『新世紀エヴァンゲリオン』には、テレビアニメや旧劇場版を何度見ても、すべては理解できない設定が数多く存在します。
「そもそも使徒はどこから来たのか?」
「アダムとリリスとは何なのか?」
「なぜ人類と使徒は争わなければならないのか?」
こうした疑問については、本編終了後に発売されたゲーム『新世紀エヴァンゲリオン2』などで、かなり詳しい情報が明かされました。
同作は庵野秀明氏が監修しており、制作時にはゲームスタッフと庵野氏がエヴァの世界観について話し合っています。
ゲーム内の「機密情報」は、本編で明かされなかった謎まで扱う資料として作られました。
ただし、ゲーム内で起こるすべての物語がテレビ版の出来事そのものというわけではありません。
そこで今回は、本編や旧劇場版とも矛盾しにくく、世界観を理解するうえで特に重要な裏設定を中心に紹介します。
すべての始まりには「第一始祖民族」がいた

エヴァの世界には、人類よりはるか昔に高度な文明を築いていた存在がいたとされています。
それが「第一始祖民族」です。
『新世紀エヴァンゲリオン2』の機密情報によれば、第一始祖民族は人型の知的生命体で、銀河系の各地へ「生命の種」を送り出していました。
なぜそのようなことをしたのかは、明かされていません。
しかし、アダムやリリスを作り出し、宇宙へ送り出せるほどの技術を持っていたことになります。
使徒や人類から見れば、ほとんど神のような存在だったというわけです。
テレビ版だけを見ていると、アダムやリリスこそ世界の始まりのように感じます。
実際には、そのさらに上に「アダムとリリスを送り出した存在」がいたという、とても大きな裏設定が存在していました。
アダムとリリスは宇宙から送られた「生命の種」だった
第一始祖民族が宇宙へ送り出したものが「生命の種」です。
地球へやって来た生命の種が、アダムとリリスでした。
アダムは「白き月」と呼ばれる巨大な入れ物に収められています。
一方、リリスを運んできたものが「黒き月」です。
本来であれば、一つの星に到着する生命の種は一つだけだったとされています。
ところが地球には、アダムとリリスの両方が到着してしまいました。
機密情報でも、二つの生命の種が同じ星へ来たことは偶然だったと説明されています。
つまり、エヴァ世界で起きるほとんどすべての問題は、この「本来あり得ない事故」から始まったと言えるのです。
ファーストインパクトはリリスが地球へ来たときに起きた
ファーストインパクトについては、本編でほとんど説明されません。
名前だけを見ると、セカンドインパクト以前にも似たような大災害があったように思えます。
機密情報では、その正体が明かされています。
先に地球へ到着していたのは、アダムを乗せた白き月でした。
その後、本来は別の星へ行くはずだったリリス側の黒き月が地球へやって来ます。
この巨大な入れ物と地球との衝突が、ファーストインパクトだったとされています。
そして黒き月の中にいたリリスが地球へ定着し、そこから現在の地球生物へつながる生命が広がっていきました。
つまりファーストインパクトとは、単なる昔の大災害ではありません。
「人類の始祖であるリリスが地球へやって来た出来事」でもあったのです。
使徒と人類はまったく無関係な生命ではなかった
エヴァ最大の裏設定の一つが、使徒と人類の関係です。
本編だけを見ると、人類を襲ってくる使徒は、地球外からやって来た謎の怪物にも見えます。
しかし実際には、使徒はアダムから生まれた生命です。
それに対して、人類を含む地球の生命はリリスから生まれた系統とされています。
つまり、
使徒=アダム系生命
人類=リリス系生命
という関係です。
どちらも第一始祖民族が送り出した「生命の種」を起源としているため、完全に無関係な存在ではありません。
むしろ、別々の生命の種から生まれた親戚のような存在と考えたほうがわかりやすいでしょう。
本来の地球の生命になるはずだったのは使徒側だった
さらに驚くべきことに、本来地球で繁栄する予定だったのはアダム系の生命だったとされています。
先に地球へ到着していたのがアダムだったためです。
ところが後からリリスが到着し、結果としてリリス系の生命が地球上で繁栄しました。
その最終的な存在が「リリン」、つまり人類です。
旧テレビ版でもゼーレは、人類を黒き月から生まれた存在、使徒を白き月側の存在として区別しています。
『新世紀エヴァンゲリオン2』では、この関係がさらに詳しく説明されました。
つまり使徒から見れば、人類こそ本来自分たちが生きるはずだった地球を支配している存在とも考えられます。
「人類が正義で、使徒が侵略者」という単純な構図ではなかったのです。
使徒が人類と争う理由は「二つの生命の種は共存できない」から
では、なぜ使徒は人類と争うのでしょうか。
機密情報では、非常に重要なルールが示されています。
一つの星に二つの生命の種は必要なく、どちらか一方が残ることになるというものです。
地球にはアダム系生命とリリス系生命が同時に存在してしまったため、両者の生存競争が始まりました。
ただし、すべての使徒がまったく同じ目的で行動していたわけではありません。
リリスへ到達しようとするものもいれば、アダムを求めるもの、明確な目的が見えないものもいたとされています。
そのため「使徒は全員、人類を滅ぼすためにネルフへ来ていた」とだけ考えると、少し違います。
使徒それぞれが、自分たちなりの生存方法を選んでいたのです。
使徒は「生命の実」、人類は「知恵の実」を持っている
使徒と人類には、もう一つ大きな違いがあります。
使徒側が持っているのが「生命の実」です。
一方、人類は「知恵の実」を持つ存在として描かれています。
これは単なる聖書風の言葉ではありません。
エヴァの世界における、二つの生命が進んだ方向の違いを表しています。
使徒は圧倒的な生命力や再生能力、A.T.フィールドなどを持っています。
対する人類は単体では弱いものの、知識を積み重ね、科学や文明を発達させました。
その結果、人類は自分たちにはない力を科学で再現し、エヴァンゲリオンまで作り出しています。
使徒と人類は、同じような始まりからまったく違う進化をした生命とも考えられるのです。
S²機関の正体は「生命の実」だった
使徒が持つ謎の永久動力「S²機関」にも、重要な裏設定があります。
『新世紀エヴァンゲリオン2』では、S²機関そのものが「生命の実」だと説明されています。
使徒が外部からエネルギーを受け取らなくても活動できるのは、このS²機関を持っているためです。
一方、通常のエヴァにはS²機関がありません。
そのため電源ケーブルが必要で、内部電源だけでは活動時間にも限界があります。
しかし初号機は使徒のS²機関を取り込み、自らのものにしました。
これは単に「電池切れしなくなった」という話ではありません。
初号機が「生命の実」を手に入れ、アダムや使徒に近い存在へ変化したことを意味していたのです。
ロンギヌスの槍は武器ではなく「安全装置」だった
ロンギヌスの槍は、エヴァを象徴するアイテムの一つです。
巨大な槍なので、使徒を倒すための特別な武器のようにも見えます。
ところが機密情報では、本来の役割はまったく違うとされています。
ロンギヌスの槍は、第一始祖民族が生命の種と一緒に送り出した「保安装置」でした。
生命の種が予定外の行動をした場合、その活動を止めるために用意されたものです。
しかも槍そのものにも意思があり、自ら動くことができる一種の生命体と説明されています。
つまりロンギヌスの槍は、人類が偶然作った超兵器ではありません。
アダムやリリスよりはるか昔に、第一始祖民族が用意していた制御装置だったのです。
リリスにも本来は専用のロンギヌスの槍があった
さらに、ロンギヌスの槍は一つだけ存在していたわけではありません。
生命の種には、それぞれ保安装置となる槍が用意されていたとされています。
南極で発見された槍は、アダムとセットになっていたものです。
では、リリス用の槍はどこへ行ったのでしょうか。
機密情報では、ファーストインパクトの衝撃によってリリスから離れ、失われた可能性が示されています。
もしリリス側の槍が正常に働いていれば、地球でリリス系生命が繁栄すること自体が起こらなかった可能性もあります。
人類が存在していることそのものが、偶然がいくつも重なった結果なのです。
裏死海文書は未来を予言した魔法の書ではなかった
ゼーレが行動の基準としている「裏死海文書」も、本編では非常に謎めいた存在です。
使徒の出現まで書かれているため、未来を予言した超常的な文書のように見えます。
しかし機密情報では、その正体について別の説明がされています。
裏死海文書の元になったものは、第一始祖民族による「生命の種」やロンギヌスの槍の運用方法を記した資料だったというのです。
言ってしまえば、生命の種を扱うためのマニュアルや計画書に近い存在でした。
その情報が後世の宗教集団によって教義と結び付けられながら写され、ゼーレへ伝わったとされています。
過去に作られた計画通りに使徒が現れるため、未来予知のように見えていたわけです。
「未来が見える本」ではなく、「これから起こることの予定表を持っていた」と考えると、かなり理解しやすくなります。
セカンドインパクトの原因は隕石ではなく人類だった
一般社会では、セカンドインパクトは南極への巨大隕石衝突によって起きたと説明されています。
しかし、これは情報操作によって作られた話でした。
実際には南極で発見されたアダムへ人類が接触したことが原因です。
葛城調査隊は白き月とアダム、さらにロンギヌスの槍を発見しました。
そして人類は、眠っていたアダムを目覚めさせてしまいます。
その後、ロンギヌスの槍を使ってアダムを再び封じようとしましたが、計画通りには進みませんでした。
機密情報では、最終的にS²機関へ人為的な処置が行われ、アダムが小さな状態へ戻ることで、地球全体がアダム系生命へ置き換わる最悪の事態だけは避けられたとされています。
つまりセカンドインパクトは自然災害ではありません。
人類が「生命の種」に手を出したことで発生した出来事だったのです。
綾波レイに宿っていたのはリリスの魂だった
綾波レイの正体は、本編でもかなりぼかされています。
地下には多数のレイの肉体が存在しており、レイ本人も自分が代わりのきく存在であることを理解しています。
しかし、肉体を何体作っても「綾波レイ」が同時に何人も存在するわけではありません。
その理由が魂です。
機密情報では、レイの肉体にはリリスの魂が宿っていたと説明されています。
肉体は複製できても、魂そのものを複製することはできません。
そのため一人のレイがいなくなった後、魂を別の肉体へ移すことで次のレイが存在できたと考えられます。
旧劇場版でレイがリリスへ戻ったとき、巨大なリリスがレイの姿へ変化するのも、この設定を知ると意味が大きく変わります。
渚カヲルに宿っていたのはアダムの魂だった
綾波レイがリリス側の存在なら、その対になる人物が渚カヲルです。
アダムはセカンドインパクトによって肉体と魂が分かれたとされています。
肉体は後に小さな状態へ復元され、加持リョウジから碇ゲンドウへ渡されました。
一方で魂はゼーレによって回収され、渚カヲルの肉体へ宿されたと機密情報では説明されています。
つまり、
綾波レイ=リリスの魂を宿した存在
渚カヲル=アダムの魂を宿した存在
という対になっています。
二人が普通の人間とは明らかに違う雰囲気を持っていることにも、設定上の理由があったのです。
エヴァを動かすにはパイロットの母親の魂が必要だった
エヴァは巨大ロボットではなく、生きた肉体に装甲を付けた存在です。
しかし、肉体だけ作っても正常には動きません。
エヴァのコアには、パイロットと深く結び付いた魂が必要だったとされています。
『新世紀エヴァンゲリオン2』の機密情報では、基本的にパイロットの母親の魂がコアへ入っていると説明されました。
初号機には碇シンジの母・碇ユイの魂が存在します。
弐号機についても、惣流・アスカ・ラングレーの母親の魂の一部が残されていたとされています。
特に弐号機に残ったのは、娘を愛する母親としての部分だったという設定があります。
旧劇場版でアスカが弐号機の中に母親の存在を感じた瞬間、突然高いシンクロ率を取り戻した理由も、この設定を知ると理解しやすくなります。
初号機だけは他のエヴァと出自が違う
エヴァは基本的にアダムを元に作られた存在です。
しかし、初号機には大きな例外があります。
旧劇場版では、初号機が「リリスの分身」と呼ばれています。
関連資料でも、初号機だけはリリスを元に作られた存在と説明されています。
つまり、
零号機や弐号機など=基本的にアダム系
初号機=リリス系
という大きな違いがあるのです。
さらに初号機の中には碇ユイの魂が存在し、後にはS²機関まで手に入れます。
リリス系の肉体に人間の魂が入り、さらに使徒側の「生命の実」まで獲得したことになります。
ゼーレとゲンドウが初号機を特別視していた理由は、単にシンジの専用機だったからではありません。
初号機そのものが、人間を超えた存在になる条件を次々と満たしていたのです。
ネルフ本部のジオフロントは「黒き月」の内部だった
第3新東京市の地下には、ネルフ本部を収める巨大空間「ジオフロント」が存在します。
人工的に掘られた地下基地のように見えますが、実はネルフが作った空洞ではありません。
その正体は、リリスを地球へ運んできた「黒き月」の内部です。
同じように南極にも巨大な地下空間があり、こちらはアダムを運んできた「白き月」とされています。
つまりネルフは偶然あの場所に基地を建設したのではありません。
人類の始祖であるリリスを運んできた巨大構造物の中に、本部そのものを置いていたのです。
旧劇場版で巨大な黒い球体が地中から姿を現す場面は、この黒き月の全体像が現れたものと考えられます。
ゼーレとゲンドウは同じ人類補完計画を目指していたわけではない
ゼーレと碇ゲンドウは、ともに「人類補完計画」を進めています。
そのため、最終的な目的まで同じだと思われがちです。
しかし両者の望みは大きく異なっていました。
『新世紀エヴァンゲリオン2』では、ゼーレはエヴァやS²機関、魂、ロンギヌスの槍などを利用して、人間を神に近い存在へ進めようとしていたことが説明されています。
一方、ゲンドウにとって補完計画は目的そのものではありません。
ゲンドウが本当に望んでいたのは、初号機の中にいる碇ユイとの再会でした。
そのためゲンドウはゼーレへ協力するふりをしながら、裏では自分の望む形で補完を起こそうとしています。
旧劇場版の最後でゼーレとネルフが敵対するのも、単なる仲間割れではありません。
同じ仕組みを利用しながら、まったく違う結末を望んでいたのです。
『新世紀エヴァンゲリオン2』の機密情報はどこまで公式なのか
ここまで紹介した内容の多くは、庵野秀明氏が監修したゲーム『新世紀エヴァンゲリオン2』の「機密情報」によって詳しく説明されています。
そのため「全部公式設定なのか?」と疑問に思う人もいるでしょう。
『新世紀エヴァンゲリオン2』は、庵野氏と開発スタッフがエヴァの世界や制作当時の考えについて話し合い、それをゲーム世界へ落とし込む形で制作されました。
また攻略資料でも、機密情報には本編で明かされなかった謎に関する情報が含まれるとされています。
その意味では、旧エヴァの世界を理解するための非常に重要な補助資料です。
ただし庵野氏自身は、このゲームについて、プレイヤー自身がそれぞれの「エヴァ2」を作る作品でもあると説明しています。
そのため、ゲーム内で発生するすべての出来事をテレビ版とまったく同じ歴史として扱うのは注意が必要です。
特に「機密情報として説明された世界設定」と「ゲームプレイによって変化する物語」は分けて考えたほうがよいでしょう。
新世紀エヴァンゲリオンの裏設定まとめ

『新世紀エヴァンゲリオン』の物語は、単なる「人類対使徒」の戦いではありません。
はるか昔に第一始祖民族が生命の種を宇宙へ送り、そのうちアダムとリリスが偶然同じ地球へ到着したことから、すべてが始まっています。
アダムから生まれたのが使徒。
リリスから生まれたのが人類です。
本来は一つの星に一つしか存在しない生命の系統が二つ存在してしまったため、その生存をめぐる争いが発生しました。
さらに使徒は「生命の実」を、人類は「知恵の実」を持つという違いがあります。
人類は自分たちにない力を科学によって補い、アダムやリリスを利用してエヴァンゲリオンまで作り出しました。
ロンギヌスの槍、裏死海文書、セカンドインパクト、人類補完計画も、この大きな設定を知ると別々の謎ではなく、一つの流れとしてつながって見えてきます。
特に重要なのは、「人類だけが正しい生命だったわけではない」という点でしょう。
使徒にも地球で生きる理由があり、人類もまた偶然によって地球の支配者になった生命にすぎません。
この裏設定を知ったあとでテレビ版や旧劇場版を見直すと、カヲルやゼーレの言葉、そして人類補完計画の意味まで、以前とはかなり違って聞こえてくるはずです。






















