【からくりサーカス】知られざる裏設定12選!伏線やオートマータの元ネタも

『からくりサーカス』は、藤田和日郎が描いた長編漫画です。

才賀勝、加藤鳴海、しろがねという3人を中心に、人形、サーカス、錬金術、200年以上にわたる因縁が複雑に絡み合っていきます。

物語が進むほど過去の出来事が現在へつながり、序盤の何気ない描写まで重要な意味を持っていたことが分かります。

そのため、

「最初から全部計算していたのでは?」

と思う人も多いでしょう。

ところが藤田さん本人の話を調べると、実際の制作方法はかなり違っていました。

作品の原点となった映画や小説。

実在した自動人形(オートマータ)。

人形遣いの動きのモデル。

連載途中で考えられた巨大な伏線。

さらに「最後のカーテンコールには別の意味があるのでは?」という有名な考察まで存在します。

今回は『からくりサーカス』の公式情報から分かる裏設定や制作秘話と、ファンの間で語られている考察を紹介します。

『からくりサーカス』の原点には『サウンド・オブ・ミュージック』があった

加藤鳴海としろがねエレオノール

『からくりサーカス』の原点と聞くと、人形劇や錬金術を扱った作品を想像するかもしれません。

ところが藤田和日郎さんが影響を受けた作品のひとつが、映画『サウンド・オブ・ミュージック』でした。

藤田さんは『うしおととら』を描き終えた後、次の作品では年上の男女の恋愛をしっかり描きたいと考えていたそうです。

さらに『サウンド・オブ・ミュージック』に登場する、

裕福な家庭。

そこへ外部からやってくる人物。

その人物によって子どもたちの生活が変わっていく。

という物語の構造にも魅力を感じていました。

そこへ藤田さん自身が以前描いた『からくりの君』の、

「人間ほどの大きさを持つ人形で戦う」

というアイデアを組み合わせます。

こうして後に『からくりサーカス』へつながる基本構想が生まれました。

オートマータと錬金術が入り乱れる壮大な物語ですが、出発点のひとつには家族や恋愛を描いたミュージカル映画があったのです。

最初は鳴海としろがねの「大人の恋愛」を描こうとしていた

物語の中心には、少年・才賀勝の成長があります。

そのため勝が最初から唯一の主人公だったようにも見えます。

しかし藤田さんが新連載を考えたとき、強く意識していたテーマのひとつが、

「大人の男女の恋愛」

でした。

『うしおととら』では十分に描けなかった恋愛を、次の作品では描いてみたい。

そこから生まれていったのが、

加藤鳴海。

しろがね。

という二人の関係です。

しかし実際に物語を作り始めると、勝の成長も非常に大きな柱になりました。

その結果、

勝。

鳴海。

しろがね。

という3人それぞれの人生を描く作品へ発展していきます。

後にテレビアニメ版を再構成するときも、藤田さんはこの3人の成長や変化、そして最後にどのような選択をするのかを最重要部分として考えていました。

ミヒャエル・エンデの『サーカス物語』も作品誕生に影響した

『モモ』『はてしない物語』で知られるミヒャエル・エンデ。

藤田さんは、エンデの作品『サーカス物語』も好きだったことを明かしています。

そしてこの作品を読んだことで、

「こういうサーカスがいい」

というイメージを持つようになりました。

さらにサーカス編に登場するヴィルマを出したいと思ったきっかけのひとつにもなったそうです。

ただし『からくりサーカス』と『サーカス物語』の物語そのものが似ているわけではありません。

藤田さん自身も内容はまったく違うと説明しています。

影響を受けたのは、

旅をするサーカス。

個性的な団員。

社会の端で生きる人々。

サーカスという場所そのものが持つ不思議な魅力。

といった部分でしょう。

『からくりサーカス』のサーカス編がどこか温かく、同時に少し寂しい雰囲気を持っている背景には、藤田さんが愛した物語の影響もあったのです。

不気味なオートマータにはホフマンの『砂男』が影響している

『からくりサーカス』では、オートマータが非常に重要な存在です。

見た目は人間に近い。

言葉も話す。

考えているようにも見える。

しかし人間の感情を完全には理解できない。

そんな不気味さがあります。

この部分に影響を与えた作品のひとつが、E.T.A.ホフマンの『砂男』です。

藤田さん本人も、『砂男』が『からくりサーカス』を作るうえでの「栄養」になった作品だと紹介しています。

『砂男』には、人間そっくりの自動人形が登場します。

そのため、

人間とは何なのか。

感情とは何なのか。

人形が人間らしく見えるとはどういうことなのか。

というテーマにつながります。

『からくりサーカス』でも、自動人形(オートマータ)たちは物語が進むにつれて少しずつ変化していきます。

最初は命令された役割だけを実行していた存在が、人間と接することで笑顔や悲しみを理解していく。

この作品ならではのテーマには、古い幻想文学の影響も入っていたのです。

オートマータの設定には実在した「ヴォーカンソンのアヒル」が関係している

『からくりサーカス』には非常に多くのオートマータが登場します。

このアイデアを作るため、藤田さんは世界中の操り人形やオートマータについて調べました。

そこでたどり着いた人物のひとりが、18世紀フランスの発明家ジャック・ド・ヴォーカンソンです。

ヴォーカンソンは、人間や動物の動きを機械で再現するオートマータを作ったことで知られています。

特に有名なのが、

「ヴォーカンソンのアヒル」

と呼ばれる機械仕掛けのアヒルです。

こうしたオートマータの歴史を調べていくうちに、藤田さんの興味はさらに錬金術へ広がっていきます。

人間のように動く人形。

人間そのものを作ろうとする考え。

生命を人工的に再現しようとする錬金術。

これらが少しずつ結びつき、

オートマータと錬金術

という『からくりサーカス』を支える巨大な設定へ成長しました。

最初からすべてを思いついたのではなく、調査を続ける中で世界観が広がっていったのです。

人形を操る美しい指の動きはピアニストを参考にしていた

『からくりサーカス』では、人形遣いの手がかなり細かく描かれています。

指を大きく広げたり。

細い糸を正確に操ったり。

まるで演奏しているように手を動かしたり。

これにも実際の参考資料がありました。

藤田さんは人間の美しい動きを描くため、

バレエダンサー。

ファッションモデル。

ピアニスト。

などの姿を研究したそうです。

特に人形を操る指の動きでは、ピアニストが鍵盤を弾く手を参考にしていました。

『からくりサーカス』における人形遣いは、単に武器を操作しているわけではありません。

あるるかんを操るしろがねの姿などは、戦いでありながら舞台で演技をしているようにも見えます。

タイトルに「サーカス」という言葉が入っているように、戦う動作そのものにも芸術的な美しさが意識されていたのです。

大量の伏線は最初から全部決めていたわけではない

『からくりサーカス』最大の制作秘話といえるかもしれません。

物語を最後まで読むと、

「これを本当に最初から全部考えていたのか?」

と思うほど多くの設定がつながります。

フェイスレス。

才賀貞義。

ディーン・メーストル。

白金。

フランシーヌ。

エレオノール。

しろがね。

200年以上にわたる出来事が、最終的には一本の物語になります。

しかし藤田さんによると、

先の展開はほとんど決めていなかった

というのが実際のところでした。

『うしおととら』で数多くの伏線をまとめることができた経験から、

「自分ならどれだけ広げても最後にはまとめられる」

という自信を持っていたそうです。

その結果、『からくりサーカス』では答えをまだ考えていない伏線まで次々に置いていきました。

そして離れた場所にある設定同士をつなぐため、新しい物語を考え続けます。

藤田さんは、この作業を、

離れた歯車の間へ新しい歯車を入れていく

ようなものだったと振り返っています。

その歯車をつなぐために約9年間を使ったのです。

勝としろがねが出会った理由さえ後から考えられた

どれくらい先を決めずに描いていたのか。

藤田さん自身が、その代表例を明かしています。

それが、

「なぜ勝としろがねが出会ったのか」

という問題です。

これは作品全体の根幹に関わる謎です。

普通なら連載開始前に答えまで決めているように思えます。

しかし実際には、連載を続けながら藤田さん自身が、

「なぜこの二人が出会ったのだろう?」

と答えを考えることになりました。

そして過去の設定を組み合わせながら、

「これしかない」

という答えへたどり着きます。

現在の物語だけを見ると、最初からその結末へ向かって作られたように感じます。

しかし実際には、

先に謎を作る。

後から答えを考える。

過去の設定と矛盾しないようにつなぐ。

という方法で巨大な物語を完成させていました。

『からくりサーカス』の伏線回収がすごい理由は、最初からすべてを知っていたことではありません。

途中から考えた答えを、最初から決まっていたように見せるところにあるのです。

「最古の四人」の名前はイタリアの伝統喜劇から取られている

自動人形(オートマータ)の中でも特に重要なのが「最古の四人」です。

アルレッキーノ。

パンタローネ。

コロンビーヌ。

ドットーレ。

実はこれらの名前は、ヨーロッパの演劇と深く関係しています。

元になっているのが、16世紀ごろからイタリアで発展した即興喜劇、

「コメディア・デラルテ」

です。

この演劇では、決まった性格や役割を持つ人物が登場します。

アルレッキーノは道化的な人物。

パンタローネは年配の商人。

コロンビーナは女性の使用人。

ドットーレは学者や医師のような人物。

という具合です。

『からくりサーカス』の最古の四人も、それぞれ名前を受け継いでいます。

ここには作品のテーマと重なる面白い部分があります。

コメディア・デラルテの人物たちは、

「決められた役」

を演じます。

オートマータたちも最初は、自分自身の希望ではなく与えられた役割だけを実行しています。

しかし人間たちと接するうちに、自分自身の感情や願いを持つようになっていきます。

名前の元ネタを知ると、最古の四人の物語がさらに意味深に見えてきます。

「あるるかん」と「ハーレクイン」は同じ人物につながる

しろがねが操る代表的な懸糸傀儡が、

「あるるかん」

です。

そして物語終盤には、

「ハーレクイン」

というオートマータも登場します。

まったく違う名前に見えますが、実は言葉の起源をたどると同じ人物へつながります。

あるるかんの元になった「Arlequin」はフランス語。

「Harlequin」は英語です。

どちらもコメディア・デラルテに登場するアルレッキーノを指す言葉です。

つまり、

あるるかん。

ハーレクイン。

は、言語が違うだけで同じ名前につながっています。

このためファンの間では、

「あるるかんから始まり、ハーレクインへ行き着く構造には意味があるのでは?」

という考察があります。

作品の始まりと終盤をつなぐ言葉遊びとして非常に美しい説です。

ただし藤田さん本人が、

「この二つを対応させることで伏線にした」

と公式に説明した資料は確認されていません。

そのため、公式設定としてではなくファン考察として楽しむのがよいでしょう。

アニメ版の大幅な再構成には藤田和日郎本人が参加している

原作『からくりサーカス』は非常に長い作品です。

一方、テレビアニメ版は全36話。

そのため原作を知っている人から、

「どうしてこのエピソードがないの?」

と思われることも少なくありません。

しかし単純にアニメ制作側が好きな部分を削ったわけではありません。

藤田和日郎さん自身がシリーズ構成へ参加しています。

原作を36話にまとめるため、藤田さんがまず行ったのが、

「絶対に残さなければならない場面を決めること」

でした。

そして、それ以外の部分については原作者自身が削る判断をしています。

藤田さんがアニメで最も重視したのは、

勝の成長。

鳴海の変化。

しろがねの変化。

過去に隠された秘密。

そして3人が最後に何を選ぶのか。

という物語の中心部分でした。

そのためアニメ版は、

「原作をそのまま短くした作品」

というより、

「藤田さん自身が36話用に物語の中心だけを選び直した作品」

と考えるほうが近いでしょう。

アニメ版には「絶対に削らない12の場面」が決められていた

テレビアニメ版を作る際、藤田さんは脚本を担当する井上敏樹さんへ、

「絶対に落としてはいけない12か所」

を伝えていたそうです。

つまり原作の数ある名場面の中から、

「ここがなくなったら『からくりサーカス』ではなくなる」

という場面を選んでいたのです。

藤田さんが例として挙げているのが、

フランシーヌ人形が赤ちゃんを抱く場面。

ルシールとの別れ。

などです。

一方で、人気のあるエピソードでも本筋から離れる部分については削る決断をしました。

当然、原作ファンからすれば見たかった場面もあります。

しかし36話という限られた時間の中で、

勝。

鳴海。

しろがね。

この3人の物語を最後まで描き切ることを最優先した結果だったのです。

【考察】最後のカーテンコールは「全部お芝居だった」という意味?

『からくりサーカス』には非常に印象的な終幕があります。

物語が終わった後、それまで登場した多くの人物が舞台へ再び姿を見せる、

「カーテンコール」

です。

本編ではもう会えない人物まで一緒に登場します。

そのためファンの間では、

「今までの物語は全部舞台劇だったのでは?」

「登場人物は全員役者だったのでは?」

という説が語られることがあります。

確かに演出だけを見ると、巨大な劇中劇だったようにも感じられます。

しかし、

「物語の出来事は全部お芝居だった」

という公式設定は確認されていません。

むしろ作品全体が、

サーカス。

舞台。

人形劇。

道化師。

演者。

というモチーフで作られていることを考えると、最後のカーテンコールは物語そのものを否定する演出ではないでしょう。

長い公演が終わった後、

「出演者全員でもう一度観客へあいさつする」

という藤田さんから読者への最後のサービスと考えるほうが自然です。

物語の中ではもう会えない人物たちまで最後に笑顔で並ぶからこそ、長い物語を読み終えた読者に強烈な余韻を残します。

まとめ:『からくりサーカス』の伏線は「最初から完璧」だったわけではない

勝とオートマータ

『からくりサーカス』を最後まで読むと、あまりにも多くの設定がつながるため、

「藤田和日郎さんは最初から全部計算していた」

と思ってしまいます。

しかし実際には、その逆でした。

勝としろがねが出会った理由のような重要な謎まで、連載途中から答えを考えています。

それでも過去に描いた設定を捨てるのではなく、

「どうすれば、この歯車とこの歯車をつなげられるのか」

を考え続けました。

その結果、

才賀勝。

加藤鳴海。

しろがね。

フランシーヌ。

白金。

フェイスレス。

そして200年以上にわたる物語が、最後には一本につながっています。

さらに作品の背景には、

『サウンド・オブ・ミュージック』。

ミヒャエル・エンデ。

ホフマンの『砂男』。

実在した自動人形。

コメディア・デラルテ。

といった、さまざまな作品や文化が取り込まれていました。

『からくりサーカス』のすごさは、

「すべてを最初から考えていたこと」

ではありません。

広げた物語を途中で投げ出さず、一つひとつ新しい歯車を作りながら、最後には巨大なひとつの機械のように動かしたところにあるのではないでしょうか。

この記事を書いた人

クロックフォードクロックフォード

探偵のエドガー・クロックフォードです。
裏設定ファイルでは、世の中の様々な物語の裏設定や都市伝説をまとめています。
公式の発表を中心に、噂の真相や有力な考察なども紹介しますので、どうぞお楽しみください。

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