『ワンパンマン』は、どんな強敵でも一撃で倒してしまうサイタマを主人公にした人気作品です。
しかし、作品が生まれた経緯やサイタマの設定には、アニメや漫画を普通に追っているだけでは気付きにくい裏話が数多くあります。
ONE氏が個人で公開していたWEB漫画から始まり、村田雄介氏によるリメイク版、さらにテレビアニメへと広がっていったため、それぞれの段階で新しい設定や制作秘話も生まれました。
今回は、作者インタビューや公式資料、本編外のエピソードなどから、『ワンパンマン』の知られざる裏設定を紹介します。
『ワンパンマン』は漫画制作ソフトの練習として始まった

現在では世界的に知られる『ワンパンマン』ですが、最初から長期連載を目指して作られた作品ではありません。
ONE氏は2012年のインタビューで、パソコン用漫画制作ソフト「ComicStudio」の練習として描き始め、一話完結のつもりで公開したと明かしています。
ところが、公開すると予想以上の反響が集まりました。
続編を求めるコメントが増えたことで第2話、第3話と描き続け、第30話ごろには1回の更新に約1000件ものコメントが付くほどの人気になったそうです。
さらにONE氏は、反響を受けて「最終話までのプロット」を作り、それに沿って物語を進めているとも語っていました。
つまり『ワンパンマン』には、人気が出てから何となく続きを考えたのではなく、かなり早い段階で物語の終着点が用意されていたことになります。
サイタマは「最終回の主人公を第1話に出す」発想から生まれた
少年漫画では、主人公が強敵との戦いを経験しながら成長し、物語の終盤で最強クラスへ到達する展開がよくあります。
ONE氏は、その流れを最初から逆にしてしまいました。
作者インタビューでは、「第1話が最終話のような状態」を作り、普通の漫画なら最終回付近で到達するほど強い主人公を最初から登場させたかったと説明しています。
その結果生まれたのが、すでに強くなりすぎてしまったサイタマでした。
そのため『ワンパンマン』では、「主人公が強くなれるのか」ではなく、「すでに最強になった人物が何を求めて生きるのか」が物語の大きな特徴になっています。
村田雄介氏の方からONE氏に声をかけていた
村田雄介氏によるリメイク版は、出版社がONE氏に作画担当者を紹介して始まったという単純な流れではありません。
インタビューによると、村田氏は以前からONE氏のWEB版『ワンパンマン』を読んでおり、自分からONE氏に連絡して共同制作を持ちかけています。
ONE氏は村田氏の作品のファンだったため、この申し出に大きく驚いたそうです。
その後、両氏は読み切り作品などで一緒に制作し、『ワンパンマン』を村田氏の作画で展開する企画へと進みました。
2012年6月には「となりのヤングジャンプ」の新連載第1弾としてリメイク版の連載が始まっています。
有名漫画家がWEB漫画へ目を付け、自ら原作者へ声をかけたことから現在のリメイク版が生まれたという、かなり珍しい経緯です。
サイタマの黄色いスーツには本編外の誕生秘話がある
サイタマの黄色いスーツは、一見すると少し地味なヒーロー衣装です。
しかし、このスーツにも公式の誕生エピソードがあります。
コミックス10巻のオリジナルアニメDVDには、ONE氏原案による「ロード・トゥ・ヒーロー」が収録されました。
そこで描かれたのは、まだ現在のスーツを持っていなかったころのサイタマです。
当時のサイタマはジャージ姿で活動しており、傷んだ服を近所の仕立て屋に直してもらっていました。
店主はサイタマのヒーロー活動を応援しており、店を閉める前の最後の一着として黄色いヒーロースーツを仕立てます。
ジェノスからもっと性能の良いスーツを勧められてもサイタマが使い続けているのは、あの衣装が単なる服ではなく、自分を応援してくれた人物から受け取った大切な品だからです。
ヒーロー協会が生まれた原因は無名時代のサイタマだった
物語の序盤で、就職活動中だったサイタマはカニランテに襲われていたアゴの割れた少年を助けます。
一方、ヒーロー協会は大富豪アゴーニが設立した組織です。
アゴーニが協会を作った理由は、孫が怪人に襲われた際に「通りすがりの男性」に助けられたからでした。
作中の時期や特徴をつなげると、その孫がアゴの割れた少年で、助けた男性がサイタマだと分かります。
つまりサイタマは、本人が知らないところでヒーロー協会誕生のきっかけを作っていました。
それにもかかわらず、後にその協会の試験を受けるとC級からスタートしています。
世界のヒーロー制度を生み出す原因になった人物が、その組織から最低クラスの評価を受けるという皮肉な構造になっているのです。
S級ヒーローは最初から存在したわけではない
現在のヒーロー協会ではS級が最高ランクとして扱われています。
しかし、協会設立当初からS級まで用意されていたわけではありません。
当初はC級、B級、A級という仕組みでヒーローを評価していました。
ところが、通常の評価では順位が低くても、災害レベル「鬼」に単独で対抗できるほど突出した人物がいることが分かります。
そこで規格外の戦力をまとめるため、新たにS級が作られました。
つまりS級とは、単純に「A級より一つ上」というだけではなく、それまでの評価方法では測れない人物を拾い上げるために生まれた特別枠だったのです。
ボロスはONE氏の指摘で村田雄介氏が描き直していた

宇宙から現れたボロスは、サイタマを相手にしても最後まで強敵らしい存在感を失わないキャラクターです。
実は、その見せ方にはONE氏から村田雄介氏への細かな指摘がありました。
村田氏はインタビューで、ボロスとの戦いをできるだけ派手に描こうとした結果、途中のボロスが少しコミカルに見えてしまった部分があったと振り返っています。
そこでONE氏から、ボロスが支持される理由の一つはサイタマを相手にしても威厳を保っていることだと指摘されたそうです。
村田氏はその言葉を受け、該当部分を描き直しました。
村田版の圧倒的な画力だけで完成した場面ではなく、キャラクターの見せ方についてONE氏と細かく相談しながら作られていたことが分かります。
「ボロスとガロウはどちらが強い?」にONE氏が答えていた

『ワンパンマン』で長く議論されてきたのが、ボロスとガロウのどちらが強いのかという問題です。
当時のニコニコ生放送を記録したファンサイトには、ONE氏がこの質問について語った内容が残されています。
ONE氏は、以前ならボロスの方が強かったものの、成長したガロウなら良い勝負になるという趣旨で回答していました。
さらに、パンチやキックを見切る能力を考えると、接近戦ではガロウの方が有利かもしれないとも話しています。
ただし、どちらが必ず勝つのかまで断定したわけではありません。
そのためネット上で見かける「作者公認でガロウの方が上」という言い方は少し強すぎます。
作者発言に近い形で整理するなら、「ほぼ互角で、接近戦ではガロウが有利かもしれない」という程度に考えるのがよさそうです。
アニメ第1期の高評価な作画はスタッフの人脈にも支えられていた
テレビアニメ第1期はマッドハウスが制作し、夏目真悟氏が監督を務めました。
特に評価されたのが、非常に動きの多いアクションシーンです。
夏目氏は海外インタビューで、アニメーターの世界ではスタジオが違っても互いに知り合いであり、過去の仕事を通じて仲間になっていくと説明しています。
『ワンパンマン』では、夏目氏が以前に関わった『スペース☆ダンディ』のスタッフが多く集まったそうです。
別のインタビューでも、優秀なアニメーターを集める際にはプロデューサーの助力に加え、夏目氏自身が過去に一緒に働いた仲間へ声をかけていたと語っています。
そのため第1期の映像は、単純に「マッドハウスだからすごかった」というより、作品のために集まったスタッフのつながりによって実現した部分も大きかったと考えられます。
サイタマの「リミッター解除」は作者が明かした最終回答ではない
サイタマがなぜ異常なほど強いのかは、『ワンパンマン』最大級の謎です。
作中ではジーナス博士が、生物には成長しすぎないよう限界を設ける「リミッター」があり、サイタマはそれを外したのではないかと考えています。
コミックス18巻にも「リミッター」という題名のエピソードが収録されています。
ただし、ここで注意したいのは、これはジーナス博士が出した説明だという点です。
ONE氏自身が「サイタマの力の正体はリミッター解除で確定」と公式に答えたわけではありません。
そのためファンの間では、「神」と呼ばれる存在との関係や、サイタマ自身に別の秘密があるのではないかという考察も続いています。
村田雄介氏の漫画版では「神」に関する描写がWEB版より大きく広がっていますが、「神がサイタマに力を与えた」といった関係は確認されていません。
現時点では、リミッター説は作中で示された最も有力な説明の一つではあるものの、サイタマの強さの最終回答と断定しない方がよいでしょう。
ワンパンマンの裏設定まとめ
『ワンパンマン』は、最初から出版社で長期連載するために作られた作品ではありません。
ONE氏がComicStudioの練習として制作した一話完結のWEB漫画が読者の反響によって続き、村田雄介氏との出会いを経て大規模な作品へ成長していきました。
さらに、最終話までのプロット、サイタマのスーツ、ボロスの描き直し、アニメスタッフの集まり方など、本編の外側にも作品を楽しめる話が数多く残されています。
そして最大の謎であるサイタマの強さについては、今も完全な答えが示されたとは言い切れません。
「最強になった後から物語を始める」というONE氏の発想そのものが、『ワンパンマン』最大の裏設定なのかもしれません。





















