1977年から1979年まで放送された『タイムボカンシリーズ ヤッターマン』は、全108話が制作されたタイムボカンシリーズ第2作です。
ヤッターマンとドロンボー一味の戦いを描いた作品ですが、実は本編だけを見ていても気づきにくい設定や制作秘話がたくさんあります。
声優のアドリブから生まれた名セリフや、長年信じられてきたドロンジョのモデル説、最終回で明らかになったドクロベエの意外な正体まで存在します。
今回は『ヤッターマン』を知っている人ほど楽しめる裏設定や制作秘話を紹介します。

77年から足掛け3年にわたって放映されたタツノコ・ギャグ・アニメの金字塔。
『タイムボカン』に続くシリーズ第2弾は、シリーズ最高人気を誇る大ヒットとなりました。
ドクロストーンの正体はドクロベエ自身だった

物語を通してドロンボー一味が探していたのが「ドクロストーン」です。
ドクロベエは、ドクロストーンを集めれば巨大な黄金のありかが分かるとして、ドロンジョたちに世界中を探させていました。
ところが最終回で、とんでもない事実が明らかになります。
ドクロストーンは宝の地図ではなく、地球上にバラバラになって散らばったドクロベエ自身の体だったのです。
つまり108話近く続いた争奪戦そのものが、ドクロベエが自分の体を取り戻すために仕組んだものでした。
タツノコプロの作品紹介でも、物語が「黄金のありかを示すといわれるドクロストーン」を巡る争奪戦として始まったことが確認できます。
ドクロベエは地球の生き物ではなかった
謎の存在としてドロンボー一味へ命令を出していたドクロベエですが、正体は地球人ではありません。
最終回では宇宙から来た存在だったことが明かされます。
それまでドクロベエは巨大なドクロのような姿で登場し、遠くからドロンボーに命令を送っていました。
そのため、妖怪のような存在にも見えます。
しかし実際には宇宙にルーツを持つ存在だったわけです。
さらに、自分の体を集める目的を最後までドロンボーに教えていなかったところにも、ドクロベエらしい意地悪さがあります。
大金塊の話そのものがドロンボーを働かせるためだった
ドロンボー一味が危険な旅を続けた最大の理由は、ドクロストーンを集めれば大金持ちになれると信じていたからです。
ところが、ドクロストーンがドクロベエ自身の体だった以上、ドロンボーが期待していた黄金探しとはまったく別の話でした。
つまりドロンジョ、ボヤッキー、トンズラーは、ドクロベエの事情に付き合わされていたことになります。
毎回インチキ商売までしてメカの資金を作り、ヤッターマンと戦い続けたのに、根本の目的から利用されていたわけです。
ギャグ作品らしい結末ですが、冷静に考えるとかなりひどい話でもあります。
解散した3人の道は再び一本につながっていた
最終回ではドクロベエとの関係が終わり、ドロンボー一味も解散することになります。
ドロンジョ、ボヤッキー、トンズラーは三叉路で別れ、それぞれ違う方向へ歩き始めます。
一見すると、長く一緒に行動してきた3人が本当に別々の人生へ進む切ない場面です。
ところが、画面を見ると三方向に分かれた道は、その先でもう一度一本につながっています。
つまり「別れたつもりでも、いつかまた一緒になる」ことを思わせる演出になっています。
セリフでは説明せず、道路だけで3人の関係を表した『ヤッターマン』らしい最終回でした。
ドロンボーは前作の三悪と同じ人物のように扱われていた
『ヤッターマン』は、1975年に始まった『タイムボカン』に続くシリーズ第2作です。
前作にも、マージョ、グロッキー、ワルサーという3人組の悪役が登場しました。
そして初期のシリーズでは、この3人が名前や姿を変えてドロンジョ、ボヤッキー、トンズラーになったように受け取れる演出が存在します。
声を担当したのも、小原乃梨子氏、八奈見乗児氏、たてかべ和也氏という同じ3人でした。
つまりシリーズが始まった当初は、「作品が変わっても三悪は同じ3人」という感覚がかなり強かったのです。
現在のシリーズ作品だけを見ていると分かりにくい、初期ならではのつながりです。
後年になると歴代の三悪は別人になっていった
面白いことに、シリーズが長く続くと三悪の扱いも変わっていきます。
初期には同じ人物が名前を変えて登場しているような描写があった一方、後年の作品では歴代の三悪が別々のキャラクターとして同時に存在するようになりました。
1990年代のOVA『タイムボカン王道復古』では、過去のシリーズに登場した三悪たちが一堂に集まります。
そのため、現在ではマージョ一味とドロンボー一味を同一人物と考えるより、それぞれ別の3人組として楽しむ方が自然です。
長期シリーズになったことで、初期のゆるいつながりが少しずつ整理されていった例といえます。
「ポチッとな」は台本になかったアドリブだった
ボヤッキーといえば、ボタンを押すときの「ポチッとな」が有名です。
しかし、この言葉は最初から完成したセリフとして考えられていたわけではありません。
脚本家の小山高生氏によると、ボヤッキー役の八奈見乗児氏がアドリブで生み出した言葉でした。
第3話の台本には「ボチョっとな」と書かれていたものの、八奈見氏が「ポチッとな」と言い換えたとされています。
スタジオでも非常に受け、そのままボヤッキーを代表する言葉になりました。
現在ではボタンを押す行為を「ポチる」と表現することがありますが、それほど日本人に浸透したセリフになったのです。
「ポチッとな」は3話かけて完成した
さらに面白いのは、「ポチッとな」が一度のアドリブで突然完成したわけではないことです。
小山高生氏によれば、『ヤッターマン』第1話では「ポチッ」、第2話では「ポチッと」、そして第3話で「ポチッとな」へ変化したそうです。
しかも初期の台本には、基本的にスイッチやボタンを押すことしか書かれていなかったといいます。
八奈見氏がアフレコを重ねる中で、少しずつ語感を変えていったわけです。
今では最初から決まっていた決めゼリフのように思えますが、実際には声優の演技から成長した言葉でした。
台本をそのまま使わないことが『ヤッターマン』の魅力だった
『ヤッターマン』では、声優だけでなく制作スタッフもかなり自由に作品を作っていました。
メカニックデザインを担当した大河原邦男氏によると、文芸部が作ったシナリオを絵コンテの段階で大きく変えることもあったそうです。
さらにアフレコでは、声優陣がアドリブを加えていました。
大河原氏は、シナリオのまま作っていたら、あれほど面白いアニメにはならなかったという趣旨の話をしています。
つまり『ヤッターマン』独特の予測できないギャグは、脚本家だけで作られていたのではありません。
絵コンテ、作画、声優など、制作現場全体の遊び心によって生まれていました。
ヤッターメカを全部大河原邦男氏が作ったわけではない
『機動戦士ガンダム』でも知られる大河原邦男氏は、『ヤッターマン』でも数多くのメカをデザインしています。
そのため、ヤッターワンを含めたすべてのメカを大河原氏がデザインしたと思われることがあります。
しかし大河原氏本人によれば、メインメカは中村光毅氏が担当していました。
大河原氏が担当したのは、ヤッターワンから出てくるビックリドッキリメカや、ドロンボー側のメカ、おしおき用のメカなどです。
毎回違うメカが登場するため、そのデザイン量は非常に多かったそうです。
『ヤッターマン』のメカ世界は、一人のデザイナーだけで作られたものではありませんでした。
ドロンジョのモデルはミレーヌ・ドモンジョではなかった
ドロンジョには長年、有名な都市伝説があります。
フランスの女優ミレーヌ・ドモンジョが名前やデザインのモデルではないか、という説です。
「ドモンジョ」と「ドロンジョ」という名前もよく似ているため、非常にもっともらしい話として広まりました。
ところがキャラクターデザインを担当した天野喜孝氏は、2025年のインタビューでこの説を明確に否定しています。
天野氏は、ドロンジョを含めたキャラクターには特定のモデルはいなかったと話し、ミレーヌ・ドモンジョ説についても「違います」と答えています。
長年広まった説ですが、デザインした本人によって否定された都市伝説なのです。
ドロンジョのマスクには『バットマン』の影響があった
ミレーヌ・ドモンジョはモデルではありませんでしたが、ドロンジョのデザインにまったく元ネタがないわけではありません。
天野喜孝氏は、ドロンジョのマスクに『バットマン』の要素を取り入れたと明かしています。
天野氏は当時から海外のアニメやアメリカンコミックなどにも興味を持っていました。
ドロンジョの黒いマスクやヒーローのような派手な衣装には、そうした文化の影響が混ざっています。
悪役でありながら、どこかヒーローのように格好いいデザインなのも納得できます。
ドロンジョには天野喜孝氏の理想の女性像が入っていた
特定の女優がモデルではない一方、ドロンジョには天野喜孝氏自身の好みが少し反映されていたようです。
天野氏はデザイン当時、年上の女性に憧れていたと話しています。
そのため、ドロンジョには自分の理想の女性像が表れていたかもしれないと振り返っています。
ドロンジョは単なる怖い悪役ではありません。
強気で大人っぽく、色気がありながら、ボヤッキーやトンズラーと一緒に失敗を繰り返す親しみやすさもあります。
特定の実在人物を写したのではなく、デザイナーの中にあった「格好いい大人の女性」が形になったキャラクターだったのです。
ガンちゃんとアイちゃんは見た目よりずっと幼い
ヤッターマン1号のガンちゃんと2号のアイちゃんは、大人顔負けの活躍をしています。
世界中へ出かけ、巨大メカを扱い、ドロンボー一味とも互角に戦います。
しかし設定上、ガンちゃんは13歳、アイちゃんは12歳です。
つまり2人ともまだ中学生ほどの年齢になります。
とてもその年齢には見えない行動力と技術力ですが、『ヤッターマン』ではそれが当たり前のように描かれています。
作品を大人になって見直すと、「この2人はこんなに若かったのか」と驚きやすい設定です。
ボヤッキーには故郷で待っている女性がいた
「全国の女子高生のみなさーん!」で知られるボヤッキーですが、実は故郷には特別な女性がいます。
その女性が「おハナちゃん」です。
ボヤッキーの故郷は福島県の会津若松で、もともとは立派なそば職人になるつもりで故郷を出ていました。
2008年版『ヤッターマン』第34話では、おハナちゃんからボヤッキーへ手紙が届きます。
さらに、おハナちゃんはボヤッキーが立派なそば職人になって迎えに来ると信じて待っていることも描かれました。
ドロンボーとしてインチキ商売や悪事を繰り返している姿からは想像しにくい過去です。
女性好きのボヤッキーに、故郷で待つ大切な女性がいるというのも意外な設定ではないでしょうか。
まとめ
『ヤッターマン』は、正義の味方が悪者を倒すだけの作品ではありません。
ドクロストーンそのものがドクロベエの体だったという最終回の真相から、ドロンジョのモデルをめぐる都市伝説まで、多くの裏話が残っています。
そして作品を特に面白くしていたのが、制作現場の自由さでした。
八奈見乗児氏のアドリブから「ポチッとな」が生まれ、絵コンテの段階でも脚本を自由に変えることがありました。
大河原邦男氏が語っているように、決められた枠から少しはみ出す制作スタッフの遊び心こそ、『ヤッターマン』独特の世界を作った大きな理由だったのでしょう。
放送開始から長い年月が過ぎてもドロンジョやボヤッキーたちが愛され続けているのは、悪役でありながら人間くさく、作っている側まで楽しんでいることが伝わってくる作品だったからなのかもしれません。

77年から足掛け3年にわたって放映されたタツノコ・ギャグ・アニメの金字塔。
『タイムボカン』に続くシリーズ第2弾は、シリーズ最高人気を誇る大ヒットとなりました。





















