『みどりのマキバオー』は、つの丸氏による競馬漫画です。
小さな体のミドリマキバオーが、カスケードをはじめとする強敵たちと戦う物語ですが、作品の裏側を調べると意外な事実がいくつも見つかります。
実在する競走馬を思わせるキャラクターも多いため、「この馬のモデルは○○」という説も数多く広まりました。
ところが、つの丸氏本人によれば、実際の作り方はそれほど単純ではなかったようです。
さらに『あしたのジョー』の影響、当時の『週刊少年ジャンプ』を使った内輪ネタ、アニメだけで変更された設定なども隠されています。
今回は、『みどりのマキバオー』を読んだ人ほど楽しめる15の裏設定を紹介します。

小さな体で大きなライバルに立ち向かう、熱い競馬漫画『みどりのマキバオー』を一気に楽しめる全16巻セット。
笑いあり、友情あり、手に汗握るレースありの物語は、最後まで夢中で読めるおもしろさです。
名勝負の数々をまとめて楽しみたい方におすすめの全巻セットです。
『あしたのジョー』を競馬でやりたかった

『みどりのマキバオー』の熱いライバル関係には、明確なルーツがありました。
つの丸氏は後年、「競馬で『あしたのジョー』をやりたかった」という趣旨の発言をしています。
そのため、マキバオーとカスケードの関係には、矢吹丈と力石徹を思わせる部分があります。
最初は大きな実力差がありながら、主人公が必死に追いかけ、やがて相手からも認められる存在になっていくところもよく似ています。
つまり『みどりのマキバオー』は、単に競馬を少年漫画にした作品ではありません。
作者が大好きだった『あしたのジョー』の熱さを、競馬という世界で表現しようとした作品でもあったのです。
チュウ兵衛の運命には「力石の8巻」が影響していた
チュウ兵衛親分は、マキバオーの相棒であり、師匠のような存在でもあります。
そんなチュウ兵衛が日本ダービー後に亡くなる展開には、意外な理由がありました。
つの丸氏は『あしたのジョー』が非常に好きで、単行本8巻で力石徹が亡くなることが強く頭に残っていたそうです。
そのため、「8巻くらいになると重要な人物がいなくならなければならない」という感覚を持ってしまっていたと振り返っています。
それがチュウ兵衛の展開にも影響しました。
さらに前作『モンモンモン』も全8巻で、最後には大きな別れが描かれています。
つの丸氏は、チュウ兵衛で「力石的なこと」を描いたことで、その感覚から解放されたとも語っています。
日本ダービーの名場面には、少年漫画史に残る『あしたのジョー』への強い思いが隠されていたのです。
連載開始時のつの丸氏は競馬に詳しくなかった
『みどりのマキバオー』には、競走馬の育成やレースの駆け引きなど、かなり細かな競馬描写が登場します。
そのため、最初からつの丸氏がかなりの競馬通だったと思っている人も多いでしょう。
ところが連載企画が始まったころは、G1で馬券を買う程度だったそうです。
本人も、競馬についてまったく知らないわけではないものの、深くのめり込んでいたわけではなかったと話しています。
しかも最初から本格的な競馬漫画を作る予定でもありませんでした。
連載当初はギャグ漫画として始め、読者の反応を見ながら方向を変えられるようにしていたのです。
後半の本格的な競馬漫画からは想像しにくい出発点だったと言えるでしょう。
競馬を知らなかったからこそ自由なレースが生まれた
競馬に詳しくなかったことは、弱点ばかりではありませんでした。
つの丸氏は競馬の常識に縛られていなかったため、現実ではかなり珍しいローテーションや大胆なレース展開を描くことができました。
騎手との対談でも、障害競走をその後の大きなレースへのステップとして描いたことなどが話題になっています。
競馬を知り尽くした人なら、「現実には難しい」と考えて最初から外してしまう展開もあります。
しかし当時のつの丸氏には、その固定観念がありませんでした。
後から知識を増やしながらも、少年漫画としてのおもしろさを優先したことが、『マキバオー』独特の世界につながったのでしょう。
「マキバオー=タマモクロス」は公式設定ではない
マキバオーのモデルとして、特によく名前が挙げられるのがタマモクロスです。
芦毛で小柄な体格、決して恵まれた環境から出てきたわけではない点など、確かに似た部分があります。
そのため「マキバオーのモデルはタマモクロス」と紹介されることもあります。
しかし、つの丸氏は後年、ほとんどのキャラクターには特定のモデル馬はいないと説明しました。
つまり、タマモクロスとの共通点が多いことと、「タマモクロスをそのままマキバオーにした」ということは別です。
有名なモデル馬説ではありますが、作者公認の一対一のモデル関係ではない点には注意が必要です。
キャラクターは複数の名馬を混ぜて作られていた
では、なぜ実在馬と似たキャラクターがこれほど多いのでしょうか。
その答えを、つの丸氏自身が明かしています。
実在した競走馬のさまざまなエピソードを集め、それらを組み合わせながらキャラクターを作っていたのです。
そのため、ある馬とは外見が似ているのに、血統を見ると別の馬を思わせ、さらにレースの出来事はまた違う実在馬に似ていることがあります。
ネット上のモデル馬説についても、一頭だけを正解にする考え方では『マキバオー』の作り方を説明できません。
実在馬の魅力的な部分を組み合わせ、漫画として新しい競走馬を作る。
それが『みどりのマキバオー』のキャラクター作りだったようです。
カスケードはフジキセキの影響が特に強かった

特定のモデル馬を基本的に決めなかったつの丸氏ですが、カスケードについては少し事情が違います。
作者自身が、フジキセキから強い影響を受けたことを明かしています。
フジキセキはデビューから無敗を続け、どこまで強くなるのかわからないまま競走生活を終えた名馬です。
カスケードにも、底が見えないほどの強さと、ほかの馬とは違う特別な存在感があります。
ただし、カスケードのすべてがフジキセキそのままというわけではありません。
ここにも別の競走馬や漫画作品の要素が混ぜられていると考えた方が自然です。
カスケードには力石徹の姿も重ねられていた
カスケードを考えるうえで、実在馬だけを見ていると重要な要素を見落としてしまいます。
カスケードには、『あしたのジョー』の力石徹を思わせる部分もあります。
圧倒的な実力を持つライバルでありながら、主人公を認め、主人公にとって越えなければならない大きな壁になる存在です。
つの丸氏が「競馬で『あしたのジョー』をやりたかった」と語っていることを考えると、マキバオーとカスケードがジョーと力石を思わせる関係になったのも偶然ではないでしょう。
実在馬のフジキセキだけでなく、漫画史を代表するライバルの力石徹。
カスケードは、さまざまな魅力を組み合わせて作られたキャラクターだったのです。
カスケードのマリー病はダンシングブレーヴが元ネタ?
カスケードに関する有名な考察の一つが、ダンシングブレーヴとの関係です。
カスケードは物語後半でマリー病を患います。
そして実在した世界的名馬ダンシングブレーヴも、後に同じ病気を患いました。
そのため、カスケードの病気設定はダンシングブレーヴを参考にしたのではないかと考えられています。
共通点が非常にはっきりしているため説得力のある説ですが、注意したいところもあります。
つの丸氏本人が「カスケードのマリー病はダンシングブレーヴが元ネタ」と明言した資料は確認できません。
したがって、公式設定ではなく有力な考察として見るのがよいでしょう。
カスケードとワクチンは名前の時点でライバルだった?
カスケードとアマゴワクチンには、名前にも面白い関係があります。
「Cascade」は、実際に存在したコンピューターウイルスの名前として知られています。
そしてウイルスに対抗するものといえば「ワクチン」です。
つまり、
カスケード=ウイルス
アマゴワクチン=ウイルスに対抗する存在
という関係が成立します。
作中でもアマゴワクチンはカスケードに挑み続ける重要なライバルです。
ただし、これについてつの丸氏本人が命名理由として明言した資料は確認できていません。
アマゴワクチンとモーリアローには戦国時代が隠れている
アマゴワクチンの「アマゴ」から連想されるのが、戦国大名の尼子氏です。
一方、モーリアローの「モーリ」は毛利氏、「アロー」は英語で矢を意味します。
毛利元就といえば「三本の矢」の逸話で知られています。
さらにモーリアローの母親は「ボウアンドアロー」という名前です。
Bow and Arrowは「弓と矢」を意味します。
尼子氏と毛利氏は、中国地方の支配をめぐって争った歴史上のライバルでした。
つまりアマゴワクチンとモーリアローには、競馬とはまったく関係のない戦国時代の対立まで隠されていると考えられます。
『マキバオー』の馬名を調べると、競馬以外の知識まで大量に使われていることがわかります。
ベアナックルの周囲は龍造寺一族で固められていた
型破りな強豪馬ベアナックルにも、戦国時代のネタが隠されています。
ベアナックルの馬主は龍造寺信隆。
所属は鍋島厩舎で、生産者側には百武、騎手には江里口という名字が登場します。
これらは戦国時代の肥前で勢力を持った龍造寺氏と、その周辺の人物を思わせる名前です。
龍造寺隆信は「肥前の熊」と呼ばれた武将として知られています。
そしてベアナックルにも「肥前の熊」というイメージが重ねられています。
ベアナックル一頭だけに名前を付けるのではなく、馬主や厩舎など周辺人物まで一つの歴史ネタで統一していたわけです。
細かい名前を読み飛ばしていると気づきにくい仕掛けです。
ひげ牧場のオーナーはジャンプ編集長がモデルだった
作中でも特に印象の悪い存在として登場するひげ牧場。
実は、この牧場には『週刊少年ジャンプ』編集部の内輪ネタが入っていました。
つの丸氏自身が、ひげ牧場は当時の編集長をモデルにしたと明かしています。
さらに、つの丸氏は基本的に「悪役を作るのがあまり好きではない」と語っています。
モーリアローにも悪い行動をする理由を持たせており、単純な悪者にはしていません。
ところが、純粋な悪役の例としてつの丸氏自身が挙げたのが、ひげ牧場でした。
モデルが当時の編集長だったため、「そういうキャラクターでもいいかな」と考えたそうです。
作者と編集部の距離が近かった『週刊少年ジャンプ』らしいブラックジョークです。
ヒゲドラゴンたちはジャンプ黄金期の人気作品?
ひげ牧場には、さらに大胆な内輪ネタが隠されていると考えられています。
過去の名馬として登場するのが、
ヒゲドラゴン
ヒゲユウユウ
ヒゲスラム
といった馬です。
名前を見ると、それぞれ『DRAGON BALL』『幽☆遊☆白書』『SLAM DUNK』を思わせます。
いずれも当時の『週刊少年ジャンプ』を代表する大ヒット作品です。
さらに作中では、こうした名馬がいなくなった後、ひげ牧場が苦しい状態になります。
そのためファンの間では、「ジャンプ黄金期を支えた人気作品が次々と終了した後の編集部を表しているのではないか」と考察されています。
ひげ牧場そのものが当時の編集長をモデルにしていることは、つの丸氏本人が認めています。
ただし、ヒゲドラゴンたちを使ってジャンプの部数低下まで表現したのかについては、作者が明言したことは確認できません。
公式設定とファン考察を分けて楽しみたい裏ネタです。
アニメ化でつの丸氏が希望したのはマキバオーの声
テレビアニメ版『みどりのマキバオー』では、原作からさまざまな変更が行われています。
しかし、つの丸氏はアニメを漫画とは別の作品として考え、制作側にかなり自由に任せていたと語っています。
その中で作者側から希望したこととして知られているのが、マキバオー役への犬山犬子氏、現在の犬山イヌコ氏の起用です。
マキバオーの独特な声は、作品を象徴するものになりました。
またアニメでは、原作で亡くなるチュウ兵衛がその後も生き続けるという大きな変更もあります。
それでもつの丸氏は、漫画とは別の作品だからと受け入れていました。
原作の重要な展開まで変えることを認めながら、マキバオーの「声」には希望を出したという点に、作者がキャラクターをどう考えていたのかが表れているのかもしれません。
みどりのマキバオーの裏設定まとめ
『みどりのマキバオー』には、競馬漫画という枠だけでは説明できない大量の元ネタが隠されています。
特に大きな影響を与えていたのが『あしたのジョー』でした。
マキバオーとカスケードの関係だけでなく、チュウ兵衛の運命にまで力石徹の存在が影響しています。
一方、実在馬については「マキバオー=タマモクロス」「アマゴワクチン=ナリタブライアン」といった単純な一対一のモデル関係ではありません。
つの丸氏は、複数の競走馬から魅力的なエピソードを集め、それを組み合わせてキャラクターを作っていました。
さらに馬名を見ると、尼子氏や毛利氏、龍造寺氏といった戦国時代の人物まで登場します。
ひげ牧場には当時の『週刊少年ジャンプ』編集部を思わせる仕掛けまでありました。
ギャグ漫画のような見た目とは反対に、競馬、漫画、歴史、作者自身の体験まで細かく組み込まれていることが、『みどりのマキバオー』のおもしろさの一つです。
知ってから読み返すと、カスケードやチュウ兵衛はもちろん、一見すると何気ない馬名まで違って見えてくるのではないでしょうか。

小さな体で大きなライバルに立ち向かう、熱い競馬漫画『みどりのマキバオー』を一気に楽しめる全16巻セット。
笑いあり、友情あり、手に汗握るレースありの物語は、最後まで夢中で読めるおもしろさです。
名勝負の数々をまとめて楽しみたい方におすすめの全巻セットです。





















