『もののけ姫』には、映画を何度見ても気づきにくい裏設定が数多く存在します。
特に興味深いのが、アシタカやエボシ御前など登場人物の過去です。
映画ではほとんど説明されませんが、宮﨑駿監督が制作時に考えていた設定を知ると、それぞれの行動にも違った意味が見えてきます。
さらに、犬神モロと猪神乙事主(おっことぬし)の意外な関係や、映画のタイトルが『もののけ姫』ではなくなる可能性があったことなど、制作に関する裏話も残されています。
今回は『もののけ姫』の知られざる裏設定や制作秘話を紹介します。
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宮﨑駿監督が描く、自然と人間の共存をテーマにしたスタジオジブリの名作『もののけ姫』。
壮大な世界観、美しい映像、心に残る物語をDVDで何度でも楽しめます。
ジブリ作品が好きな方はもちろん、家族で楽しみたい方にもおすすめの一作です。
カヤはアシタカの妹ではなく許嫁だった

物語の序盤、村を出ることになったアシタカを見送る少女が「カヤ」です。
アシタカを「あにさま」と呼んでいるため、妹だと思った人も多いのではないでしょうか。
しかし、カヤはアシタカの妹ではありません。
一族の中でアシタカの許嫁として認められていた女性という設定です。
「あにさま」という呼び方も実の兄という意味ではなく、自分より目上の人に対する敬意を込めた呼び方でした。金曜ロードショー公式でも、この設定が紹介されています。
カヤは村の掟を破ってアシタカを見送り、「私の身代わりに」と玉の小刀を渡します。
ところが物語の後半、アシタカはその小刀をサンに渡しています。
カヤがアシタカの許嫁だったと知ったうえで見ると、かなり複雑な場面です。
アシタカは滅びかけたエミシ一族の末裔
アシタカが暮らしていた村も、普通の山村ではありません。
アシタカはエミシ(蝦夷)の一族の末裔という設定です。
金曜ロードショー公式によると、アシタカの一族は大和王朝との戦いに敗れた部族の末裔で、長い間ひっそりと暮らしてきた人々とされています。
そのため、アシタカは日本を舞台にした物語の主人公でありながら、中央の社会から見れば「外側」にいる人物です。
宮﨑駿監督も『もののけ姫』を構想した際、「侍でもなく、貴族でもない主人公」を描こうとしていました。
アシタカが侍たちにもタタラ場にも属さず、どちらか一方だけを正しいと決めつけない人物として描かれていることにも、この出自が関係していると考えられます。
エボシ御前は海外へ売られた過去を持っていた
映画ではほとんど語られませんが、エボシ御前には非常に壮絶な過去が設定されていました。
宮﨑駿監督が『もののけ姫』制作時に書いた設定メモによると、エボシはかつて海外へ売られ、倭寇の頭目の妻になった女性だったとされています。
しかし、そのまま従って生きていたわけではありません。
そこで頭角を現したエボシは、最終的に倭寇の頭目を亡き者にし、金品を持って故郷へ帰ってきたという設定です。
映画だけを見ると、エボシ御前は森を破壊する人間側のリーダーという印象が強く残ります。
しかし同時に、社会的に弱い立場に置かれた女性や病者を受け入れる人物でもあります。
自分自身も「売られる側」の人生を経験していたという設定を知ると、エボシが弱い立場の人々を守ろうとする理由も違って見えてきます。
タタラ場の病者はハンセン病患者を意識して描かれた
タタラ場には、身体を包帯で覆いながら石火矢を作っている人々が登場します。
劇中では具体的な病名は明かされません。
しかし宮﨑駿監督は後年、ハンセン病患者を思わせる人々として描いたことを明らかにしています。
宮﨑監督は『もののけ姫』の構想を練っていたころ、東京都東村山市にある国立ハンセン病療養所「多磨全生園」を何度も訪れていました。
療養所で暮らしてきた人々の生活用品や記録を見て強い衝撃を受け、「業病と呼ばれる病を患いながら、それでもちゃんと生きようとした人々」を作品の中で描かなければならないと考えたと語っています。
そのため、タタラ場の病者たちは単なる背景の人物ではありません。
『もののけ姫』という作品を作るうえで、宮﨑監督が非常に大切にしていた人々なのです。
タタラ場には「歴史の表舞台に出ない人々」が集められている
『もののけ姫』の特徴のひとつが、武将や有名な侍ではなく、歴史の表舞台には残りにくい人々が物語の中心にいることです。
宮﨑駿監督は日本を舞台にした時代劇を考える際、「侍でもなく、貴族でもない主人公」を描きたいと思っていました。
そこで参考にしたのが『一遍上人絵伝』などに描かれている中世の庶民でした。
そこにはさまざまな職業の人々だけでなく、当時の社会から排除された人々や病者の姿も描かれていました。
宮﨑監督は、そうした「本当の民衆」が登場する映画を作ろうと考え、それが後の『もののけ姫』へつながっていったと語っています。
その視点で見ると、タタラ場は単なる製鉄所ではありません。
既存の社会では居場所を失った人々が集まり、新しい社会を作ろうとしている場所でもあるのです。
エボシ御前が単純な悪役として描かれていない理由のひとつでもあります。
モロと乙事主は昔「いい仲」だった
犬神のモロと猪神の乙事主。
劇中では古くから知っているような会話を交わしますが、実は二人には意外な裏設定があります。
約100年前まで、モロと乙事主は「いい仲」だったとされています。
この設定が生まれたきっかけも面白いところです。
モロ役の美輪明宏さんが乙事主との会話を演じていた際、宮﨑監督が演技について説明するため、「二人は昔、いい仲だった」という背景を伝えたと紹介されています。
映画では詳しい過去は一切語られません。
しかしこの設定を知った後に二人の会話を見ると、長い年月を生きてきた者同士の複雑な感情が感じられるようになります。
乙事主は500歳、モロは300歳
モロと乙事主には年齢の設定もあります。
乙事主は500歳、モロは300歳です。
つまり乙事主はモロより約200歳も年上です。
乙事主は遠く鎮西から猪たちを率いてやってきた巨大な猪神で、すでに目が見えなくなるほど長い年月を生きています。
一方のモロも300年を生きる神です。
人間からすれば気の遠くなるほど長い時間、森と人間の変化を見続けてきた存在ということになります。
二人が人間に対して強い不信感を持っているのも、数百年という時間の中で森が失われていく姿を見てきたからなのかもしれません。
ヤックルは架空の「アカシシ」という動物

アシタカと一緒に旅を続けるヤックル。
見た目は鹿やカモシカのようですが、実在する動物ではありません。
映画のパンフレットでは、ヤックルは「今日では絶滅した、アカシシと呼ばれるオオカモシカ」と説明されています。
つまり『もののけ姫』の世界では、かつて日本に存在していた大型動物という設定になっています。
アシタカの村が中央社会から隔絶された古い文化を残す土地であることを考えると、ヤックルの存在もアシタカたちの世界が通常の日本社会とは異なることを感じさせます。
劇中では目立った説明がないため、本当に昔の日本にいた動物だと思った人もいるかもしれません。
映画タイトルは『アシタカせっ記』になる可能性があった
現在では『もののけ姫』以外のタイトルは考えにくい作品ですが、宮﨑駿監督は別のタイトルを考えていました。
その名前が、
『アシタカせっ記』
です。
スタジオジブリの制作日誌にも、『もののけ姫』制作時に宮﨑監督が『アシタカせっ記』を主張し、鈴木敏夫プロデューサーが『もののけ姫』を推したことが記録されています。
最終的には鈴木プロデューサー側の『もののけ姫』が採用されました。
ちなみに「アシタカせっ記」という名称自体は作品から消えたわけではなく、久石譲による『もののけ姫』の楽曲名にも残されています。スタジオジブリ公式の交響組曲紹介にも「第一章 アシタカせっ記」と記載されています。
物語そのものはアシタカの旅を中心に進むため、もし『アシタカせっ記』になっていたとしても不思議ではありません。
17年前にも別の『もののけ姫』が作られていた
映画『もののけ姫』が公開されたのは1997年ですが、宮﨑駿監督はそれよりはるか以前から「もののけ姫」という作品を考えていました。
徳間書店によると、宮﨑監督は1980年に90枚以上ものカラーイメージボードを描いています。
そのイメージボードをもとにした絵物語『もののけ姫』が1993年に出版されました。
ただし、現在知られている1997年の映画とは物語が大きく異なります。
徳間書店はこの初期版を「ひたむきで一所懸命なもののけと、けなげで一途な姫の愛の物語」と紹介し、1997年版映画の「初期設定版」としています。
つまり『もののけ姫』には、
1980年に構想された『もののけ姫』
と、
1997年に映画化された『もののけ姫』
という、大きく内容の異なる二つの作品が存在するのです。
同じタイトルから、17年という年月を経て現在のアシタカとサンの物語へ変化していったことになります。
まとめ:裏設定を知ると善悪だけでは語れない作品だと分かる
『もののけ姫』には、映画の中では説明されない設定が数多く存在します。
カヤはアシタカの妹ではなく許嫁。
アシタカはエミシ一族の末裔。
エボシ御前には海外へ売られた壮絶な過去があり、モロと乙事主はかつて特別な関係にありました。
さらにタタラ場の病者には、宮﨑駿監督が実際に交流したハンセン病療養所の人々から受けた強い影響があります。
こうした設定を知ると、『もののけ姫』が単純な「自然対人間」の物語ではないことがよく分かります。
森を破壊するエボシにも守りたい人々がいて、人間を憎む神々にも長い歴史があります。
アシタカもどちらか一方を敵と決めるのではなく、その間に立って「共に生きる道」を探そうとします。
誰が完全な善で、誰が完全な悪なのかを簡単には決められない。
その複雑さこそが、公開から長い年月が経っても『もののけ姫』が多くの人を引きつけ続けている理由のひとつなのかもしれませんね。
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宮﨑駿監督が描く、自然と人間の共存をテーマにしたスタジオジブリの名作『もののけ姫』。
壮大な世界観、美しい映像、心に残る物語をDVDで何度でも楽しめます。
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