『進撃の巨人』は、巨人の正体や壁の秘密など、物語そのものに多くの謎が仕掛けられています。
しかし、本編ですべての設定が説明されたわけではありません。
諫山創氏への一問一答、公式ファンブック、インタビュー、連載前の読み切り版などを見ると、本編だけでは分からない設定や、途中で変更された構想が数多く存在します。
さらに、ファンの間では事実のように広まっているものの、公式には認められていない説もあります。
ここでは、単なるあらすじではなく、『進撃の巨人』を最後まで知っている人でも意外と知らない裏設定やボツ案を紹介します。
※物語の最終盤までの内容に触れています。

圧倒的な世界観と、最後まで予想を裏切る展開が魅力の『進撃の巨人』。
巨人との戦い、仲間との絆、壮大な伏線がつながっていく面白さは必見です。
全34巻完結セットで、物語を最初から最後まで一気に楽しみたい方におすすめです。
0巻では巨人は人間が作り出した生物兵器だった

現在の『進撃の巨人』では、巨人の力は始祖ユミルから始まり、ユミルの民へ受け継がれていきます。
しかし、諫山創氏が19歳のころに描いた読み切り版では、巨人の正体がまったく違いました。
この読み切り版は、後にアニメBlu-ray・DVD第1巻の初回特典「0巻」として収録されています。
0巻の世界では、自然環境の破壊を問題視した「宗教科学団体」が人口を減らすために「人類駆逐計画」を始め、そのための存在として巨人を作り出しました。
つまり、巨人は自然そのものが生み出した存在ではありません。
人間自身が作り出した生物兵器だったのです。
しかも、この巨人たちは自然を守るために作られたため、樹木を壊しません。
そこで生き残った人類は、現在の三重の壁ではなく、巨大な木々を利用して町を守っていました。
さらに、現在の立体機動装置も登場しません。
兵士たちは刀を持ち、自分自身の身体能力を使って巨人と戦います。
現在の『進撃の巨人』と比べると、「人類対巨人」という基本だけを残し、それ以外の世界設定はほぼ別物だったのです。
0巻の巨人には人間へ化ける能力まであった
0巻の巨人には、連載版には存在しない恐ろしい能力もありました。
巨人が取り込んだ人間の姿へ変わり、人間社会へ紛れ込むことができたのです。
そのため、人類にとって巨人は壁の外から襲ってくるだけの存在ではありません。
人間の姿で内部へ入り込む可能性までありました。
また、連載版では巨人の弱点は基本的にうなじですが、読み切り版では個体によって弱点となる場所が違います。
敵が人間へ化けて内部へ潜り込むという発想は、そのまま連載版には採用されませんでした。
しかし、「人間の中に正体を隠した敵がいる」という考え方自体は、アニ、ライナー、ベルトルトへ形を変えて受け継がれたようにも見えます。
もちろん、これは両者が直接つながっていると公式に説明されたわけではありません。
それでも0巻を読んでから本編を見ると、連載版で大きく発展したアイデアの原型を感じることができます。
当初はもっと救いの少ない結末が考えられていた
『進撃の巨人』について有名なのが、「最初はもっと暗い結末になる予定だった」という話です。
これは単なる都市伝説ではありません。
諫山創氏自身が、連載初期に考えていた結末から最終的な形は大きく変わったと語っています。
当初は読者を喜ばせることよりも、強い衝撃を与えることを重視していたそうです。
映画『ミスト』のような救いの少ない作品から影響を受けていたことも、過去のインタビューで語られてきました。
ただし、「登場人物が全員命を落とす予定だった」とまで公式に確定しているわけではありません。
ネット上では「人類全滅エンドだった」と断定されることがありますが、そこまで細かな初期プロットが公開されているわけではないため注意が必要です。
確実に言えるのは、現在よりも読者を突き放すような結末を考えていたということです。
『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』が結末への考え方を変えた
では、なぜ当初の結末から考えが変わったのでしょうか。
理由の一つは、『進撃の巨人』が諫山創氏の予想以上に大きな作品になったことでした。
多くの読者が登場人物へ強く感情移入するようになり、諫山創氏自身も「最初に考えていたラストでは到底ダメだ」と思うようになったと明かしています。
さらに大きな影響を与えた映画が『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』でした。
諫山創氏はこの映画を見て、展開そのものが予想できても、登場人物の感情を丁寧に積み重ねれば新鮮で面白い作品になると感じたそうです。
それまでの諫山創氏は、「読者の予想を裏切ること」に大きな価値を感じていました。
しかし、この映画をきっかけに「予想できないことだけが面白さではない」と考えるようになったのです。
『進撃の巨人』の結末は、最初から完全に固定されていたわけではありません。
作者自身の考え方の変化によって、作品の着地点も変わっていきました。
サシャは9巻前後で物語から退場する予定だった
現在では有名になった裏話ですが、サシャ・ブラウスにはかなり早い段階で物語から退場する案がありました。
担当編集者の川窪慎太郎氏によると、単行本8~9巻ごろのネームでは、サシャは故郷を襲った巨人と戦い、そのまま物語からいなくなる予定だったそうです。
諫山創氏は実際にラフまで描いていました。
しかし川窪氏は、
「ここでサシャがいなくなる必要があるのか」
「この展開にはどんな意味があるのか」
という点を諫山創氏と話し合いました。
その結果、サシャにはまだ役割があると考え、展開が変更されます。
この変更によって、サシャはマーレ編まで登場することになりました。
そして結果的には、ガビ、カヤ、ブラウス一家、ニコロをつなぐ重要な人物になります。
サシャを巡る物語は、「敵だと思っている相手にも家族や大切な人がいる」という作品後半のテーマを強く表すものになりました。
ただし、「サシャを残した時点でガビの物語まで考えていた」と諫山創氏が明言したわけではありません。
後の展開まで最初から計算されていたと断定するのではなく、「変更した設定が後に大きな物語へ発展した」と考えるのがよいでしょう。
リヴァイも最後まで残ることが確定していたわけではない
リヴァイについては、
「人気が高すぎたため、本来の退場予定を編集部が変更させた」
という噂があります。
しかし、この説明は正確ではありません。
川窪慎太郎氏によると、物語の終盤では、現在とは反対にリヴァイが最後まで残らない展開も候補になっていました。
諫山創氏自身も、その展開を選ぶことは可能だと考えていたそうです。
そこで川窪氏と話し合ったのが、
「ここでリヴァイがいなくなることに、物語として意味があるのか」
という点でした。
諫山創氏がその意味を十分に見つけられなかったため、最終的に現在の展開へ変更されています。
つまり、リヴァイが最後まで残った理由を「人気だから」とする公式な説明はありません。
むしろ物語上の意味を考えた結果でした。
仲間を次々と見送り、その選択に意味があったのかを最後まで背負う人物だからこそ、最後に生き残ったとも考えられます。
空を飛ぼうとした夫婦はアルミンの両親だった
王政編では、ジェル・サネスが王政にとって都合の悪い人々を排除してきた過去を語ります。
その中に登場するのが、「空を飛ぼうとした夫婦」です。
本編では名前が示されません。
しかし後の公式資料によって、この二人がアルミン・アルレルトの両親だったことが明らかになりました。
両親は気球のような乗り物を作り、壁の外へ出ようとしていたのです。
つまり、アルミンが壁の外へ強く憧れていたのは、祖父が持っていた本だけが理由ではありません。
両親もまた、壁に閉じ込められた生活から外へ出ようとした人物でした。
アルミンの「外の世界を見たい」という思いは、知らないうちに両親と同じ方向を向いていたことになります。
本編だけではつながらない人物関係が、公式資料で初めて完成した例です。
アッカーマンに「絶対服従する宿主」がいるわけではない
エレンはミカサに対して、アッカーマン一族には「宿主」を守る習性があり、自分の意思とは関係なく従っているという説明をしました。
この言葉から、
「ミカサのエレンへの感情はアッカーマンの血によるもの」
「リヴァイにとっての宿主はエルヴィン」
「ケニーにとっての宿主はウーリ」
という説が広がります。
しかし、諫山創氏が本編外で説明した内容を見ると、それほど単純な設定ではありません。
ミカサ、リヴァイ、ケニーが特定の人物へ強い思いを持っていることについて、アッカーマンの血による強制ではなく、それぞれ本人の性格や選択によるものと説明されています。
つまり「アッカーマンには一人の宿主が設定され、その人には絶対に逆らえない」という公式設定は存在しません。
エレンが語った説明をそのまま世界の真実だと思ってしまうと、ミカサの行動の意味を取り違えてしまいます。
彼女がエレンを大切にしたのは、血によって命令されたからではなく、ミカサ自身が選んだ感情だったということです。
王家とアッカーマン両方の血を持つ人間も存在できる
王家の血とアッカーマン家についても、本編では説明されなかった細かなルールがあります。
『別冊少年マガジン』の「諫山先生へ一問一答」では、
「王家とアッカーマンの間に子どもが生まれた場合、どちらの血が優先されるのか」
という質問がありました。
諫山創氏の回答は、普通に両方が反映されるというものでした。
つまり、王家の血を引きながらアッカーマンでもある人物は、設定上存在できます。
どちらか一方の性質が、もう一方を消してしまうわけではありません。
ただし、
「その人物なら始祖の巨人を自由に使える」
「アッカーマンの力と王家の力を同時に使える」
といったところまでは明かされていません。
ネットでは「王家+アッカーマンなら最強」という説も見られますが、そこから先は公式設定ではなく考察です。
巨人化能力者は巨人の肉体が受けた痛みをそのまま感じない
エレンやライナーたちは、巨人化した状態で腕や顔を大きく損なっても戦い続けます。
では、巨人の腕が傷ついた場合、中にいる本人にも同じ痛みが伝わるのでしょうか。
この疑問についても、「諫山先生へ一問一答」で回答されています。
巨人の肉体が受けたダメージそのものを、能力者が人間の体と同じように痛みとして感じるわけではありません。
一方で、中にいる本人の肉体まで直接ダメージが届けば、当然痛みを感じます。
つまり巨人の体は、「本人の肉体そのものが巨大化した」というより、能力者が接続して動かしている別の肉体に近い存在です。
エレンたちが戦闘中に巨人の腕を犠牲にしたり、自分の巨人体を大胆に使ったりできる理由も、この設定を知ると分かりやすくなります。
立体機動装置はパラディ島の特殊資源があって初めて成立する
立体機動装置は、一見するとワイヤーとガスを組み合わせた機械に見えます。
しかし、普通の技術だけで作られているわけではありません。
動力には、パラディ島で採れる「氷爆石」が大きく関係しています。
氷爆石は温度の変化などによってガスを発生させる特殊な資源で、立体機動装置はその性質を利用して人間を高速で移動させています。
公式スピンオフ『Before the fall』では、現在の立体機動装置が完成するまでの試作品や開発過程も描かれています。
さらに刃には「黒金竹」と呼ばれる特殊な素材が使用されます。
つまり、立体機動装置は設計図だけを手に入れれば世界中の国が同じものを作れる装備とは限りません。
パラディ島に存在する特殊な地下資源や素材があったからこそ成立した技術でもあるのです。
なお、「最初はレバーだけの単純な装置だったものを、連載途中でガスや交換式の刃を後付けした」という説には、十分な公式資料が確認できません。
装置の設定が細かく存在することと、「後から付け足された設定」であることは分けて考える必要があります。
壁の巨人たちは最後に人間へ戻っていた
原作最終話でも明かされなかった大きな謎の一つが、「地鳴らしに使われた壁の巨人は最後にどうなったのか」です。
ジャンやコニーたちが元の姿へ戻る場面は描かれます。
しかし、世界中を進んでいた大量の壁の巨人については描写されませんでした。
この疑問に対する答えが出たのは、原作完結から3年以上が経った2024年です。
『進撃の巨人マガジン15周年号』では、「諫山先生へ一問一答」が復活しました。
そこで諫山創氏は、壁の巨人たちも最終的には元の人間の姿へ戻ったという設定を明かしています。
しかも、その後の出来事まで考えられていました。
巨人に踏みつぶされそうになっていた人々から見ると、突然目の前に現れた裸の人間たちは「自分たちを襲った巨人の正体」です。
そのため、元に戻った人々は激しい報復を受けることになったとされています。
諫山創氏は、余裕があればこの場面も描きたかったと回答しました。
この設定が明らかになったことで、壁の巨人は中身のない巨大な人形ではなく、元になった人間が存在していたことも分かります。
では、その人々は誰だったのでしょうか。
約100年前、どのように集められ、壁を作るための巨人になったのかまでは説明されていません。
完結後になって新たな謎が増えた、非常に『進撃の巨人』らしい裏設定です。
「ループ説」は公式には確定していない
『進撃の巨人』で最も有名な考察の一つが「ループ説」です。
第1話の「いってらっしゃい エレン」や夢の描写、未来の記憶、「二千年後の君へ」と「二千年前の君から」などから、
「物語は何度も繰り返されているのではないか」
という説が長年語られてきました。
さらにアニメでは、エレンの記憶の中に『進撃のスクールカースト』版のミカサとアルミンが一瞬登場します。
この場面については、アニメ制作側が勝手に入れたものではなく、諫山創氏から入れてほしいという希望があったことも明かされています。
そのため、
「別世界の記憶を見ることができるのではないか」
「原作とアニメは別の時間軸なのではないか」
という考察がさらに広がりました。
しかし、「時間が巻き戻って同じ人生を何度も繰り返している」と公式に確定したことはありません。
『進撃の巨人』では「未来の記憶」が過去へ影響するため、通常の物語より時間の流れが複雑です。
そこへ作者自身が意味深な演出を追加しているため、ループしているように見える部分もあります。
それでも現時点では、ループ説は「裏設定」ではなく、公式が答えを完全には固定していない有名な考察として扱うのが正確でしょう。
進撃の巨人の裏設定まとめ

『進撃の巨人』には、本編だけでは知ることのできない設定や、途中で変更された構想が数多く存在します。
特に読み切り版を見ると、巨人が宗教科学団体によって作られた生物兵器だったことや、立体機動装置が存在しなかったことなど、現在とはまったく違う作品から始まっていたことが分かります。
連載開始後も、すべてが最初から完全に固定されていたわけではありません。
サシャには9巻前後で物語から退場する案があり、リヴァイにも終盤で現在とは違う結末が考えられていました。
作品そのものの結末についても、諫山創氏の考え方が変化したことで、初期構想とは違う方向へ進んでいます。
一方、アルミンの両親やアッカーマン一族、巨人化中の感覚、壁の巨人のその後などは、本編外の資料や一問一答によって初めて分かった設定です。
そして、ループ説のように非常に有名でも、公式には確定していないものもあります。
『進撃の巨人』は最初から用意されていた大きな世界設定と、連載しながら変化していったアイデアの両方によって完成した作品です。
その違いを知ってからもう一度本編を見ると、何気ない場面にも別の意味が見えてくるのではないでしょうか。

圧倒的な世界観と、最後まで予想を裏切る展開が魅力の『進撃の巨人』。
巨人との戦い、仲間との絆、壮大な伏線がつながっていく面白さは必見です。
全34巻完結セットで、物語を最初から最後まで一気に楽しみたい方におすすめです。





















