『ONE PIECE』といえば、何百話も前に登場した何気ない描写が、後になって重要な意味を持つ作品として知られています。
そのため、すべての設定が連載開始前から細かく決められていたと思っている人も多いのではないでしょうか。
しかし尾田栄一郎氏が公開した初期設定やインタビューを見ると、実際はかなり違います。
現在では欠かせない人気キャラクターが登場直前に作られていたり、当初はまったく別の立場だった人物もいました。
さらに最近の物語では、シャンクスの左腕など、第1話から残されていた謎にも新しい意味が生まれています。
今回は、アニメを見ているだけではなかなか分からない『ONE PIECE』の裏設定や制作秘話、現在も答えが出ていない有名考察を紹介します。
サンジの名前は「ナルト」になる予定だった

麦わらの一味の料理人サンジには、もともと「ナルト」という名前が考えられていました。
理由はもちろん、特徴的なぐるぐる眉毛です。
尾田栄一郎氏は岸本斉史氏との対談でも、設定ノートではサンジを「ナルト」と呼んでいたことを明かしています。
しかし岸本斉史氏の『NARUTO -ナルト-』と名前が重なることから、現在の「サンジ」へ変更されました。
なお、週刊少年ジャンプでの『NARUTO』連載開始だけを見ると、サンジの本編初登場の方が先です。
そのため、この発言は連載前の読切版や制作段階を含めた話と考えられています。
現在ではイチジ、ニジ、サンジ、ヨンジというヴィンスモーク家の名前にも「3」がきれいに組み込まれています。
もし「ナルト」のままだったら、ヴィンスモーク家の設定も現在とは少し違ったものになっていたのかもしれません。
ゾロはバギー海賊団の用心棒になる予定だった
ルフィが最初に仲間へ加えたロロノア・ゾロも、初期設定ではまったく違う立場でした。
単行本に掲載されたバギー海賊団の初期構想には、「豪剣のゾロ」という人物が描かれています。
この時点では、なんとバギー一味の用心棒として考えられていました。
現在ではルフィへの信頼が非常に厚く、麦わらの一味を支える中心人物です。
そのゾロが、最初はバギー側の人物として考えられていたというのですから驚きでしょう。
初期案が採用されていた場合、オレンジの町でルフィとゾロが対立し、そこから仲間になるような展開もあったのかもしれません。
ナミは巨大な斧を使う戦闘型ヒロインだった
現在のナミは航海術や天候の知識を利用して戦うキャラクターです。
しかし初期のデザインでは、自分の体ほどもある巨大な斧を持っていました。
腕や脚にも金属製の装備を思わせるデザインがあり、現在よりかなり戦闘向きの姿です。
もしこの設定がそのまま使われていたら、アーロン編の印象も大きく変わっていたでしょう。
現在のナミは、強い相手を力だけで倒す人物ではありません。
頭の良さや航海士としての知識を武器にすることで、ほかの麦わらの一味とは違う役割を持つキャラクターになりました。
チョッパーはタバコを吸うハードボイルドな姿だった
かわいらしい姿で人気のチョッパーにも、衝撃的な初期設定があります。
『ONE PIECE GREEN SECRET PIECES』に掲載された初期デザインでは、現在より体が大きく、顔つきもかなり野性的でした。
さらにタバコをくわえた姿まで描かれており、現在のマスコット的なチョッパーとは別人のようです。
そしてチョッパーには、もうひとつ面白い制作秘話があります。
アニメ化後、大谷育江さんの声やアニメスタッフが描くチョッパーのかわいらしさに影響を受け、尾田栄一郎氏も原作でよりかわいく描くようになったと語っています。
原作を元にアニメが作られるだけではなく、アニメから原作へ影響が戻っていった珍しいキャラクターなのです。
ジンベエにはアーロン側の敵になる構想があった
現在のジンベエは、仁義を大切にする麦わらの一味の操舵手です。
しかし初期構想では、アーロンを陰で動かした人物として登場し、ルフィたちと対立する案があったとされています。
さらに、アーロンとの戦いの後にルフィたちへ仕返しをするような展開まで考えられていたようです。
一方、連載前の麦わらの一味の構想には、後のジンベエにつながるとみられる「操舵手」のキャラクターも存在しています。
つまりジンベエには、敵として登場する案と、仲間の操舵手につながる案の両方が存在したことになります。
最終的にはアーロンとの過去を背負いながらルフィの仲間になるという、両方を取り込んだような人物になりました。
『ONE PIECE』は約5年で完結する予定だった
100巻を大きく超えた『ONE PIECE』ですが、当初は約5年で完結させる構想でした。
尾田栄一郎氏が最初に考えていたのは、ルフィが海へ出て「四皇」と呼ばれる大海賊たちと戦っていく物語です。
ところが途中で「王下七武海」という存在を思いつきます。
クロコダイルやドフラミンゴ、ハンコック、くまなどを登場させた結果、物語は予定よりはるかに大きくなりました。
尾田栄一郎氏自身も、長期連載になった大きな原因として七武海を挙げています。
『ONE PIECE』は最初から現在の長さになる予定だったわけではないのです。
最悪の世代は登場直前に一気に作られた
シャボンディ諸島で登場したキッド、ロー、ボニー、ホーキンスたち。
後の新世界を大きく動かす重要人物ばかりですが、驚くことに登場する直前まで存在していませんでした。
尾田栄一郎氏によれば、ルーキーたちは登場する回になって一気に作られ、その前の回までは構想ノートにもいなかったそうです。
シャボンディ諸島編をもっと盛り上げるために新しいキャラクターを増やした結果、「最悪の世代」が誕生しました。
現在の物語を見ると何年も前から準備されていた集団のように思えるため、特に驚きの大きい制作秘話です。
ローがここまで重要になるとは尾田栄一郎氏も予想していなかった
最悪の世代の中でも、特に大きく物語へ関わった人物がトラファルガー・ローです。
パンクハザードではルフィと同盟を組み、ドレスローザやワノ国まで長く物語の中心にいました。
しかし尾田栄一郎氏自身も、ローがここまで重要になるとは予想していなかったと明かしています。
当初はキッドの方が重要なキャラクターになると感じていたそうです。
作者自身の予想を超えてキャラクターが成長していくところも、週刊連載ならではでしょう。
「すべて最初から決められていた」というイメージとは正反対のエピソードです。
ビビはもともと普通の敵役だった
アラバスタ編の中心人物ネフェルタリ・ビビも、最初から王女だったわけではありません。
初登場時はバロックワークスのミス・ウェンズデーとして、ルフィたちと敵対していました。
しかも尾田栄一郎氏は、この時点ではそれ以上の設定を考えていなかったと明かしています。
ところが髪を下ろしたミス・ウェンズデーを描いた際、「王女っぽい」と感じました。
そこで、すでに考え始めていたアラバスタ王国の物語と結び付け、現在のビビが生まれたのです。
後に世界の歴史そのものへ関係する重要人物になるビビですが、その出発点は偶然のひらめきでした。
ロブ・ルッチは後から敵役に選ばれた
ウォーターセブン編も、最初からすべての役割が決まっていたわけではありません。
尾田栄一郎氏が先に決めていた大きな出来事は、フランキーが仲間になることや、ゴーイング・メリー号との別れでした。
そこで読者を迷わせるために多くの船大工を登場させます。
そして物語を進めながら「誰を敵にするか」と考え、ハトを肩に乗せていたロブ・ルッチを選んだと明かしています。
CP9最強の人物として登場するルッチを見ると、最初から敵役として作られていたようにしか見えません。
しかし実際には、物語を描きながら役割が決まったキャラクターだったのです。
サンジの眉毛はジェルマの力で向きが変わる
サンジのぐるぐる眉毛は、長い間ただの個性的なデザインやギャグのように扱われていました。
ところがワノ国編で、眉毛そのものが重要な設定だったことが判明します。
クイーンとの戦いでサンジの体にジェルマの「科学の力」が現れた際、いつもとは逆方向に眉毛が巻いていました。
戦いが終わると再び元の向きへ戻っています。
尾田栄一郎氏は単行本105巻のSBSで、この変化が作画ミスではないことを認めました。
イチジ、ニジ、ヨンジたちの眉毛は「66」のような向きになっており、通常のサンジだけが逆方向です。
レイドスーツをきっかけに科学の力が現れたことで、サンジの眉毛も兄弟と同じ方向へ変化したと説明されています。
長年いじられ続けてきた「ぐるぐる眉毛」が、実はサンジの体の状態を表すサインだったのです。
くいなとたしぎは顔だけでなく名前にも共通点がある

ゾロがローグタウンでたしぎを見て驚いた理由は、幼なじみのくいなと非常によく似ていたからです。
二人とも剣士で、女性であることを理由に実力を低く見られることを嫌うなど、共通する部分があります。
さらに名前にも秘密があります。
単行本16巻のSBSで尾田栄一郎氏は、「くいな」と「たしぎ」はどちらも鳥の名前であり、特に「飛べない鳥」であることがポイントだと明かしています。
これほど共通点があるため、昔から「二人は親族なのではないか」「たしぎにも霜月家とのつながりがあるのではないか」と考察されてきました。
しかし現在まで、二人に血縁関係があるとは明かされていません。
同じ顔と似た境遇、そして共通する鳥の名前を尾田栄一郎氏が与えた理由は、今も残されている謎です。
シャンクスが左腕を失った理由は「契約」を切るためだった?

第1話でルフィを助けたシャンクスは、近海の主によって左腕を失いました。
長い間、「なぜあれほど強い人物が東の海の生物を相手に腕まで失ったのか」という疑問が残されてきました。
ところがエルバフ編の第1152話で、失う前のシャンクスの左腕に特徴的な紋章があったことが判明します。
さらに第1167話では、過去のシャンクスが聖地マリージョアへ戻り、「浅海契約」を結んで「神の従刃」になっていたことが明らかになりました。
同じ契約を結んだハラルドにも、腕に同じ系統の印が現れています。
ここから生まれたのが、
「シャンクスは契約とのつながりを断つため、印のある左腕を意図的に失ったのではないか」
という考察です。
もし本当なら、第1話の「新しい時代に懸けてきた」という言葉にも別の意味が生まれます。
ただし、シャンクスが自分から腕を失うことを選んだとは、現在も公式には明言されていません。
確定しているのは、失う前の左腕に契約と関係する印があったというところまでです。
エドワード・ウィーブルは白ひげの不完全なクローンだった?

エドワード・ウィーブルは、自分を白ひげの息子だと名乗っています。
しかし公式プロフィールでも「自称“白ひげJr.”」とされており、本当に親子なのかは確定していません。
ここで重要になるのが、母親のミス・バッキンです。
エッグヘッド編では、若い頃のミス・バッキンガム・ステューシーを元にしたクローンが、MADSによる「クローン実験成功体第1号」だったことが判明しました。
さらにバッキンは、ウィーブルと白ひげの血縁を疑うマルコに対し、Dr.ベガパンクなら証明できると話しています。
このため、
「ウィーブルは普通の息子ではなく、白ひげの血統因子から作られたクローンではないか」
という説が有力視されています。
白ひげに似たヒゲや圧倒的な力を持ちながら、姿は成功例のステューシーほど元の人物に似ていません。
そこで「クローン技術が完成する前に作られた試作品だったのではないか」という考察まであります。
もちろん、こちらも現在のところ公式には答えが出ていません。
バッキンが本当に白ひげとの間にウィーブルを授かったのか、それとも「白ひげの血を受け継いでいる」という言葉に別の意味があるのか、今後の注目ポイントです。
レッドラインがなくなるとオールブルーが誕生する?
『ONE PIECE』の最終回に関する考察の中でも、特に有名なのが「レッドライン消滅説」です。
現在の世界は、巨大な大陸レッドラインと偉大なる航路によって海が大きく分けられています。
しかし最終的にレッドラインの一部がなくなれば、東西南北の海がつながる可能性があります。
そこで注目されるのが、サンジが探している「オールブルー」です。
オールブルーは、東西南北すべての海の魚が集まる伝説の海とされています。
世界の海がひとつにつながるなら、オールブルーが新しく誕生する条件として非常に分かりやすいでしょう。
さらにレッドラインの下には魚人島があります。
マダム・シャーリーは、ルフィによって魚人島が大きな危機を迎える未来を予言しました。
一方、魚人族には地上の太陽の下で暮らしたいという長年の願いがあります。
そのため、
「ルフィがレッドラインを壊す」
「その影響で魚人島が現在の場所からなくなる」
「魚人族が地上へ移る」
「分断されていた海がつながりオールブルーが生まれる」
という流れが考察されています。
さらに、世界そのものが文字通り「ひとつなぎ」になることから、作品タイトルや「ひとつなぎの大秘宝」と関係しているのではないかという説もあります。
非常によくできた考察ですが、レッドラインがなくなることも、そこからオールブルーが生まれることも、現在は公式に確定していません。
物語の最後に世界そのものの形が変わるのか、注目したい大きな謎です。
まとめ
『ONE PIECE』には、連載開始前から用意されていた長期的な設定が数多くあります。
一方で、最悪の世代やビビ、ロブ・ルッチのように、連載を続ける中で生まれたアイデアが大きな物語へ成長した例も珍しくありません。
ゾロがバギー側の人物だったり、ナミが巨大な斧を持っていたり、チョッパーが現在とは正反対の姿だったりと、麦わらの一味にも多くの初期案が存在しました。
こうした制作秘話を見ると、『ONE PIECE』の魅力は「すべてを最初から計算していたこと」だけではないと分かります。
後から生まれた設定を、それまで描いてきた物語とうまくつなぎ合わせる尾田栄一郎氏の構成力も、大きな魅力なのでしょう。
さらに物語が最終章へ進んだことで、シャンクスの左腕のように第1話から見てきた場面へ新しい意味が加わり始めています。
ウィーブルの正体やレッドライン、オールブルーなど、まだ答えが示されていない謎も残っています。
完結した時に第1話から読み直せば、今まで何気なく見ていた場面がまったく違って見えるのかもしれません。
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