漫画『BASTARD!! -暗黒の破壊神-』は、ダーク・シュナイダーを主人公とする萩原一至氏のダークファンタジー作品です。
魔法使いや忍者、エルフなどが登場するため、序盤だけを見ると王道の「剣と魔法の世界」に思えます。
ところが物語を追っていくと、400年前の旧文明、人工的に作られた破壊神、天使、超科学など、まったく違う世界の姿が見えてきます。
さらに『BASTARD!!』には、漫画本編だけではわからない設定も少なくありません。
公式データブック、小説、ゲーム、作者インタビューなどで、四天王の過去や名前の由来まで補完されています。
今回は、作品に隠された裏設定に加えて、カル=ス、アーシェス・ネイ、ガラ、アビゲイルの意外な設定や、有名な都市伝説も紹介します。
なお、物語後半の重要な内容にも触れています。

圧倒的な魔法バトルとダークファンタジーの世界観が魅力の『BASTARD!! -暗黒の破壊神-』。
ダーク・シュナイダーを中心に、迫力ある戦いと個性的なキャラクターが次々に登場します。
既刊1〜27巻をまとめて楽しみたい方におすすめのセットです。
舞台は異世界ではなく近代文明崩壊から400年後

『BASTARD!!』の世界は、中世ヨーロッパ風の異世界に見えます。
しかし公式設定では、近代文明が崩壊してから400年が経過した世界です。
2022年版アニメ公式サイトでも、第1話の時代を「近代文明の崩壊から400年後」と明記しています。
つまりメタ=リカーナなどの国々が最初から存在していたわけではありません。
高度な文明が一度崩壊し、その後に魔法と剣を中心とした新しい文明が作られました。
序盤はファンタジーですが、後半へ進むほど旧文明の機械や科学技術が登場するのはこのためです。
破壊神アンスラサクスは旧世界で作られた存在
破壊神アンスラサクスは、古代から存在していた神のように見えます。
ところが公式サイトでは「旧世界で創り上げられた異形の邪神」と説明されています。
つまり、人類を滅亡寸前まで追い込んだ存在には、旧文明そのものが関係していたのです。
「魔王や邪神が人間を襲ってきた」という普通のファンタジーとは、根本から構造が違います。
文明を滅ぼした脅威を生み出した原因も、かつての人類側にあったわけです。
アンスラサクスには「天使」というさらに大きな秘密がある
アンスラサクスが人工的に生み出された存在だっただけでも驚きですが、さらに正体がひっくり返ります。
集英社は単行本15巻で「破壊神の正体であった天使達」と説明しています。
つまり、それまで邪神だと思われていた存在が、神に仕えるはずの天使だったのです。
ここから物語は、人類と破壊神の戦いではなく、神、天使、悪魔、人類が関わる最終戦争へと広がっていきます。
序盤だけを知っている読者ほど「同じ漫画なのか」と驚く展開でしょう。
方舟には400年前の大破壊の真相が残されている
物語後半に登場する「方舟」も、普通の船ではありません。
内部には旧世界の施設や記録が残されています。
集英社の完全版9巻紹介では、方舟の最下層に「四百年前の大破壊の真相」と「旧世界の魔法」が行った行為の記録が存在すると説明されています。
現代の人々にとって神話や伝説になった出来事が、方舟では記録として保存されていたことになります。
『BASTARD!!』の世界が、過去の文明の上に作られていることを象徴する場所です。
魔法世界の地下では旧文明の機械が今も動いている
旧文明は完全に消えたわけではありません。
2022年版アニメでは、マーシ王子の屋敷の地下に「400年前に滅んだ旧世界の文明で作られた装置」が残っていることが明かされています。
さらに後半では、飛空艇や巨大施設など、ファンタジーとは思えない機械が次々と登場します。
人々が魔法を当たり前に使っている世界の地下には、失われた科学文明が眠っているのです。
この「ファンタジーの皮をかぶったSF」という構造が、『BASTARD!!』の大きな特徴になっています。
ルーシェはD・Sを入れておくだけの器ではなかった
序盤のルーシェ・レンレンは、ダーク・シュナイダーを封じるための少年に見えます。
しかし物語後半では、D・Sから分離して独立した存在として現れます。
集英社の15巻紹介でも「D・Sから分離したルーシェ」と明記されています。
さらにルーシェには天使側につながる大きな秘密が隠されていました。
つまりD・Sとルーシェは、単純に「一つの体に二つの人格がある」という関係ではありません。
序盤から続いていた「なぜルーシェにD・Sを封印できたのか」という疑問が、作品全体の神話設定へつながっていきます。
ゲーム版ではD・Sの出生まで科学で説明されている
漫画だけでは追いにくい設定の代表が、ダーク・シュナイダー自身の出生です。
PlayStation用ゲーム『BASTARD!! -虚ろなる神々の器-』では、D・Sについて旧文明の「霊子力理論」から生まれた科学の産物という設定が語られています。
ゲーム内では、人間が持つ霊的な能力の限界を取り払い、無限の力を生み出すための実験からD・Sが誕生したと説明されました。
つまりこの設定では、破壊神だけではなく主人公まで旧文明の研究とつながっています。
ただしゲームで詳しく補完された設定なので、漫画本編だけから「D・Sはこの方法で作られた」と断定するのは注意が必要です。
原作の設定を広げる外伝的な情報として見るのがよいでしょう。
固有名詞がヘヴィメタルだらけなのは作者公認
『BASTARD!!』には、音楽を元にしたような名前が大量に登場します。
メタ=リカーナ、アンスラサクス、ハーロ・イーンなど、ハードロックやヘヴィメタルを知っている人なら気づく名前ばかりです。
これはファンのこじつけではありません。
萩原一至氏本人が2023年のインタビューで、ヘヴィメタルがずっと好きで、作中の固有名詞を決めるときによく使ったと語っています。
『BASTARD!!』という作品世界そのものが、巨大な音楽ネタの集まりになっているわけです。
ダーク・シュナイダーの名前も実在のメタル歌手が元ネタ
主人公ダーク・シュナイダーの名前も、音楽由来として知られています。
有力な元ネタは、ドイツのヘヴィメタル歌手ウド・ダークシュナイダー氏です。
名前を並べると「Dark Schneider」と「Dirkschneider」で非常によく似ています。
海外では別のロック歌手が元ネタではないかという説も語られましたが、作品全体に大量のメタルネタが仕込まれていることを考えると、ウド・ダークシュナイダー氏との関係が広く知られています。
D・S復活時の呪文「アクセプト」まで、ウド氏が所属していたバンドACCEPTを思わせるのも『BASTARD!!』らしい遊びです。
原型は『BASTARD!!』ではなく『WIZARD!!』
『BASTARD!!』には連載前の原型があります。
1987年に『週刊少年ジャンプ』へ掲載された読切『WIZARD!! ~爆炎の征服者~』です。
この作品が話題となり、翌1988年から『BASTARD!!』の連載が始まりました。
さらに2023年には、アニメ第2期を記念して、萩原一至氏原作、シヒラ竜也氏作画による新たな『WIZARD!!』も制作されています。
『BASTARD!!』になる前の姿と、数十年後に作られた新しい姿を比較できる珍しい作品です。
完全版はただの再録ではなく原稿そのものを描き直した
『BASTARD!!』完全版は、普通の豪華版とはかなり違います。
集英社は完全版1巻を「全面加筆改稿」と紹介しています。
さらに2巻では「新作と見まごうほど」と宣伝し、フルデジタルによる全面加筆改稿が行われました。
昔の原稿を大きなサイズで再収録しただけではなく、キャラクターや背景などへ大幅に手が加えられています。
通常版と完全版を比べること自体が、一つの楽しみ方になっている作品です。
萩原一至氏はネームを作らず描きながら話を考えていた
『BASTARD!!』は、序盤と後半で物語の規模が大きく変わっています。
最初はダンジョンを舞台にした剣と魔法の物語でしたが、やがて旧文明、天使、悪魔、世界規模の戦いへ発展しました。
萩原一至氏は2016年のインタビューで、自身について「もともとネームは作らない」と話し、描きながらストーリーを考えていたことを明かしています。
さらに2023年には、最初に考えた通りに描いていたら連載は長く続かなかったと思うと振り返っています。
『BASTARD!!』の世界が連載とともに巨大化した背景がよくわかる発言です。
ロールプレイングゲーム『D&D』の影響は萩原一至氏本人が認めている
『BASTARD!!』にはゲーム的な要素も多くあります。
魔法体系、モンスター、装備、種族などが細かく設定され、RPGのルールブックを読んでいるような部分もあります。
萩原一至氏は2023年のインタビューで『ダンジョンズ&ドラゴンズ』のルールブックから大きな影響を受けたと語っています。
『ダンジョンズ&ドラゴンズ(D&D)』は1974年に発売された世界初のロールプレイングゲーム。
世界の構造だけではなく、種族やモンスターの生態まで決められている点に感動したとも話していました。
『BASTARD!!』が単純な魔法漫画ではなく、細かな設定を積み重ねた作品になった理由の一つでしょう。
四天王は固定メンバーではなく400年間で何度も代替わりしていた
ダーク・シュナイダーの四天王といえば、カル=ス、アーシェス・ネイ、ガラ、アビゲイルの4人が有名です。
しかし外伝やゲームで明かされた設定では、「四天王」は特定の4人だけを指す名前ではありません。
その時代で最強クラスの配下4人に与えられる称号で、400年以上にわたるD・Sの活動の中で何度もメンバーが入れ替わってきたとされています。
約100年前の先代四天王として知られているのが、シシ・リジィ、イアソン・ギラン、ガイン・エスペランザ、イーカル・モンローです。
現在の四天王とはかなり雰囲気が違い、D・Sへ心から忠誠を誓っていた者ばかりではありません。
中でもガイン・エスペランザは、いつかD・Sを倒して自分が支配者になることを狙っていた危険な人物でした。
そのガインの裏切りを止めたのが、当時まだ若かったカル=スです。
カル=スはガインとの戦いに勝ち、その実力をD・Sに認められて、後に四天王の席を受け継いだとされています。
またイーカル・モンローがいなくなった後には、アビゲイルがその一角へ加わったとされており、現在知られている四天王も長い時間をかけて形作られたメンバーでした。
つまりカル=スたちは「D・S最初の四天王」ではなく、歴代四天王の一世代にすぎません。
昔の四天王には、D・Sを利用しようとする者や、力で従っているだけの者も多かったとされています。
一方、現在のカル=ス、ネイ、ガラ、アビゲイルは、最終的にD・Sと強い個人的なつながりを持っています。
四天王の変化を追うと、D・Sが400年以上の時を過ごす中で、単に強者を従える支配者から、仲間との関係を持つ人物へ少しずつ変わっていったようにも見えてきます。
氷の至高王:カル=スは先代四天王を倒してその席に入った

カル=スには、漫画ではほとんど描かれない四天王就任の過去があります。
ゲーム『虚ろなる神々の器』では、およそ100年前に「ガイン・エスペランザ」という人物が四天王の一人だったと語られます。
ガインはD・Sを裏切ろうとしますが、それを止めたのがまだ若かったカル=スでした。
その実力を認められ、カル=スはガインに代わって四天王へ加わったとされています。
つまりカル=スは、ネイやガラと同じ時期に何となく四天王になったわけではありません。
旧世代の四天王を倒して席を受け継いだ人物だったのです。
また「カル=ス」という名前は、LIONやBad Moon Risingで活動した歌手カル・スワンが元になったとされています。
こちらもヘヴィメタル好きの萩原一至氏らしい名前です。
雷帝:アーシェス・ネイの名前にも音楽ネタと有名な説がある

アーシェス・ネイの「アーシェス」は、日本のハードロックバンドEARTHSHAKERがモチーフとされています。
D・Sやカル=スと同じく、四天王にも音楽由来の名前が使われているわけです。
一方で「ネイ」については、別の面白い話があります。
設定資料を元にした資料では、「ネイ」は人間にもダークエルフにも完全には属さない存在であることを表した名前と説明されています。
さらにファンの間では、1989年のゲーム『ファンタシースターII 還らざる時の終わりに』に登場する「ネイ」との共通点を指摘する説もあります。
『ファンタシースターII』のネイも、人間とは異なる出自を持つ女性キャラクターです。
ただし萩原一至氏が影響を認めた一次資料は確認できないため、こちらはあくまで有名なファン考察として見るのがよいでしょう。
ニンジャマスター:ガラには漫画で描かれなかった「空白の2年間」がある
ガラには、漫画だけを読んでいると完全に抜け落ちている時期があります。
メタ=リカーナ王城崩壊後から物語が再開するまでの約2年間です。
この空白を描いたのが、公式小説『BASTARD!! 暗黒の破壊神 EX 小説ニンジャマスターガラ外伝』です。
集英社自身も「空白の2年間に起きた、ガラの物語」と紹介しています。
小説では異境へ飛ばされたガラが、獣人たちの暮らす街へたどり着き、新たな冒険へ巻き込まれます。
つまりガラは、本編から姿を消していた間も何もしていなかったわけではありません。
さらにゲーム『虚ろなる神々の器』では、ガラと同じ師のもとで修行した「ジン」という親友まで登場します。
ガラとジンはライバルとして育ち、妖刀ムラサメの継承をめぐる過去まで描かれました。
ガラの人物像を深く知りたい場合は、漫画より外伝作品の情報量が多いほどです。
冥界の預言者:アビゲイルは暗黒僧侶になる前は旧世界の科学者だった
四天王の中で、世界の秘密と最も深くつながっているのがアビゲイルです。
漫画では「冥界の預言者」と呼ばれる暗黒僧侶ですが、その正体は旧世界を知る「エウロペアの十賢者」の一人でした。
さらにゲーム『虚ろなる神々の器』では、科学者だったころの考え方まで補完されています。
アビゲイルは、人間の魂まで科学によって扱った旧文明の研究を後悔し、それが十賢者から離れる理由になったと語られました。
その後、アビゲイルが可能性を感じた存在がダーク・シュナイダーです。
漫画序盤では「破壊神を復活させようとする怪しい男」にしか見えませんが、本来は旧世界の失敗を知り尽くした科学者だったことになります。
名前にも『BASTARD!!』らしい仕掛けがあります。
「アビゲイル」は、キング・ダイアモンドの1987年のアルバム『Abigail』がモチーフとされています。
さらに海外ファンの間では、アビゲイルが聖書の「偽預言者」を意識したキャラクターではないかという考察もあります。
ただし「偽預言者モデル」について公式発表は確認できないため、都市伝説の一つとして扱うのが安全です。
長期休載は「正式な打ち切り」とは少し違う
『BASTARD!!』には「打ち切りになった」という噂が長年あります。
現在の単行本最新刊である27巻は、2012年3月19日に発売されました。
その後、新しい単行本は非常に長い間発売されていません。
しかし2023年のインタビューで萩原一至氏は、『BASTARD!!』について「今は連載をしていない」としながらも、地獄編の続きのネームへ取り組んでいると説明しています。
さらに2026年9月現在も、ウルトラジャンプ公式サイトでは『BASTARD!! 暗黒の破壊神』が作品一覧に掲載され、既刊情報として27巻が表示されています。
そのため「集英社が物語終了を正式発表した」という意味での打ち切りとは分けて考えたほうがよいでしょう。
萩原一至氏自身も、いつか読者へ新しい『BASTARD!!』を届けたいという気持ちはあると語っています。
バスタードの裏設定まとめ
『BASTARD!!(バスタード)』は、漫画本編だけでも非常に設定の多い作品です。
しかし小説、ゲーム、データブック、作者インタビューまで調べると、その世界はさらに広がります。
近代文明崩壊から400年後という世界。
旧文明で作られたアンスラサクス。
その奥に隠された天使の存在。
旧文明の技術につながるD・Sやアビゲイル。
さらに四天王にも、それぞれ漫画だけではわからない過去があります。
カル=スは先代四天王を倒してその席を受け継ぎ、ガラには公式小説で描かれた空白の2年間があります。
アーシェス・ネイの名前にはロックバンド由来のネタがあり、アビゲイルは旧世界の科学者として大きな罪悪感を抱えていました。
そしてD・S四天王そのものも固定メンバーではなく、400年以上の歴史の中で代替わりしていた設定があります。
漫画を読んだだけでは見えてこない情報まで追いかけると、『BASTARD!!』は単なるダークファンタジーではありません。
SF、神話、ゲーム、ヘヴィメタル、作者の遊び心が何重にも重なった作品だったことがわかります。
長期間物語が止まっている現在でも、こうした膨大な設定を読み解く楽しさが残っていることこそ、『BASTARD!!』が長く語られ続ける理由の一つなのかもしれません。

圧倒的な魔法バトルとダークファンタジーの世界観が魅力の『BASTARD!! -暗黒の破壊神-』。
ダーク・シュナイダーを中心に、迫力ある戦いと個性的なキャラクターが次々に登場します。
既刊1〜27巻をまとめて楽しみたい方におすすめのセットです。





















