『天空の城ラピュタ』には、映画を見ただけでは分からない裏設定や制作秘話が数多く存在します。
特に謎が多いのが、空に浮かぶ巨大都市「ラピュタ」です。
なぜ高度な科学文明を持ちながら、ラピュタには誰も暮らしていないのでしょうか。
さらにシータとムスカの意外な関係や、ロボット兵の種類、パズーやシータの名前の由来なども関連資料から分かっています。
今回は『天空の城ラピュタ』の知られざる裏設定や制作秘話を紹介します。
※映画の終盤までの内容を含みます。

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ラピュタが無人になった理由は謎の疫病だった

『天空の城ラピュタ』最大の謎といえるのが、
「なぜラピュタには誰も住んでいないのか」
という問題です。
映画では、ラピュタ人が約700年前に天空の城を離れて地上へ降りたことが語られます。
しかし、その詳しい理由まではほとんど説明されません。
徳間書店の関連ムック『ロマンアルバム 天空の城ラピュタ』に収録された「ラピュタメモ」では、ラピュタ人が正体不明の疫病に襲われたという設定が紹介されています。
『ロマンアルバム』は宮﨑駿監督をはじめとするスタッフへのインタビューや制作資料などを収録した公式関連ムックです。
ラピュタ人は高度な科学力と大きな富を持っていました。
しかし、その技術をもってしても疫病を克服できず、天空での暮らしを維持できなくなります。
そこで当時の王はラピュタを捨て、人々とともに地上へ降りる決断をしたとされています。
どれほど科学が発達しても、人間は自然から完全には離れられない。
この設定を知ると、シータが終盤で語る「土から離れては生きられない」という考えにも、さらに重みが感じられます。
シータはラピュタ王家の正統な末裔
シータは、山奥のゴンドアの谷で静かに暮らしていた普通の少女に見えます。
しかし本当の名前は、
「リュシータ・トエル・ウル・ラピュタ」
です。
シータは、かつて天空から世界を支配していたラピュタ王家につながる人物です。
三鷹の森ジブリ美術館の公式ショップでも、シータについて「ラピュタの王家の末裔」と明記されています。
映画ではムスカが、
「ウル」は王。
「トエル」は真。
という意味だと説明しています。
つまりシータの秘密の名前は、ラピュタ王家の正統な血筋であることを示しているのです。
本人はそのことをほとんど知らず、祖母から飛行石といくつかの呪文を受け継いだだけでした。
世界を動かすほどの力を受け継いでいるのに、山奥で普通の少女として育てられたところも興味深い設定です。
ムスカもシータと同じラピュタ王家の一族
シータだけでなく、ムスカにも秘密の名前があります。
それが、
「ロムスカ・パロ・ウル・ラピュタ」
です。
ムスカ自身が映画の中で、シータの一族と自分の一族は、もともと一つの王家だったことを明かします。
つまりシータとムスカは、まったく無関係な二人ではありません。
遠い祖先をたどれば、同じラピュタ王家につながる人物なのです。
シータがラピュタの力を恐れているのに対し、ムスカはその力を再び手に入れようとしています。
同じ王家の血を引く二人が、
「ラピュタを封じようとする人物」
と、
「ラピュタを復活させようとする人物」
として対立する構図になっているのです。
シータの一族には飛行石、ムスカの一族には知識が残された
シータとムスカの家系では、ラピュタから受け継いだものも異なります。
シータの家には、代々伝えられてきた飛行石の首飾りがあります。
さらに祖母から、
「困ったときのおまじない」
として、ラピュタを動かすことのできる古い呪文まで教えられていました。
一方のムスカは飛行石を持っていません。
しかしラピュタについて書かれた古文書を持ち、城の内部やラピュタ文明について詳しく研究しています。
関連資料では、ムスカの古文書にはラピュタの伝承が残されていたものの、飛行石の結晶化技術や呪文までは記されていなかったとされています。
つまり、
シータの一族には「ラピュタを動かす鍵」。
ムスカの一族には「ラピュタに関する知識」。
が別々に残されたことになります。
だからムスカはシータと飛行石を必要としていたのです。
ロボット兵には戦闘用と園丁用が存在する
ラピュタに登場するロボット兵は、すべて同じ目的で作られたわけではありません。
軍の要塞で目覚めたロボット兵は、強力な武器を使ってシータを守ります。
一方、ラピュタの庭園に残されていたロボット兵は、花を墓へ供えたり、鳥や小動物を守ったりしています。
公式ライセンス商品でも、
- 「ロボット兵(戦闘バージョン)」
- 「ロボット兵(園丁バージョン)」
として明確に区別されています。
つまりラピュタ文明では、ロボット技術を兵器だけに使っていたわけではありません。
庭園を管理し、生きものたちを守るためにも使っていたのです。
ラピュタから人間がいなくなった後も、園丁用ロボットは何百年もの間、自分に与えられた仕事を続けています。
強大な兵器と、花を大切にする優しいロボット。
正反対の二つの顔が同じ文明から生まれているところも、『天空の城ラピュタ』の重要なテーマにつながっています。
ラピュタには『ナウシカ』のキツネリスもいる
ラピュタの庭園をよく見ると、小さな動物たちが暮らしています。
その中には『風の谷のナウシカ』で、ナウシカの相棒テトと同じ種類として登場した「キツネリス」もいます。
『金曜ロードショー』でも、『ナウシカ』に登場するキツネリスが『天空の城ラピュタ』にも登場していることが紹介されています。
ラピュタの園丁用ロボットの肩に乗ったり、周囲で自由に暮らしたりしています。
ここから、
「ナウシカとラピュタは同じ世界なのでは?」
という説も生まれています。
ただし、二つの作品が同じ世界を舞台にしているという公式設定が確認されているわけではありません。
「同じキツネリスという生きものが登場する」という事実と、「二つの作品がつながっているのではないか」という考察は分けて考えたほうがよさそうです。
シータの名前は数学の「θ」が由来
「シータ」という少し変わった名前にも由来があります。
宮﨑駿監督が学生時代に数学で習ったギリシャ文字、
「θ(シータ)」
から思いついた名前です。
さらに「パズー」という名前も、『天空の城ラピュタ』制作時に初めて考えられたわけではありません。
宮﨑監督が学生時代に考えていた船乗りの名前から使われています。
つまりパズーとシータという名前は、宮﨑監督の中で『ラピュタ』よりずっと前から存在していたのです。
ちなみに企画段階では、
『少年パズー・飛行石の謎』
というタイトル案も存在しました。
現在の『天空の城ラピュタ』とはかなり印象の違うタイトルです。
ドーラのモデルは宮﨑駿監督の母親
空中海賊を率いる女ボス「ドーラ」。
最初はパズーとシータから飛行石を奪おうとする人物ですが、物語が進むにつれて二人を支える頼もしい存在になっていきます。
そんなドーラのモデルには、宮﨑駿監督自身の母親が関係しています。
宮﨑監督によると、母親には非常に強い精神的な迫力があり、男ばかりの兄弟4人がそろってもかなわなかったそうです。
大勢の男たちをまとめ上げ、本人も誰より行動力があるドーラ。
怖そうに見えて家族への愛情が深いところも含め、宮﨑監督の母親のイメージが重ねられていたのです。
映画の後半では、シータを見たドーラが若いころの自分に似ていると語る場面もあります。
ドーラは単なるコミカルな海賊ではなく、作品を支える重要な女性キャラクターなのです。
「ラピュタ」の名前は『ガリバー旅行記』から取られている
空に浮かぶ島「ラピュタ」という名前には、元になった作品があります。
ジョナサン・スウィフトによる『ガリバー旅行記』です。
『ガリバー旅行記』にも、空中を移動する島「ラピュタ」が登場します。
『金曜ロードショー』による作品紹介でも、『ガリバー旅行記』に登場する空中の浮島ラピュタに触れられています。
ただし、『天空の城ラピュタ』が『ガリバー旅行記』のストーリーを映画化した作品という意味ではありません。
名前と「空に浮かぶ島」という発想を借りながら、飛行石やロボット兵、パズーとシータの冒険などは宮﨑監督独自の物語として作られています。
鉱山町の風景にはイギリス・ウェールズ地方が使われている
パズーが暮らす鉱山町には、石造りの建物や鉱山、蒸気機関などが登場します。
この風景を作るうえで大きな参考になったのが、イギリスのウェールズ地方です。
スタジオジブリ公式Q&Aでも、『天空の城ラピュタ』について「大いに参考にした場所」としてウェールズ地方が挙げられています。
そのため、
「ラピュタの舞台はウェールズ」
と考えるのは少し違います。
正確には、パズーたちが暮らす地上世界を作る際に、ウェールズの鉱山町や風景が大きな参考にされたということです。
『ハウルの動く城』などと同じように、宮﨑監督は実在するヨーロッパの風景を参考にしながら、そこへ架空の機械や建物を加えて独自の世界を作っています。
『天空の城ラピュタ』はジブリ設立後最初の長編映画
『天空の城ラピュタ』は、スタジオジブリの歴史でも非常に重要な作品です。
『風の谷のナウシカ』は現在ジブリを代表する作品として扱われていますが、公開された1984年にはスタジオジブリという会社はまだ存在していませんでした。
スタジオジブリがスタジオを開いたのは1985年6月。
そして翌1986年8月2日に『天空の城ラピュタ』が公開されています。
つまり『天空の城ラピュタ』は「スタジオジブリ設立後に制作・公開された最初の長編映画」なのです。
宮﨑駿監督が原作・脚本・監督を担当し、高畑勲さんがプロデューサーを務めました。
現在まで続くスタジオジブリの長編映画の歴史は、『天空の城ラピュタ』から本格的に始まったともいえるのです。
まとめ:ラピュタの本当の怖さは科学力だけではない

『天空の城ラピュタ』には、映画だけでは詳しく説明されない設定が数多くあります。
関連資料では、天空のラピュタが無人になった背景に正体不明の疫病があったとされています。
シータとムスカは、どちらもかつて世界を支配したラピュタ王家につながる人物です。
そしてラピュタには、人の命を奪うほど強大な兵器がある一方で、花や鳥を守り続ける園丁用ロボットも残されています。
つまりラピュタの技術そのものが悪かったわけではありません。
同じ技術でも、使い方によって世界を支配する力にもなれば、生きものを守る力にもなります。
どれほど高度な文明を築いても、人間は土や自然から完全に離れて生きることはできない。
ラピュタの裏設定を知ると、シータが物語の最後に語った言葉が、作品全体を表していることがより分かりやすくなるのではないでしょうか。

何度観てもワクワクする冒険と感動が詰まった、スタジオジブリの名作『天空の城ラピュタ』。
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