『となりのトトロ』は、1988年に公開された宮﨑駿監督の代表作です。
小学6年生のサツキと4歳のメイが自然豊かな郊外へ引っ越し、森に暮らす不思議な生きもの「トトロ」と出会う物語が描かれています。
子どもでも楽しめる分かりやすい作品ですが、実は映画だけでは分からない初期設定や制作秘話が数多く残されています。
特に『となりのトトロ』は、ネット上で怖い都市伝説が広まりやすい作品でもあります。
その中には、スタジオジブリがわざわざ公式に否定したものまであります。
今回は公式情報や制作資料などをもとに、『となりのトトロ』の知られざる裏設定や都市伝説の真相を紹介します。
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サツキとメイが、大きな袋にどんぐりをいっぱいつめた、たぬきのようでフクロウのようで、クマのような、へんないきものに会います。
ちょっと昔の森の中には、こんなへんないきものが、どうもいたらしいのです。
でもよおく探せば、まだきっといる。見つからないのは、いないと思いこんでいるから。
サツキとメイが亡くなっているという都市伝説は公式が否定

『となりのトトロ』で最も有名な都市伝説が、
「物語の途中でメイが亡くなっているのではないか」
「その後、サツキも亡くなっているのではないか」
という説です。
映画後半でサツキやメイの影が描かれていない場面があることなどから、ネットを中心に広まっていきました。
しかし、この説についてはスタジオジブリ自身が明確に否定しています。
2007年5月、スタジオジブリの公式サイトには、このような設定は作品には存在しないことが広報部から正式に掲載されました。
さらに、映画後半でサツキとメイの影が描かれていないことについても、「作画上で不要と判断して省略しただけ」と説明されています。
つまり、影がないことに物語上の特別な意味はありません。
トトロについても、不吉な存在であるという設定は公式に否定されています。
長年語られている有名な説ですが、実際には「裏設定」ではなく都市伝説だったのです。
最初はサツキとメイの姉妹ではなく一人の少女だった
現在の『となりのトトロ』といえば、サツキとメイの姉妹が主人公です。
ところが作品の初期構想では、主人公は二人ではありませんでした。
宮﨑駿監督が1970年代に描いた初期イメージでは、トトロと出会う一人の少女を中心とした物語が考えられていました。
実際に映画制作が進んでいく中で、一人の少女だけでは物語を長く展開することが難しいという問題が出てきます。
そこで宮﨑監督が考えたのが、
「少女を二人にする」
というアイデアでした。
制作デスクを務めた木原浩勝さんによると、宮﨑監督は「お姉さんが必要」と考え、サツキというキャラクターを加えたとされています。
こうして、
- しっかり者の姉・サツキ
- 好奇心旺盛な妹・メイ
という現在の姉妹が誕生しました。
現在では二人でなければ成立しないように感じる作品ですが、もともとは一人の少女から始まった物語だったのです。
ポスターの少女はサツキでもメイでもない
『となりのトトロ』の有名なポスターを思い出してみてください。
雨の降るバス停で、大きな傘を持った少女とトトロが並んで立っています。
一見するとサツキのように見えます。
しかし、よく見ると髪型はメイに近く、身長もサツキよりかなり小さく描かれています。
実はこの少女、サツキでもメイでもありません。
制作デスクだった木原浩勝さんによると、サツキとメイ双方の特徴を組み合わせて作られたキャラクターです。
服装はサツキ。
顔立ちや傘などはメイ。
身長はサツキより低く、メイより高い。
いわば二人を組み合わせた少女なのです。
なぜこんなことになったのでしょうか。
宮﨑監督はポスターでも雨のバス停でトトロと少女が一対一で並ぶ構図を大切にしていました。
しかし映画では、バス停へ父親を迎えに行くサツキはメイも連れています。
だからといって、ポスターにサツキとメイの二人を並べるのも宮﨑監督のイメージとは違いました。
その結果、映画には存在しない「サツキでもありメイでもある少女」がポスターへ残ることになりました。
有名なポスターなのに、映画本編には登場しない人物が描かれているという珍しい作品なのです。
大トトロには「ミミンズク」という初期設定名があった
私たちは大きな個体を「大トトロ」、青い個体を「中トトロ」、白い小さな個体を「小トトロ」と呼んでいます。
しかし制作初期のイメージボードでは、それぞれに違う名前が付けられていました。
- 大トトロは「ミミンズク」
- 中トトロは「ズク」
- 小トトロは「ミン」
さらに年齢についても、
大トトロのミミンズクは1302歳。
中トトロのズクは679歳、小トトロのミンは109歳という設定が初期イメージボードに記されています。
小トトロですら100歳を超えていることになります。
森の中に暮らす不思議な存在らしい、とてつもなく長い時間を生きてきた設定です。
ただし注意したいのは、「ミミンズク」が現在の大トトロの正式な本名として映画で使われているわけではないことです。
あくまで制作初期に考えられていた名前として紹介するのが正確です。
ネコバスは面白がってバスのモノマネをしている
映画の中でも特に印象的なのがネコバスです。
巨大な猫の身体がそのままバスになっており、森や田んぼの上をものすごい速度で走っていきます。
そんなネコバスには12本の足があります。
金曜ロードショー公式も、ネコバスを「12本の足」で走る存在として紹介しています。
宮﨑駿監督の設定では、ネコバスは最初から現在のバスの姿をしていた生きものというより、人間の乗り物を面白がってその姿を取り入れた、不思議な猫のような存在として考えられています。
そのため機械のバスとは違い、木々の間を自由自在に駆け抜けることができます。
さらに『となりのトトロ』には登場しない「子どものネコバス」も存在します。
こちらについては後ほど紹介します。
お父さんは考古学者でトトロの寝床には縄文土器もある
サツキとメイのお父さん・草壁タツオ。
映画では自宅の机で大量の本に囲まれながら仕事をしている姿が描かれています。
実はタツオは考古学を研究している人物です。
そして『となりのトトロ』をよく見ると、映画の中にも考古学と関係するものが隠されています。
特に面白いのが、メイが初めて大トトロと出会う場面です。
トトロが眠っている場所には、縄文土器を思わせるものが描かれています。
『となりのトトロ』と考古学の関係を調べた研究でも、父親が考古学者であることや、トトロの寝床に縄文土器が存在することが指摘されています。
つまりトトロの森は、単なる現代の森として描かれているわけではありません。
はるか昔から人間が暮らしてきた時間まで感じさせる場所になっています。
考古学を研究する父親が、娘たちからトトロの話を聞いたときに頭ごなしに否定せず、
「森の主に会った」
と受け止めるのも印象的です。
古い時代や土地の記憶を大切にする人物だからこそ、不思議な存在を自然に受け入れられたのかもしれません。
トトロの風景の大きな源は埼玉県所沢
『となりのトトロ』の舞台についても、さまざまな場所がモデルとして挙げられています。
その中でも非常に重要なのが埼玉県所沢市です。
スタジオジブリは、宮﨑駿監督監修の書籍『トトロの生まれたところ』を紹介する際、
「『となりのトトロ』の舞台となった所沢」
とはっきり説明しています。
宮﨑監督は長年所沢に暮らし、その土地を歩きながら『となりのトトロ』の世界を思い描いていました。
スタジオジブリ自身も、「所沢に住まなければ、トトロは生まれなかった」と紹介しています。
映画に登場する森や田んぼ、雑木林、坂道などは、特定の一地点をそのまま描いたものというより、宮﨑監督が所沢周辺で見てきた風景や記憶が重なって生まれた世界と考えると分かりやすいでしょう。
現在でも所沢周辺の自然を見ると、『となりのトトロ』の世界を思わせる風景が残っています。
お母さんの病名は映画では明言されていない
サツキとメイのお母さん・草壁靖子は、七国山病院へ長期間入院していますが、映画本編では、病名そのものは明言されていません。
現在の金曜ロードショーによる作品紹介でも、
「病気で入院しているお母さん」
と説明されており、具体的な病名までは示されていません。
一方、制作資料の「宮崎監督登場人物覚書」では、お母さんについて「胸を病んで入院中」で、長い入院生活を送っている人物として設定されていたことが紹介されています。
実は、映画では病名は明かされていませんが、小説『となりのトトロ』では病名が「結核」であることが明記されているのです。
『となりのトトロ』の舞台とされる1950年代ごろは、今ほど治療法が確立しておらず、結核は治療の難しい病気でした。
抗生物質による治療が広まり始めた時期ではありますが、長期間の入院や療養が必要になることも珍しくなかったのです。
なお物語の最後に流れるエンディングでは、お母さんが家族と一緒に過ごしている様子も描かれています。
実は公式の「続編」が存在する
映画『となりのトトロ』には、一般の映画館では見ることのできない続きの物語があります。
タイトルは、
『めいとこねこバス』
です。
2002年に作られた三鷹の森ジブリ美術館のオリジナル短編映画で、原作・脚本・監督はすべて宮﨑駿監督。
上映時間は約14分です。
物語の主人公はメイ。
風の強い日にメイの前へ不思議なつむじ風が現れます。
その正体は、小さな「こねこバス」。
メイはこねこバスと友達になり、その夜、一緒に森へ出かけます。
つまりネコバスには、子どものネコバスも存在するのです。
しかもジブリ美術館の記録では、こねこバスは6本足として作られています。
大きなネコバスが12本足なのに対して、子どものころは6本足という違いも面白いところです。
『となりのトトロ』の世界が映画のラストで終わったわけではなく、その後もメイと不思議な生きものたちの交流は続いていたのです。
『となりのトトロ』と『火垂るの墓』は同時上映の2本立て映画だった
現在ではどちらもスタジオジブリを代表する作品ですが、『となりのトトロ』には驚くような制作事情があります。
宮﨑駿監督の『となりのトトロ』と、高畑勲監督の『火垂るの墓』は同時期に制作されていました。
そして1988年4月16日、2本立てとして同時上映されています。
長編アニメーションを2本同時に作るという非常に大きなプロジェクトだったため、スタジオジブリは1987年に第2スタジオまで設けています。
スタジオジブリ公式も、長編2本を同時に作りながら作品の質も高めるという制作体制について、非常に厳しいプロジェクトだったことを振り返っています。
しかも二つの作品は、雰囲気が大きく異なります。
自然豊かな郊外で、不思議な生きものとの交流を描く『となりのトトロ』。
戦時下を舞台に、兄妹が懸命に生きる姿を描いた『火垂るの墓』。
現在では別々に語られることの多い2作品ですが、最初に映画館を訪れた観客は、この2本を続けて見ていたのです。
まとめ:怖い都市伝説より本当の裏設定のほうが面白い

『となりのトトロ』には、映画だけでは分からない設定や制作秘話が数多くあります。
サツキとメイが亡くなっているという有名な説は、スタジオジブリが公式に否定しています。
一方で、本当に存在する裏話もかなり意外です。
もともとの主人公は一人の少女だった。
有名なポスターにはサツキでもメイでもない少女が描かれている。
大トトロには「ミミンズク」という初期設定名があった。
サツキとメイのお父さんは考古学者で、トトロの寝床には縄文土器まで描かれている。
そして映画公開から14年後には、宮﨑駿監督自身による『めいとこねこバス』という新しい物語まで作られています。
怖い都市伝説を付け加えなくても、『となりのトトロ』には十分すぎるほど面白い裏側があります。
こうした設定を知ったうえでもう一度映画を見ると、森の中やトトロの寝床、ポスターなど、今まで気にしていなかった部分にも新しい発見があるかもしれません。
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サツキとメイが、大きな袋にどんぐりをいっぱいつめた、たぬきのようでフクロウのようで、クマのような、へんないきものに会います。
ちょっと昔の森の中には、こんなへんないきものが、どうもいたらしいのです。
でもよおく探せば、まだきっといる。見つからないのは、いないと思いこんでいるから。






















