長年さまざまな説が考えられてきました。
しかし、銀時が天人とのハーフだと空知英秋氏が公式に明かした事実は確認されていません。
テレビ東京の公式キャラクター紹介でも、銀時は元攘夷志士で剣の達人という説明にとどまり、特殊な種族であるとは書かれていません。
さらに、空知英秋氏はキャラクターの色について厳密に固定しない考え方も明かしています。
そのため、「銀髪だから普通の地球人ではない」と色だけを根拠に断定するのは難しいでしょう。
銀時の両親や出生が最後まで詳しく説明されなかったことは事実です。
しかし、その空白部分を「天人とのハーフ」という設定で埋める公式発表はありません。
現時点では、答えの出ていない有名なファン考察として扱うのが適切でしょう。
『銀魂』は最終話まですべて決めてから描かれたわけではない
『銀魂』には後半になるほど人物同士の過去がつながり、長い物語が一つにまとまっていきます。
そのため、「空知英秋氏は連載開始時から最終話まですべて計算していたのではないか」と考える人もいます。
しかし実際の制作方法は、もう少し柔軟だったようです。
空知英秋氏は2017年のインタビューで、物語のゴール自体は最初から決めていたと説明しています。
一方、最終話については細かな部分まで完成していたわけではなく、大まかに決まっている状態だったとも語りました。
別のインタビューでも、週刊連載について「綱渡り」のようなライブ感で作っていることを認めています。
つまり、大きな到着地点はあったものの、そこへ向かうすべての出来事を連載開始時から決めていたわけではありません。
実際、連載前には真選組中心だった作品が万事屋中心へ変わり、初期キャラクターの特徴も何人もの人物へ分けられています。
『銀魂』の世界は、最初から完成した巨大な設計図をそのまま漫画にしたというより、大きな方向を持ちながら、その時々に面白いものを取り込んで成長していった作品だったのでしょう。
銀魂の裏設定まとめ

『銀魂』には、本編を何度見ても分からない情報が意外なほど残されています。
銀時が27歳だったことが17年近く伏せられていたことや、山崎が32歳だったことなど、基本プロフィールですら後から判明したものがあります。
さらに連載前までさかのぼると、現在の万事屋が存在せず、真選組を中心とした作品になる予定だったという大きな違いもありました。
初期版の土方から銀時につながる要素が生まれ、女性だった沖田の特徴が神楽や寺門通などへ受け継がれたことを考えると、現在の『銀魂』は初期案を何度も組み直して完成した作品だと分かります。
一方、銀時の天人とのハーフ説や、第232話が政治家本人の圧力で止められたという話のように、長年語られていても公式には確定していない説もあります。
『銀魂』は作品そのものがパロディと事実の境界をわざと曖昧にするため、都市伝説まで本当らしく見えてしまうところがあります。
公式設定とファンの考察を分けて見ていくと、何度も見た『銀魂』にも、まだ知らなかった一面が見つかるのではないでしょうか。





















