『犬夜叉』には、原作やアニメを最後まで見ても分からない設定や制作秘話が数多く残されています。
特に気になる人が多いのが、犬夜叉や殺生丸はいったい何歳なのかという問題でしょう。
さらに原作完結後には、殺生丸とりんのその後を思わせるドラマCDが登場し、続編『半妖の夜叉姫』では二人の関係について大きな答えが示されました。
そのほかにも、奈落が連載開始時には存在していなかったことや、天生牙の能力が後から決められたことなど、完成した作品からは想像しにくい裏話があります。
今回は高橋留美子氏のコメントや公式ガイド、アニメ公式資料などをもとに、『犬夜叉』の知られざる裏設定を紹介します。
犬夜叉は約200歳?公式の「15歳」は人間換算だった

犬夜叉の年齢について調べると、「約200歳」という数字を見かけることがあります。
一方、公式ガイド『犬夜叉奥義皆伝』では犬夜叉の年齢は「15歳」とされています。
実はこの15歳という数字は、妖怪として生きた年月ではなく、外見や精神面を人間に置き換えた年齢です。
同じ公式ガイドでは、殺生丸は人間換算19歳、鋼牙は15歳、七宝は7歳とされています。
人間であるかごめは15歳、珊瑚は16歳、弥勒は18歳、桔梗は生前18歳という設定です。
つまり「犬夜叉は公式設定で200歳」と断定するのは正確ではありません。
約200歳という説は劇場版などの年代から計算された数字として広まりましたが、高橋氏が犬夜叉の実年齢を「200歳」と明言した設定ではないのです。
殺生丸についても「200歳以上」や「300~500歳」などさまざまな説がありますが、公式ガイドでは人間換算19歳となっています。
妖怪が実際に何年間生きてきたのかは、あえて細かく決められていない部分が多いようです。
殺生丸とりんには「プロポーズ」と呼ばれる公式ドラマCDがある

原作最終回のその後を描いた公式ドラマCD『犬夜叉第559話「あさって」』では、殺生丸からりんへの「プロポーズ」とされる場面が描かれています。
このドラマCDは『犬夜叉 ワイド版』全巻購入特典として制作されたもので、高橋留美子氏が監修した公式の後日談です。
殺生丸はりんに対し、人里での暮らしに慣れたかを気にかけながら、これからどのように生きるのかを急いで決める必要はないと伝えています。
さらに、困った時やつらい時には自分の名を呼べば、どれほど遠くにいても必ず駆けつけるという言葉も贈りました。
直接「結婚してほしい」と口にするわけではありません。
しかし、りんが自分の人生を選ぶまで待ち続けること、そして何があっても支えるという殺生丸なりの覚悟が示されているため、ファンの間では「殺生丸からりんへの公式プロポーズ」として広く知られています。
その後の公式続編『半妖の夜叉姫』では、りんが殺生丸との間にとわとせつなをもうけたことが明らかになりました。
ドラマCDで語られた「待つ」という言葉は、のちに二人が夫婦になる未来へつながる重要なエピソードだったといえるでしょう。
なお、『半妖の夜叉姫』公式サイトでもりんは「とわとせつなの母」と明記されています。
父が鉄砕牙を犬夜叉、天生牙を殺生丸に残した理由
犬夜叉と殺生丸の父が残した二本の刀にも、大きな意味があります。
強力な鉄砕牙を半妖の犬夜叉が受け継ぎ、完全な妖怪である殺生丸には人を救う天生牙が残されました。
一見すると、兄の殺生丸だけが損をしているようにも見えます。
しかし鉄砕牙は、もともと犬夜叉の父が人間である十六夜を守るために作らせた刀でした。
人を慈しむ心がなければ本来の力を使えず、人間を嫌っていた当時の殺生丸には扱えなかったことも作中で説明されています。
さらに鉄砕牙には、犬夜叉の中に流れる強すぎる妖怪の血を抑える役割もありました。
犬夜叉が鉄砕牙を手放した状態で追い込まれると妖怪の血に支配されてしまうことが、朴仙翁によって明かされています。
一方の天生牙は、りんとの出会いなどを通して殺生丸に他者を思いやる心を教える刀となりました。
「父は最初から殺生丸を教育するため天生牙を与えた」とまで高橋氏が明言したわけではありませんが、物語全体を見ると、二本の刀が兄弟それぞれに必要なものを与えていたと考えられます。
父の形見は単純な強さで分けられていたわけではなかったのです。
奈落は連載開始時にはラスボスとして存在していなかった
『犬夜叉』最大の敵といえば奈落です。
ところが連載開始時点では、現在知られている奈落の設定はまだ固まっていませんでした。
犬夜叉と桔梗を誰かが仲違いさせたという構想はあったものの、その人物が誰なのかまでは決まっていなかったそうです。
さらに弥勒の風穴を誰が生み出したのかを考えていく中で、奈落という人物が物語の中心へ入り込んでいきました。
描き進めるうちに犬夜叉と桔梗の過去にも結びつき、最終的には多くの出来事の原因となる存在へ成長しています。
完成した作品を見ると、最初から奈落を中心に物語全体が計算されていたように感じるため、特に意外な制作秘話でしょう。
殺生丸には人間を守って物語から退場する初期案があった
殺生丸には、現在とはまったく違う展開も考えられていました。
高橋留美子氏は、人間を守ったことをきっかけに殺生丸が物語から退場する案を考えていたことがあります。
しかし描いているうちに、それではもったいないと考えて予定を変更しました。
その結果、殺生丸はりんや神楽などとの出会いを重ねながら、長い時間をかけて変化していきます。
高橋氏も『犬夜叉』には「殺生丸の成長物語」という面があることを認めています。
初期案が変更されたことで、作品を代表する人気キャラクターへ育っていったわけです。
天生牙は殺生丸の初登場時には能力が決まっていなかった
殺生丸を象徴する武器である天生牙。
しかし、殺生丸が初めて登場した時点では、腰に差している刀がどのような能力を持っているのか決まっていませんでした。
その後、高橋留美子氏が「鉄砕牙とは正反対の刀」「殺生丸自身とも正反対の刀」にしようと考え、人を救う天生牙が生まれました。
結果的に天生牙は、殺生丸の心の変化を表す非常に重要な刀になっています。
最初から殺生丸の成長を計算して配置された武器ではなかったという点が興味深いところです。
神楽と殺生丸の関係も最初から予定されていなかった
神楽と殺生丸の関係は、作品の中でも特に印象に残るものです。
ところが高橋留美子氏は、最初から神楽を殺生丸と深く関わらせる予定ではなかったと語っています。
神楽が自由を求める人物として成長するにつれ、作者の予定から離れて自分で動き始めたように感じたそうです。
自由を求め続けた神楽と、誰にも縛られずに生きる殺生丸。
二人の関係は細かく計画して生まれたものではなく、連載の中で自然に出来上がっていきました。
弥勒と珊瑚が夫婦になることも当初の予定にはなかった
弥勒と珊瑚は、物語後半では将来を約束する関係になります。
しかし二人を最初から結びつける予定だったわけではありません。
高橋留美子氏は、物語を描いていくうちに自然と現在の関係になったと説明しています。
特に弥勒が珊瑚の家族や仲間のために供養しようとする場面などを通じて、二人ならうまくいきそうだと感じるようになったそうです。
完成した作品だけを見ると計画的な恋愛関係にも見えますが、こちらもキャラクターを動かす中から生まれた展開でした。
四魂の玉は神道の「一霊四魂」が元になっている
『犬夜叉』の物語そのものを動かしている四魂の玉にも元ネタがあります。
高橋留美子氏は神道の「一霊四魂」という考え方を知り、それを玉にしたら面白いのではないかと考えました。
四魂の玉が砕ける展開も、犬夜叉とかごめが旅を続ける理由を作るためです。
さらに玉をかごめの体内に入れたのは、桔梗の生まれ変わりであることを印象づける目的がありました。
物語が四魂の玉から始まったため、最後も四魂の玉で終わらせることにしたとも語られています。
複雑な神話設定から物語が生まれたというより、物語を動かすために神道の考え方を取り入れていったのです。
朔の日に人間になる設定は「犬夜叉に弱点が欲しい」から生まれた
朔の日になると妖力を失い、黒髪の人間になる犬夜叉。
半妖という存在の根本に関わる設定なので、連載開始前から決められていたように思えます。
ところが、この設定も物語の途中で加えられました。
高橋留美子氏は蜘蛛寺のエピソードを作る際、犬夜叉にも弱点が必要だと考え、人間になる日を設定したそうです。
結果的には戦闘上の弱点だけではなく、普段は隠している犬夜叉の不安や弱さを描く重要な設定になりました。
桔梗の土で作られた体は益子焼から発想された
現世へ戻った桔梗は普通の人間とは異なり、土と骨から作られた体を持っています。
古い宗教や伝承を参考にした設定のようにも感じます。
しかし、この発想のきっかけは高橋留美子氏が旅先で体験した益子焼でした。
陶芸に触れた経験から「土で人の体を作る」という発想につながっていったそうです。
作品の中でも特に神秘的な設定のひとつが、陶芸体験から生まれていたという意外な裏話です。
殺生丸の肩の「もふもふ」は服ではなく体の一部
殺生丸の肩から伸びている巨大な白い毛。
一見すると高級な毛皮を身につけているように見えますが、公式ガイド『犬夜叉奥義皆伝』では殺生丸の体の一部とされています。
攻撃に使われることもあると説明されており、単なる飾りではありません。
高橋留美子氏も「あれは犬の毛」という趣旨の説明をしています。
殺生丸が巨大な犬の姿になった際には、体を回って尻尾へ続いているようなイメージなのだそうです。
デザイン時のテーマは「ゴージャス」で、そのために大きな毛が付けられました。
殺生丸は「帰るぞ」と言うのに帰る家が決まっていない
殺生丸は旅の途中、邪見たちに「帰るぞ」という意味の言葉をかけることがあります。
では、殺生丸はいったいどこへ帰っているのでしょうか。
この疑問は高橋留美子氏にも寄せられています。
ところが高橋氏自身も、セリフを書きながら「どこに帰るのだろう」と思っていたそうです。
殺生丸に固定された屋敷や巣のような場所が細かく設定されているわけではありません。
目的地ではない場所へ移動することを、殺生丸なりに「帰る」と表現しているようです。
犬夜叉の耳は「生の餃子の皮5枚分」の柔らかさ
犬夜叉の犬耳には、驚くほど細かな公式設定があります。
公式ガイドに掲載された高橋留美子氏の説明によると、その感触は「生の餃子の皮を5枚重ねた程度」の柔らかさなのだそうです。
キャラクターの能力とはほとんど関係ありませんが、本編を見ているだけでは絶対に分からない設定でしょう。
またアニメ制作時には、犬夜叉に犬耳とは別の人間の耳を描くのかという問題もありました。
最終的には、人間の耳がある位置を髪で隠すデザインになっています。
冥加じいさんは約2メートルまで巨大化できる可能性がある
冥加じいさんは血を吸うと体が丸く膨らみます。
公式ガイドでは通常時の冥加は直径約7ミリほどとされています。
さらに高橋留美子氏によると、血を十分に吸い続ければ約2メートルほどまで巨大化できる可能性があるそうです。
人間より大きな冥加じいさんを想像すると、いつもの姿とはまったく印象が変わります。
本編ではそこまで巨大になる場面は描かれていません。
蛇骨には女性キャラクターだった初期案がある
七人隊の蛇骨にも、現在とは異なる初期構想がありました。
高橋留美子氏は当初、七人隊の中に女性キャラクターを一人入れることを考えていました。
しかし犬夜叉と女性を激しく戦わせる展開を描くことに迷い、設定を変更しています。
その結果として誕生したのが蛇骨でした。
高橋氏にとって、男性に恋愛感情を持つ男性キャラクターを本格的に描くのも蛇骨が初めてだったとされています。
かごめが最後にどちらの時代を選ぶかは長く決まっていなかった
物語の最後で重要になるのが、かごめが現代と戦国時代のどちらで生きるのかという問題です。
高橋留美子氏も、この結末について長い間悩んでいました。
どちらを選んでも、かごめは大切な人たちのどちらかと離れなければなりません。
最終的には、かごめ自身が幸せになれる道として戦国時代へ戻る結末が選ばれました。
最終回を最初から決めて連載していたわけではなく、物語が終わりに近づくまで答えが決まっていなかったのです。
犬夜叉の裏設定まとめ

『犬夜叉』では、すべての設定が連載開始前から決められていたわけではありません。
最大の敵である奈落、殺生丸を象徴する天生牙、神楽と殺生丸の関係、弥勒と珊瑚の恋愛まで、連載を続ける中で形になったものが数多くあります。
また、犬夜叉15歳、殺生丸19歳という数字も実際に生きた年数ではなく、人間に置き換えた年齢でした。
ネット上で広まっている「犬夜叉は約200歳」「殺生丸は数百歳」という情報とは分けて考える必要があります。
そして原作では将来が明言されなかった殺生丸とりんも、ドラマCD『あさって』を経て、『半妖の夜叉姫』ではとわとせつなの両親として描かれました。
こうした制作秘話や後から明かされた設定を知ると、『犬夜叉』のキャラクターや物語が、作者の想定を超えながら少しずつ完成していったことが分かります。





















